最終話『シャル・ウィ・ダンス?』
「皆さんと踊りたい、ですっ」
突然だが、今夜は私主催の舞踏会開催日だ。
テーマは女王が舞踏会したかったから記念。
最近何かと忙しい、元王子達5人との親睦が目的である。
「なんだか、緊張しちゃいますね」
今回は私の少ないお小遣いを使って、ささやかながら5人だけのパーティ。
女王だから、なんでもかんでもお金が自由に使えるわけではないのだ。
(料理よし、音楽よし、私よし)
夜の窓に映った、ドレス姿の私が微笑んでいる。
メイクも表情も、服装もばっちり。
「うん、かわいいですよ。アンジェリカ」
このドレスは、以前アルベティーニ王子に頂いた薄紫のドレスだ。
灰色の女王騒ぎでどこかにいってしまったと思っていたら、ちゃんとメイド長がとっておいてくれたのだ。
流石、隠れおめかし好きのおつぼねさん。
(ああ、待っているだけなのがもどかしいですっ 早く誰か来てくれませんかね)
そんな風に私がソワソワしていると、次々にドレスコードのイケメンたちがやってくるのだった。
まずはオオカミの獣人、ジークリット・シューティア。
「今宵はお招きにあずかり……いや、お前相手にこんな堅苦しいのはいいか。今晩は特別イケてるぜアン」
そう笑顔で言うと、いつものように私の頭に手をポンと乗せてくる。
今日の彼はなんと、はかま姿だった。和装は彼の地元ファッションなのだ。
髪を立て、ワイルドな雰囲気がとても似合っていた。
「ありがとうジーク、あなたのその服装もすごく素敵ですよっ」
「ああ、これな。おふくろから結婚用とか言って送られたけど、まぁこんな所でしか使わんだろうしな」
彼はぶっきらぼうに照れた。
「あと、お前のも送られてきてたから、一応」
そう言って私にプレゼントの包を渡してくる。
中を確認すると、ジークの服装に合わせた和柄のロングドレスだった。
赤を基調としたもので、オリエンタルな柄が差し色で入っている。
「わぁ! こんな素敵なもの頂いちゃうなんてっ お母さまには大感謝ですね! あとでお色直しの時に着替えてきます!」
別に今日着なくてもいいんだぜ。とスカした彼が、実は期待しているのを私は見破っていたのだった。
次にやってきたのはフラミンゴの獣人、アルベティーニ・スコッティ。
待っていた私達の頭上から、とつじょとして彼の高笑いが響き渡った。
「ふはははははっ」
見上げると、なんと彼は吹き抜け天井の窓から飛び降りたのだった。
色鮮やかな花びらが空中に舞い散り、華麗に羽ばたいて私の前に着地する。
「ン僕、参上っ! アンジェ、今日は君を貰いに来た」
そういって、アルベティーニは私に黒百合の花束をプレゼントするのだった。
彼の服装は登場に合わせて、レースのアイマスクにシルクハット、黒いマントという怪盗風だ。
「まぁ一番のプレゼントは僕だけどね」
そう言って、あまりにも自然に私へウィンクをする。
ここまでやれると、驚きというよりも先に感心が出てきてしまう。
それを素直に認めるのも癪なので、私はからかうように彼に言うのだった。
「今日は私が主催なので、あなたに奪われる訳にはいきませんね」
「もぉ~僕の前では照れ隠しなんていいのに、さ」
いつものやりとりだったが、アルベティーニの突き抜けたナルシストイケメンムーブに私は内心喜んでいたのだった。
次にやってきたのはネコの獣人、ルクス・メーレスザイレであった。
正確にいうと、彼は誰よりも早くこの場所にいたのだ。
「にゃ~、お姉ちゃん、始まったのにゃら、おこしてにゃぁ」
目をこすりながらも、大あくび。彼のかわいい犬歯が見える。
なんとルクスは遅刻しないように会場に前入りして、そして眠くなったという理由で勝手にソファーに寝ていたのであった。
もちろんその寝顔と、ぷにぷにのほっぺは堪能させていただきましたとも。
「ふふ、あまりにも気持ちよさそうだったので、ギリギリまで起こさなかったんですよ」
笑いながらトテトテとやってきた彼の寝癖を、私はなでつけた。
それを受け入れてルクスは照れたように笑う。
「えへへ、お姉ちゃん大好きにゃ」
そう言って背伸びをすると、彼は私の首筋にキスをする。
ルクスの甘えんぼうに、今度は私のほっぺが溶かされてしまうのだった。
そして最後にウマの獣人である、シリウス・ヘングスト。
彼には珍しく遅刻かな?と私が思っていると、前置きなく会場の照明が落とされた。
「なんですっ!?」
会場の一か所がライトアップされたと思うと、とつじょとしてムーディーな演奏が始まるのだった。
