【とある日の昼ご飯】
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・【とある日の昼ご飯】
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高2のお笑いバトル1部リーグは第3金曜日の放課後にある。
その第3金曜日に向けて、今日の昼休みも、昼ご飯を食べたら練習頑張ろうぜ、というところで事件が起きた。
ダメグラの弁当のマヨネーズが爆発したのだ。
否、実際に爆発したわけではないのだが、それくらい飛び散って、ノノちゃんの机と椅子、そして顔にほぼ全部ついたのだ。
ノノちゃんはすぐさま叫んだ。
「どんなー! 急に美味しい香りがしてきたのー!」
それに対して、一緒にご飯を食べていた奈津ちゃんが、
「嗅覚の正常さに嫉妬しちゃう!」
と言った。
いや
「嗅覚の正常さは別にいいだろう、それよりハンカチでもノノちゃんに貸してあげたら?」
と僕が言うと、奈津ちゃんが、
「涼くんがハンカチを貸して親密度を上げるという方法もあるよ!」
「いやそんな恋愛シミュレーションゲームみたいなこと言われても。男子のハンカチよりも女子のハンカチのほうが綺麗でしょ」
「女子も全然鼻水ぬぐってるよ!」
奈津ちゃんは天真爛漫にそう言った。
そのあたりでダメグラが、
「ノノちゃんの顔、ちゃんと舐めます」
いや!
「絶対ダメだろ! 舐めないことがちゃんとしているんだよ!」
そこでノノちゃんがハッとしながら、
「もしかするとノノの顔に何かついているのっ?」
と口を大きく開けて驚いた。
そのアクションで、口のあたりが動いたことで、ノノちゃんの口にマヨネーズがペロンと落ちてきて、ノノちゃんが、
「あっ、おいしいの……ノノの汗はドレッシングの域に達したの……」
と感慨深そうに頷いたので、僕は
「そうじゃなくて、ダメグラがマヨネーズをぶちまけて、ノノちゃんの顔についたんだよ」
するとダメグラが首を大きく横に振りながら、
「ぶちまけたなんて言葉を使うな、大量にぶっかけた、だろ?」
「そっちはそっちで良くないんだよ」
と僕がツッコむと、奈津ちゃんが、
「いろんな言葉の言い換えをしっていて賢いね!」
と言いながら、僕たちにグッドマークを差し出した。
いやだから
「奈津ちゃんは早くハンカチかティッシュをノノちゃんに」
と言ったところでダメグラが、
「ティッシュなら俺だろ。小五から始めた俺のティッシュ生活舐めんな」
と言いながら、ノノちゃんにティッシュを渡した。
いや
「何か不穏な空気のあるティッシュだな」
でもノノちゃんは笑顔で受け取って、そのティッシュで顔を拭き始めた。
「なのー、ノノの顔を綺麗綺麗屋さんなのー」
そんなおままごとしている幼稚園児みたいな、訳の分からない屋さんを始めるな、と思いつつ、僕は見ていた。
ノノちゃんはマヨネーズを拭き終えると、即、水筒の中身を飲んで、プハァーと一息つき、
「一仕事終えたあとの麦茶はおいしいのー!」
と叫んだ。
それに対して奈津ちゃんは、
「農作業ばりの大変さを見事乗りこなしたね!」
と褒め称えた。
相変わらず、マジでダメにし合う関係だなと思いつつ、僕はダメグラのことを肘で突いた。
ダメグラは胴体を動かし、その肘で突かれた位置に自分の乳首らしき場所を持ってきて、
「いや突けよ、俺の乳首を刺激しろよ」
と何故か妙にクールに言い放った。
いや
「そうじゃなくてノノちゃんに謝罪するんだよ。謝罪しろの合図だったんだよ」
「射精しろの愛じゃなかったのかよ」
「乳首突かれただけで射精するなよ、突いてないけども」
とツッコんだところでダメグラが、
「ノノちゃん、まず良い絵面になったことを感謝、そしてゴメンなさい」
ノノちゃんは手をブンブン振りながら、
「別にたいしたことじゃないのー! コメディの範疇だったのー!」
と言った。
いやまあ確かにコメディの範疇ではあるけども、と思っていると、ダメグラが、
「エロの範疇でもあったんだけどなっ」
と、さわやかそうに言った。
いや全然さわやかじゃないし、別にエロでも無かっただろ。
ノノちゃんは頬を膨らませながら、
「どんなー! エロではなかったの! というかノノは妖精なの! 無縁なの! エロとかとは孤立無援なの!」
いや
「最終的に仲間がいないという意味になってるから」
「いっそのことそれでいいのー!」
とノノちゃんは手足をバタバタさせていると、奈津ちゃんが、
「ううん! ノノちゃんと私はずっと一緒だから! 大好きだよ! ノノちゃん!」
と言いながら、座りながらも奈津ちゃんがノノちゃんを抱き締めた。
それにノノちゃんは、
「なのー! 奈津ちゃんはいつもあったかいのー!」
と叫んだ。
それを見たダメグラが、
「ユリハルかよ」
と呟いた。
いや、アオハルの百合バージョンを言うな。