巻き込まれ体質のようです
伊織ちゃんの『海で遊ぼ―』と言うお誘いを断った筈だったのに
何故か、本当に何故か!海の近くの砂浜の上に敷かれたレジャーシートに体育座り(別名:体操座り、三角座り等)をしている。(因みに現代だと体に悪影響があるとかで廃止されるとか何とか)
目の前の海では美男子たちが半裸を晒し、楽しげに燥いでいる。
見る者が見れば、眼福なのだろう(遺書)
とか考えつつ、私は巨大パラソルの下で、遠い目をしている。
日焼け止めはミストタイプの物を1時間に1度振りかけ、頭には麦わら帽子を被って居る。
このリアルが充実して居る人しか許されないような場所に、所謂陰キャな私が居る此の謎の時間。
此処に居るのが私では無かったら、薄い本が厚くなるとか言って、鼻血を垂らしながらでも何やら書き綴りそうな感じはするけど、私はそう言った活動をした事も、参加した事も無いので全く分からない。
ネットスラング的なそんな単語が存在して居る事だけは知って居るが、其処迄だったりする。
そうして、そう言う界隈に足を踏み入れたら最後、底なし沼にずぶずぶと嵌って行くだけなのだろう。
まあ、嵌らない人も多数居るから、自分もそっち側で済めばいいと思いながらも、その辺は難しい。
因みに私は今は休憩時間である。
休憩時間ではある物の、水分補給用のデトックスウォーターやら、麦茶やら、スポーツドリンクやらの入ったクーラーボックスの横に待機して居る。
クーラーボックスの上にはタイマーがセットしてあり、30分ごとに水分補給させてくださいと黒井さんに言われている。
30分で鳴り響くタイマーは煩いので、鳴る度、私はびくっと体を跳ねさせる。
慣れない。
そのお陰なのか、態々報告しなくても誰かしらが気付いて、皆を呼んで来てくれる。
そんなに身体を弾ませているとは思っていないのだけれど、毎回気付かれるから自覚は無いけれど、跳ねあがって居るのだろうか。
けたたましく、タイマーが鳴り、私はまた体を跳ねさせる。
…水の中から打ち上げられた魚の気持ちがほんの少しだけ理解出来た気がする(?)
「泳げないなら無理しなくても良いけど、足だけでも海に浸けてみない?」
伊織ちゃんに言われたけれど
「遠慮しておくよ。私にはこうして、皆の水分補給を促すと言う仕事の真っ只中だから」
「暑くない?」
そう思うなら、クーラーガンガンの室内に帰してくれと思うけれど、口には出さない。
「夏は暑い物だからね」
そう答えながら、クーラーボックスの中の飲み物の量を確認する。
麦茶はかなり余って居るけれど、スポーツドリンクは殆ど無い。
スポーツドリンクだけをやたらと飲む輩が居る訳では無く、麦茶と比べるとあまり多くは作って居ないだけ。
「邸に戻ってスポーツドリンクの追加してきますね」
そう言って立ち上がると
「いや、もう僕達も帰るから」
悠先輩はそう言った。
「そろそろ、黒井がスイーツを完成させていると思うし」
「三時のおやつ!」
伊織ちゃんが飛び跳ねて喜ぶ。可愛い。
…ティラミスは食後のデザートで、今は三時のおやつ…
夢の生活!
…そう言えば、三時のおやつは手伝って居ないけれど良いんだろうか
凄い手間暇かかる物なら、休憩してたら駄目な気がするんだが。
とか考えて居たら、いつの間にか皆シャワーを浴び終え、着替えていて、蒼くんが巨大パラソルを畳んでいた。重い筈なのに流石スポーツ特化クラス所属なだけある。
よくよく見ると腕の筋肉スゴッ
「何?」
蒼くんは、じろじろ見ていた私を不快だと思ったのか、そう訊いて来る。
「スポーツクラスだけあって腕の筋肉凄いなぁって。不快な思いをさせて居たら済みません」
蒼くんは横に頭を振る。
「別に不快では無い」
ホッとした。
「…ボクも筋肉付けようかなぁ…」
何かぶつぶつ言って居る伊織ちゃん。
可愛い。
片付けを終えて、邸に戻る。
リビングには既にスイーツが置いてある。
此れはマカロン?いやアイス?違う最中アイスだ。
カラフルな最中の皮に様々なアイスが挟まって居る。
映えそう。赤はラズベリー、青はブルーベリー、黄色はレモン、橙色はオレンジ、ピンクはピンクグレープフルーツ、緑はマスカット、茶色はコーヒーか紅茶かな?
美味しそうだな。私は今は休憩中だけど、お客さんでは無いから、自室に戻って勉強しよう。
結局昨日は勉強進んでいなかったし。
軽く礼をしてリビングから移動する。
自室に戻りテキストを開くと、部屋をノックする音がする。
扉を開けると、悠先輩…様が居た。
「何かお仕事の御申しつけでしょうか?」
そう言うと
「休憩は大事だよ?」
そう言って、白い小皿を渡される。上にはブルーと緑の最中アイスが乗って居た。
「でも此れは」
「黒井にも訊いてあるから。これは君の分。他のフレーバーが良かったら、交換してくるけれど」
…流石に雇い主にそんな事をさせる訳にはいかない。
「有り難う御座います。頂戴いたします。」
「うん。無理しない程度にね?」
最中アイスを渡すと、悠様は、戻って行った。
ただのバイトに迄こんな心遣い…気遣い?
