【停学】
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・【停学】
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ダメグラが停学になった。
理由はエロ本を学校に持ち込んだから、ということらしい。
気付いたらダメグラは途中で家に帰らされていた。
決戦の日まであと10日のタイミングで、1週間の停学。
漫才の練習できないだろ、どうするんだよ、と思った。
いやまあ学校は漫才の練習するところじゃなくて、勉強するところだけども。
そもそもダメグラは成績も低めなので、いろいろ心配だ、と思っていると、僕は昼休みに梶センから呼び出されて、職員室へ行くと、
「涼、ちょっとこっち来い」
と言い、梶センに腕を引っ張られるまま、あんまり昼休みは人が来ない棟のほうへ来ると、梶センがこう言った。
「職員室ってジジクサくてヤバイよな」
「いやそんなこと言わないで下さいよ。人生の先輩方じゃないですか」
「あんなん長く生きているだけのカスだよ。老害って言葉、使っていいぞ」
「使っちゃダメですから」
梶センは飴を口に含んで、深い溜息をした。
一体何の用なんだろうと思っていると、梶センが、
「放課後はダメグラの家へ行って、勉強教えてやれ。オマエの日直の日とか委員会は全部奈津にやらせる」
「いやまあ勉強教えることはいいですけども、何で大変なヤツ全部奈津ちゃんにやらせるんですか」
「アイツは都合の良い女だから」
「生徒のことを都合の良い女って言わないで下さい」
梶センはハッと掠れた笑い声をしてから、
「奈津ノノに漫才の練習させないためにだよ。オマエらも練習できないわけだから、これでフェアだろ?」
「何かダーティですよ、その考え方。そもそもダメグラのせいですし」
「オレは拮抗した、盛り上がったバトルが見たいんだよ。大丈夫、奈津に指図しておく」
「いやもう梶センの考えが入っているのならば、もう僕が止められる話じゃないので、いいですけども」
すると梶センはやけに上機嫌に、
「よっしゃ、決まりだな。涼、お笑い頑張れよ」
と言ってきたので、僕は思ったことを聞いてみた。
「何で梶センは僕たちのこと応援してくれるんですか?」
すると梶センは後ろ頭を掻きながら、こう言った。
「別に? 全員のこと応援してるぜ。芸事やってる連中はみんな好きだ。でもまあオレ、結構ダメグラが好きだし。だから涼も面白いと思うぞ」
そう言いながら梶センは去っていった。職員室に戻ったんだと思う。
何だか図らずも、応援してもらっていることを知って、心が躍った。
そんな話をすぐにダメグラにしたくて、放課後になったら走ってダメグラの家へ行き、チャイムを鳴らし、ダメグラの親に迎えられて、そのままダメグラの部屋に入っていった。
すると開口一番ダメグラは叫んだ。
「グラビアだぜぇっ? エロ本というかグラビアだからむしろ健全な教科書だろぉっ?」
いや
「良くないスタートダッシュを決めるな。グラビアも人から見たらエロ本だろ」
「いや! 見つけたのが梶センならエロ本認定しなかった! 何で偶然生徒指導の田村が廊下歩いていたんだよ!」
「まずグラビアでもなんでも、学校以外のモノを廊下で読んでいるなよ」
「それは隣のクラスの水戸が見たいって言ったんだよ! 水戸だぞ! 水戸ロネだぞ!」
水戸ロネ、同じ1部リーグのトリオコント師のロネちゃんか。
ダメグラは激しく続ける。
「女子の水戸が見たいって言ったんだから持ってくるし、すぐに一緒に読むだろ! たまんないだろ!」
「たまんないって何だよ。性癖の始まりを語り出すな」
「いやでも水戸はすぐ逃げたから停学免れてよぉ! 何なら俺が水戸に無理やり見せていたみたいな言い方されてよぉ! ハニートラップだよ! 垣谷外務大臣だよ!」
「いや昔あった垣谷外務大臣のハニートラップ疑惑のネットニュースはいいんだよ」
しかしダメグラの熱量は止まらず、それからずっと田村先生とロネちゃんの悪口を交互に言っていた。
結局全然梶センの話は勿論、勉強を教えることもできなかった。
今月は悪口漫才をやる気か? と思うくらい、怒涛の滑舌だった。