満を持して、バリバリにキメたシリウスが歌いながら登場する。
「愛という言葉だけではこの想いを伝えられない~ もうとっくに溢れてしまっているから~」
「えっ こんなの聞いていないですよ」
「ラララ、言っていないからな~」
彼は器用に、歌いながらもアドリブで私に返事をしてきた。
そしてたっぷりと愛を囁いた後、シリウスは自然な流れで私の手を取るとダンスを始めるのだった。
あまりの手際のよさに、私はいつの間にか踊り出していた自分に後から驚く。
「あ、こいつ! 挨拶とか形式とか無視してずるいぞ!」
「この手があったかっ」
「これが貴族のやる事かにゃっ」
方々から非難の声が上がる。
それを受けたシリウスはあくまで優雅に、上半身をそらすと眼鏡を押えながら歌で返したのだった。
「貴様らも~大概だろう~」
「歌いながら返事するな!」
その後は結局、王子達による私の取り合いになってしまうのだった。
一通り全員と踊り終わった後、私は休憩も兼ねてさっきジークに頂いた和装のドレスへとお色直しをした。
イルカの元同僚メイドに着付けを手伝ってもらって会場に戻ると、
「で、結局誰がアンジェリカを物にするんだよ」
懲りもせず、男たちはいつもの議論で喧嘩をしている。
私が戻ってきたのを見ると、王子たちは顔色を変えてドレスを褒めるのだった。
「にゃっ! お姉ちゃんのドレス! 派手派手でかっこいいにゃ!」
「うーん、エキゾチックな君も素敵だね。僕と君だけで夜空のデートといこうじゃないか?」
「和洋折衷というやつか。人間と獣人、メイドと王子、なかなか洒落が効いているではないか」
「おい、お前らっ 俺がやったドレスだぞ先に感想を言うなよ」
咳払いをして整えるジークリット。
「……アン似合ってるぜ。じゃあお前は俺の物ってことでいいよな?」
「待て待て待て」
議論再開である。
もちろんこうなる事は予想済みで、私はにっこりと笑うと、いつもの言葉を王子達に返すのだった。
「私は優柔不断だから、選べませんねぇ」
「おい、今日はそれを許さな……」
「はいでは、音楽スタートです」
私がパチリと手を叩く、すると音楽の演奏が始まるのだった。
弾けるような軽快なピアノと菅楽器が小気味のいいリズムを刻んでいく。
「む、なんだこの音楽は、聞いたことが無いな」
「なんか、ちょっとハズイぞ……」
「でもなんだか、気持ちいにゃ~ ノリノリって感じにゃ!」
「うーんっ 思わず体が動き出したくなる感じだよっ」
「はいはいはいっ 皆さん一緒に踊りますよっ!」
私はリズムに合わせて手拍子をしながら、ホールの中央に躍り出る。
これはジャズと言われる最近海外で流行っている音楽だった。
初めて聞いた私は一発で気に入ってしまい、絶対に皆で踊りたいと思っていたのだ。
「これは、どう踊ればいいんだアン……?」
「そんな物ないですよっ! 気持ちよくっ! 自由にっ!」
「こんっ なっ 感じか~い?」
「一人一人が踊るなんて妙な感じだが、中々愉快だな」
「にゃっ にゃっ にゃ~ これは、楽しいにゃ~」
ちょっと下品かもしれないけど、みんなで楽しく踊るならこれしかない。
戸惑っていた面々も次第にノリを掴んできて、私たちはとにかく笑って、とにかくノリノリで踊りまくった。
「うふふふっ さいっっこうに楽しい夜ですよっ!」
最後には全員の手をとって、5人で輪になって踊るのだった。
そして私たちは力尽きると、そのまま床に倒れ込む。
「あ~疲れましたけど、楽しすぎてまだまだ踊れそうですよ」
天蓋の窓からは満点の美しい星々が煌めている。
それはまるで私たちの未来を明るく照らしているかのようだった。
左右を見ると素敵な王子様の笑顔。
私の心は今でもずっと、ドキドキと高鳴っている。
「私追放されて、本当に幸せですっ」
-fin-
これにてアンジェリカの物語は終了です。
これからも彼女は持ち前の明るさと強かさで、ずっと幸せに暮らしていくでしょう。
10/14~Twitterにて1週間程度キャラクター人気投票を行います。
よろしければ気に入った王子に投票してください。
(https://twitter.com/toganokado/status/1580862347350245376)
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ここまで読んでいただきまして、本当にありがとうございました。




