7話『叔母の没落①』
「ふぅ……」
達成感を感じながらも、私は額の汗をぬぐった。
私はメイド長に頼まれていた部屋の掃除をちょうど終えた所である。
「これを、あなたが一人で……?」
メイド長が驚きのあまり手で口を覆った。
実力を計るため、私は試験的に掃除を申し付けられていたのですが……
「ずいぶんと時間が余っていたので、他のお部屋も掃除をしておきました。もしかしてまずかったでしょうか?」
私は一部屋だけの掃除を命令されていたが、このフロア全ての部屋掃除を済ませていた。
「いえ……仕事ぶりを見て教育するつもりでしたが、驚きました。全て完璧です」
メイド長はパチクリと瞬きをして私を見た。
これは何かおかしな物を見るような目だ。
「一体、この技術をどこで……?」
「……? 以前住んでいたお屋敷で毎日こなしていました」
技術という言い方に、私は気恥しくなってしまう。
これではまるで私が特別な能力を持っているかのようだ。
「そ、そうなのですか、以前は随分と大変な業務をこなしていたようですね」
「いえ、毎日掃除以外にもお洗濯やお買い物、お料理、お裁縫、花壇の手入れをしていましたし、このくらい全然簡単な方ですよ」
私は思い出しながら以前にこなしていた仕事を指折り数える。
指を折るたびに顔を青くするメイド長に私は気が付かなかった。
(そういえば、叔母様はお元気でいらっしゃいますでしょうか)
喧嘩別れのようになってしまいましたが、私程度いくらでも代わりがいるでしょうし大丈夫ですよね。
――アンジェリカの叔母屋敷。
「どうなっているの!? メイドならこのくらいこなせて当然でしょう?」
アンジェリカの叔母は顔を赤くしながら、怒鳴り声を上げていた。
「も、申し訳ありません奥様。しかしこの仕事量は10人以上いないと無理かと……」
アンジェリカの穴埋めで、代わりに新しく雇われたメイドがおずおずと答える。
「もういいわ! あなたはクビよ!」
叔母は強い剣幕でまくし立て、扇子を怒りに任せて強く握った。
「この程度アンジェリカだったら1時間で終わらせたわよ! なにをちんたらと……」
アンジェリカを失ったことで、男爵家は没落の一途を辿っていくのであった。
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