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39話『メーレスザイレ』

 もーれつにやる気を出したルクス王子は、あれから毎日泡のお菓子開発に挑戦している。

 私もできるだけ彼に付き合っているのだが、やはり失敗続きでうまくはいっていなかった。


(でも、驚きました)


 なんとルクス王子は、今までのように途中であきることなく挑戦し続けていたのだ。

 しかもちゃんと合間に論文もこなしながら、である。

 流石に、心配になってきた私は彼に声をかけた。


「気分転換に、今日は遊びませんか?」


「ん~まだいいかにゃ、でもお姉ちゃんが言うならちょっとだけにゃ~」


 机に向けていた顔を私に向けたルクス王子が、顔を緩めて笑う。

 気分転換に二時間ほど釣りやボール遊びをして、すぐに王子はお菓子作りに戻るのだった。


(すごい集中力ですね……)


 難しい本とレシピとを、ずっとにらめっこしながら王子が考えている。

 彼は注意散漫(ちゅういさんまん)な印象だったが、私が見た中でここまで長期的、それだけに打ち込むというのは初めてだった。


「ルクス王子、ぜんぜんめげないですね? すごいと思います」


「えへへ、なんだか全然やる気がなくならないにゃ、お姉ちゃんの笑った顔を思い出すと、なんだかムクムク~って元気になっちゃうにゃ」


「まぁそうなんですか、でもちょっとだけ心配になっちゃいますよ。頑張りすぎてルクス王子が、また悲しくなっちゃうんじゃないかって」


 私が心配そうに言うと、にんまりと笑ったルクス王子が、突然私の胸に抱きついて来た。

 ぼふり、彼のくせ毛と猫耳が目の前でゆれる。


「ルクス王子っ、もう甘えん坊なんですから」


「う~お姉ちゃん大好きにゃ! ルクスの事を心配してくれてうれし~にゃぁ……でも大丈夫にゃ、なんだかあと少しでいけそーな感じなんだにゃ」


「そうだったのですね! だったらもうひと踏ん張り、頑張っちゃいましょうか!」


 それから私たちは泡のお菓子の開発に打ち込んだ。




 ――数日後。


「やったにゃぁぁ!!!!」


「やりました! やりましたよルクス王子!」


 私たちは泡だらけになりながらも、嬉しさに抱き合っていた。

 何度も何度も微調整を繰り返し、ついに爆発しない泡のお菓子が完成したのである。


「本当に、本当に良かったです……」


 私は感動で思わず泣き出してしまった。

 あのルクス王子が、一つの事に打ち込んで、皆の笑顔のためについにやり遂げたのだ。


「泣いちゃダメにゃ~ はい、あーん」


 私が鼻をすすっていると、ルクス王子がいつかのように指ですくった泡のお菓子を差し出してくる。


「そうですね、じゃあ私も」


 そう言って私も泡をすくうと、王子の顔の前に差し出したのだった。


「「せーの」」


 と、声を合わせ私たちは同時にお菓子を口に入れた。


「ん~!」


 世界の色が1トーン上がったかのような錯覚。

 やわらかくて、ふわふわで、甘々。

 まるで天国にきたかのような美味しさに、私は思わず頬を緩ませた。


「おいっし~にゃ! 大・成・功にゃ!」


 ニッコニコの笑顔でルクス王子が私の指を舐めている。

 その様子にゾクリと、私の心が反応してしまった。

 思わず私は、もう一すくいして王子に舐めさせてたくなってしまう。


「る、ルクス王子、本当に美味しいですね……もう一口いかがですか?」


「うん! でも残りは皆に食べさせてあげたいにゃっ」


 彼の無垢な笑みと感情を見て、私はなんとか思い直したのだった。

 それから私たちはお城の皆さんに、泡のお菓子を配り歩く。


「赤、黄色、青、ピンクに、紫、オレンジ、水色。本当にいろいろな種類がございますわね~」


 泡のお菓子を口にしたお嬢様方が微笑む。

 これまでに、泡のお菓子の色んなフレーバーは文字通り研究済みであった。

 多種多様な味付けと見た目に、皆さんは大満足だったようだ。


 それだけでも美味しいが、さらにアレンジとしてビスケットに乗せたり、お茶に乗せたり、多種多様な楽しみ方も考案された。


「えへへ、うれし~にゃぁ」


「はい、よかったです」


 笑顔の輪が城中に広がっていき、ルクス王子は満足げに笑う。

 それを見た私も、幸福を感じるのだった。


(皆さんの笑顔のために、ここまでやりきりましたね! ルクス王子、素敵です)


 その後、驚いたことにルクス王子は泡のお菓子のレシピを公開してしまったのである。

 そのおかげもあって泡のお菓子は、瞬く間に国中へと広がり、一躍(いちやく)するのだった。


「あんなに頑張ったのに、よかったのですか?」


「もちろんにゃっ、だって皆が幸せになってくれたら、それだけでルクスは満足にゃ!」


 ルクス王子が笑顔と一緒に、元気いっぱい両手を広げた。


「うふふ、そうですよね」


 私たちは皆さんを幸せにした事で、とっておきの笑顔を浮かべることができたのだった。


 その後、国外まで泡のお菓子は広がっていき世界中でムーブメントとなる。

 今では泡のお菓子をルクス王子の家名から、メーレスザイレと呼ばれてるようになっていた。


 メーレスザイレは、後に動物の国にとって大きな産業の柱になる事となる。

 どうやらそれは、ウマの王子の計画、フラミンゴ王子の外交、そしてオオカミ王子のアイドル活動による賜物(たまもの)だったらしいが、それはまた別のお話。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


ポイントをモチベーションに頑張って書いていております。

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