流石だなぁと思う。
それにしても、黒井さんも態々私の分まで作ってくれるとは…
主人が優しいと使用人も優しい世界なんだなぁ…
なんて思いながら、最中アイスを食べる。
美味しい。フルーツのその物の味がする。
青いのはブルーベリーかと思って居たけれど、初めて食べる味がする。
何だろう此れ。凄く美味しい。甘いからフルーツだとは思うけれど、何だろう。
疑問に思いながら食べていたらあっという間に食べ終えていた。
緑の方は高級マスカットの味がした。
昨年、父がボーナスで買って来たから覚えている否忘れられない。
其れ位美味しかった。と言うか、まさに今美味しい。
気になる此の最中アイスの作り方!
まるで天国(?)
…はっ勉強しなきゃ。
最中アイスのお陰でいつもより集中が出来た気がする。
昨日進める筈だった所も、今日終わらせようと思って居た所も
全部終わった。
…仕事再開時間までも余裕がある。
軽くストレッチしておこう。
勉強に集中していたという事はその分動いて居ないという事。
おお、首が凝って居る。腕も凝って居る。脚も凝って居る。
座りっぱなしはやっぱり良くないか。
仕事再開前に少し散歩出来る位の時間はあるから、散歩して来ようかな。
ストレッチの最後に伸びをして部屋から出る。施錠は忘れない。
最中アイスの乗って居た皿も持って、先にキッチンに行き、皿を洗ってからリビングに顔を出す。
居たのは、ソファーですやすや眠って居る冬馬くんだけ。
散歩に行くと伝えてから出ようかと思ったけど、眠り王子の睡眠を邪魔する訳にもいかないし
でも勝手に出かける訳にもいかないし
散歩諦めるか。
…それにしてもよく眠って居るなぁ(離れては居る)
…それにしてもよく落ちないなあ…寝相が良いの羨ましいなぁ(別に寝相が悪い訳では無いが)
「い、おい、ストーカー、否、覗き魔」
後ろから声を掛けられて飛び上がる
振り返ると……何って呼んでたかな。話し掛けられるの久々過ぎて忘れてるけど、名前呼びは駄目だよね。冬馬くんの幼馴染で、ゲーム時とキャラ変が凄すぎた、白柳 大和(髪色は青いけど、名字は白柳)が、凄い睨みつけてくる。
「何でしょうか、白柳様」
(明らかな作り笑顔)
「何してんだよ」
何って…
「仕事再開迄少し時間があったので、散歩に行って来ようかと思い、一応伝言を頼もうと思い此処に顔を出したのですが、松川様しか居らず、しかも」
…“しかも”は駄目かな…言い換えると、こういう場合の接続詞は
「それに」
“それに”も違う気がする。
定型文はある程度覚えたけど、自分の言葉に直すと難しいな敬語って。
「御覧の様に熟睡を成さっておいでですので」
……なんか違うけど…ま、良いか(良くは無い)
「困り果てていました。」
序に、寝相良いなぁと思って居たという事は言わない。
「ふーん」
…色々考えながら答えたのに“ふーん”だけって無くない?
「此れ以上近付いては居ませんし、つい先ほど来たばかりですので、何もしていません。」
そう告げる。
仕方ない、散歩は諦めるか。
未だ結構時間あるのになぁ…
そう思って居ると
「お前、俺と何処かで会った事無い?」
白柳 大和にそう訊かれた。
「高校の入学式でお会いしましたし、何なら同じクラスですけど?」
…何ならって駄目か(だが修正はしない)
「いや、その前に…」
その前に?大和は、小学校とかからのエスカレーター式だから、高校受験組とは別の試験会場だし、道端ですれ違ったとかまでは、把握してないし?
と考えていたら、
「大和、ナンパ?」
いつの間に起きたのか、欠伸をしながら、冬馬くんがソファーから移動して来た。
「ナンパなんかしていない!!!!!」
うるさっ。(エクスクラメーションマーク/ビックリマークで声の大きさを表しています)
「んーー?でも、漫画で、何処かで会った事無い?って聞く人は大体ナンパだって」
冬馬くん、漫画の知識と現実は多分違う。多分。
「此処でナンパする訳ないだろ!?」
確かに
「確かに…そっか…うん」
心の声と、冬馬くんの声が被った!
…あ。
時計を見るとそろそろ仕事再開する時間。
「仕事の時間が近づいて居たので失礼します」
付け焼刃のお辞儀をして去る。
―――――璃々那が移動した後―――――
「あーあ、璃々那ちゃん行っちゃった。」
不貞腐れている、冬馬。
「ナンパじゃないとしても、あれは駄目だと思うよ?」
「なんで俺が、庶民をナンパしなきゃいけないんだよ」
「庶民って言い方もダメ」
「…本当に何処かで会った事がある気がするんだよな…」
ぽつりと呟く大和。
「まず其れを思い出さなければ、意味無いと思うよ」
正論を言う冬馬。
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