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49話『叔母の没落③』

「うらやましいっ 妬ましいっ 悔ししいぃぃ」


 うめき声と叫び声が混ざったような奇声を発しながら、よたよたとアンジェリカの叔母がどこかの洞窟を歩いている。

 相変わらず不似合いで派手な服装、片手には酒瓶を持ち、髪型は乱れ、その相貌(そうぼう)は普通ではない。

 完全に泥酔しており、その口角はよだれと酒で汚れていた。


「アンジェリカぁ! アンジェリカぁぁ……あなたはなんでっ どうしてなのぉぉっ……」


 彼女は手元に残った少ない私財を使い、ついにアンジェリカの居所を見つけていた。

 奴隷のように見下していた甥の娘が、なんと今では他国の王子とよろしくやっているらしいではないか。

 没落が原因で膨れ上がった彼女の感情は、今や嫉妬心と激しい怒りへと変わり、それはアジェリカに向けられていたのだった。


「本当にぃ~ こんな所にいるんでしょうねぇ!? 魔法使いがぁ!」


 残った人脈までをも使い切り彼女はとうとう、この国の魔法使いの下へとやってきていた。

 その目的とは、


「はっ この小さなネズミがぁ? あんた喋れるんでしょうね? 私の言う事が分かる? すごい魔法使いなのよねぇ!?」


「はぁ……まったく厄介な人間が来たようだね」


 アンジェリカをウサギの獣人に変え送り出した、魔法使いのネズミだった。

 叔母の戯言に、ため息をつきながらも冷静に応対している。


「ちょっとぉっ! あんたを見つけるためにぃ、私は全財産をぉ、家まで売ったのよぉ! 私の願いを叶えなさいっ! アンジェリカみたいによぉっ! その義務が、あんたにはあるのよっ」


「まったく、そこまでの妄執もうしゅうには恐れ入るよ」


「うるさいっ うるさいぃっ! いいっ? 私を幸せにしなさい、しかもとびっっっきりよ! そうじゃなきゃ割に合わないわ! 私はアンジェリカをずっと面倒見てきたのよっ!!」


 叔母は血走った眼で髪をかきむしり、ネズミの魔法使いに唾を飛ばしながら、あまりにも無礼な嘆願(たんがん)をするのだった。


「私は彼女を自由にしただけだよ。まったくしかたない、あなたもアンジェリカと同じがいいというのであれば、そうしてあげよう」


 ネズミが指を振ると、光の粒子に包まれた叔母の姿がみるみると変わっていく。

 そこには、


「ああぁ!? 私の顔が!?」


 酒瓶に写り込んだ叔母の顔は、いまやしわしわで、前歯が飛び出し、醜く汚らしいハダカデバネズミの獣人顔へと変貌していた。


「ふざっけっ、お前ぇぇっ! い、今すぐ私を元に戻しなさいよぉ!! 私は獣人なんて汚らわしい姿、望んでないぃぃっ!!」


「それが、あなたが望んだアンジェリカと同じという事だよ」


「お前っ! お前ぇえぇえぇえぇぇっぇえ!!」


 怒りに任せて酒瓶をネズミの魔法使いに投げつけるが、すでにそこに姿はなかった。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


ポイントをモチベーションに頑張って書いていております。

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