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第21話 連絡橋の悪魔

 



 フルベイラ連絡橋。

 それは、天世界最大の領地、フルベイラ領と東方平原をつなぐ橋である。


 サトゥーア領から南に進み、東方平原を突っ切った先にある橋。


 俺たちは今、そこにいた。


「―――ということなんだ」


「そうですか、分かりました」


 今回の依頼は、この橋を破壊したと思われる悪魔の討伐と、修理人の護衛。


 聞いた話によれば、強欲級マモン怠惰級ベルフェゴールの可能性が高いとのこと。


 気を引き締めておかないと。

 と思っていると、1人の女が長い紫髪のポニーテールをなびかせてやって来た。

 腹を出した軽装の剣士だ。


「ちょっと、ヘブアル。アンタそんな子供連れて何してんのよ!」


 女はヘブアルを怒鳴った後、俺に目を向けた。


「彼は15歳、成人だよ。それに、例の武闘大会では2位だった豪傑さ」


 ヘブアルはあくまで穏やかに返す。


「初めまして、アルタです。これでも冒険者、あと成人なので、よろしくお願いします」


「ふんっ、私はジュリンよ。邪魔になるからアンタは護衛班ね」


 ジュリンはそれだけ吐き捨てて去っていってしまった。


「あの......」


「あぁ彼女だよ、クズ女。一応妻なんだ。昨日珍しくカジノで大負けしてね、イライラしてるのさ」


「はぁ」


 それで埋め合わせでこの依頼を受けた、と。

 今回の依頼は天貨3枚と金貨7枚とのことだ、目がくらむのも分かる。


「さて、メンバーも揃った。班分けをするよ、来てくれ」


「はい」




 ▶▷▶▷▶▷




 数分話し合って、俺は護衛班になった。

 怠惰級ベルフェゴールの可能性を加味して俺も討伐班に行こうとしたのだが......


 経験が浅い奴は邪魔だから引っ込んでろ

 とジュリンに言われた。

 まぁ実際経験は浅いし、討伐班も結構な人数で実力もあるようだし、大丈夫だと思う。


 護衛っていうのも大事な役割だしな。

 と、ここまではいいのだが......


「あー、ジュリンさん? なんで護衛班こっちに......?」


「ん? 何よ、いいでしょ別に」


 なぜか護衛班の方にジュリンがいる。


 邪魔だから護衛班にいろって話だったのに。

 言い草からして自分は討伐班だろ。

 なんでこっちにいるんだ。


「アルタ君、その石材、こっちに持ってきてくれるかい」


「あ、はい!」


 橋の方から呼ばれた。

 何もしないのは気が引けるから修理の手伝いをしていたんだ。


 ジュリンから視線を外し、持ってる石材を橋の下の方まで運ぶ。



「いや、アルタ君、ありがとね。それと少しここを離れるから見といてくれないかい?」


「はい、分かりました」


「そうかい、ありがとね」


 修理人はそそくさと橋の上まで登って行った。

 足下には石材が複数転がっている。


 ん?


「おっと」


 柱の一部が崩れかけていた。

 急いでその部分を抑える。


 それと同時、振動を感じた。

 気のせい......じゃない。

 だんだん大きくなってくる......!


 その時、修理人たちの叫び声が聞こえた。


「うわぁぁあ!!!」


「下がってください! 怠惰級ベルフェゴールです!」


 ヘブアルの声。

 今怠惰級(ベルフェゴール)と言った。

 それなら俺も早く行かないと。



「―――ん? おい君! コイツは怠惰級ベルフェゴールだ! 来るんじゃない!」


「関係ねぇ! オラァっ!」


 上で何か聞こえた後、何か肉が斬れた音が聞こえた。


 今の声、シュゼの声だ。

 来てるのか......?


 いや、今はそれどころじゃない。

 早く行かないと。



 ゴロンガァァンッ!



 俺が上に登った瞬間、足場が崩れた。




 ▶▷▶▷▶▷




 上に登ると、凄まじいことになっていた。

 赤く染まった体がいくつか倒れている。


 その中央に狼の形をした大きい悪魔がいて、

 攻撃しようとする護衛班を蹴散らしている。


 デカい。

 1階建ての建物よりひと回りかふた回りも大きい。



「グルル......!」


 悪魔がうなり声を上げ、鋭い殺気を放ちながら静止している。


「あ、アルタ! お前なんでここにいんだよ?」


「シュゼ!」


 シュゼがいた。やっぱりシュゼの声だったんだ。

 他の冒険者は服が血に染まっている中、シュゼだけは悪魔の返り血で染めているのが分かる。


 悪魔も、シュゼの一閃で警戒を強めたらしい。



「アルタ、なんでここに......」


「依頼の手伝いだ。そっちこそ......」


強欲級マモン怠惰級ベルフェゴールに変化して、追っ掛けてここまで来た」


「そうか」


 多分橋を壊した悪魔とシュゼの依頼の悪魔は同一個体だ。


 シュゼが受けた依頼は、強欲級マモンの討伐。

 怠惰級ベルフェゴールに進化したと言ったから、その通りなんだろう。

 ミーヴと会った日にもそういう悪魔がいた。

 あの日は怠惰級が憤怒級サタンになった訳だが。




 ―――にしても、怠惰級ベルフェゴールか。

 ヌィンダは、俺もシュゼも弱めの怠惰級ベルフェゴールなら倒せると言った。


 まだ魂気操作は完全じゃないけど、今はシュゼもいる。

 それに、まだ避難できていない修理人だっている。やるしかない。


「シュゼ、やれるか?」


「おう!」


 シュゼは一切の躊躇無く答えた。




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