48話『花より団子』
「うう……どうしましょう」
私は眉をひそめ、気まずそうに口の前で手を合わせていた。
なぜならば、
「おねーちゃんはこれからルクスとお昼寝するにゃ!」
「アンは俺とアクセサリー作りをするんだよな?」
「待て、貴様は私と読書会の約束をしたはずだ」
「いや、そこは譲っておくれよ。彼女は僕とデートにいくのさ」
私が久々の休日だと知ったとたんに、部屋へ王子たちが押しかけて来たのだった。
八方美人な態度を取っていた私にも、もちろん問題があるのだが……
「さぁアンジェリカ、僕の手を取っておくれよ」
「てぇめぇアル、なに余裕ぶってんだ。ほら、俺と行くぞ」
「アンジェリカ、私は貴様に話しかけているのだぞ。しっかりこっちを見ろ」
「よし、この隙にこっそりおねーちゃんと抜け出すにゃ」
「待て待て、アンを勝手に引っ張っていくなドラ猫小僧」
「まったく、同じ王子でここまで品格に差があるなんてねぇ」
右へ左へ、私は文字通り引っ張りだこで、王子たちの間に挟まれて目をぐるぐるさせていた。
私を取り合ってる様は正直嬉しい反面、王子たちが本格的に喧嘩になっては大変だ。
「み、皆さま落ち着いて下さい」
「アンジェリカ、そもそも貴様の軟派な態度がいけないのだぞ」
「こ~ら~! シーちゃん、お姉ちゃんをいじめるにゃ!」
「おいおい、ケンカすんなよ。後でようかんやるから、今日はそれで諦めろ」
「その計算だと、この世全てのようかんでも割に合わんな」
「しかし、アンジェリカの体は一つ。どうだろう彼女に決めさせてみては」
「お姉ちゃん、どうするにゃ~? もちろんルクスと一緒に来てくれるはずだにゃ」
4つの美顔が私に向けられ、じっと答えを待っている。
そんな緊張感と期待に耐えられず、私の心は押しつぶされてしまった。
「ぅ……う……私は優柔不断ですぅっ! 誰かお一人を選ぶなんてできませぇん」
「これはこれは……困った事になったねぇ」
「そもそも王になった者が、彼女を手に入れるという取り決めではなかったのか?」
「あーあれは、もう面倒くさいからいいにゃ」
「もう力づくでもいいか?」
(ひじょーにまずいですよ。このままでは、私の立場と動物の国の未来がまずい……!)
そんな混沌に、とつじょ救いの手が差し伸べられた。
自室のドアが無遠慮に開けられ、同僚のイルカがひょっこり顔を覗かせる。
「おーいアンちゃん、料理長が余ったデザートをくれるって……ありゃ。一同お揃いで、これは失礼しました」
そう言って彼女は、気まずそうに顔をひっこめた。
今ここしかないと、私の脳が考えるよりも早く彼女に追従する。
「あ、そうですそうです! 今日はメイドの皆さんと一緒にスイーツパーティーでした。それではごきげんようっ」
私は王子たちに有無を言わせず、部屋を脱出する事に成功したのだった。
「……」
残された男4人の間に、妙な沈黙が流れた。
「俺達、飯に負けたのか」
「ぬにゃぁ~」
「まにさに花より団子だな」
「君らしいと言えばらしい、か」
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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