まだまだ続く夏休み
サンドイッチを食べ終え、片付けをしてから、部屋に戻る。
色々気になった事は有れど、取り敢えず手を付けていなかった
宿題を熟す。
大体面倒臭い応用問題ばかりだけれど
何となく予想していた問題ばかりだし
普段学園でさせられている、何処で習うんだよ此れ
と言う様なバグっている様な問題では無く
一般的な高校一年生用の問題集だったのが救いだと思う。
流石に専門的な問題だったら、図書館か学園の図書室に行かないと、訳が分からない問題しかない。
全く解らない訳では無いけれど、其れでも理解出来ない問題があり過ぎる。
レベルが高い学校だと思わせたいが為にあんな問題をさせられているとしたら、
本当に狂っているとしか。
所謂無理ゲー的な(ゲームでは無いが)
否、クソゲーかもしれない(口が悪い上にゲームでは無い)
誰だよ、チートゲーだって言って居た人は。
確かにゲームだったら実際には勉強しなくて良いから、チートだけれど
実際は難易度が高い勉強をさせられ、恋愛も上手くいかない。
まあ、恋愛は
私が何もしていないから
突然誰かのルートに入ったら驚きだけど。
今日の分と決めていた所まで進めて、部屋についているシャワールームで体を洗い、
ドライヤーで髪を乾かす。
髪を切ってもう4ヶ月が経とうとして居るんだなぁとしみじみ思う。
あの日から、色々あったなぁ…。
思う様な学園生活では無かったけれど、思った以上に色々あって、濃い日々だった。
…濃すぎる日々だった。
もしもゲームと同じ日常だったのなら、こんなに楽しかっただろうか。
…其れは其れで楽しかっただろうけれど、恋愛に現を抜かして其れこそ、破滅させていたかもしれない。
貴族では無い平民と貴族の恋愛。
空想世界だったら難しい関係も、全部上手くいくだろうけれど、
現実だったら、色々乗り越えなくてはならない。
平民から貴族に嫁ぐ事になったら、其れこそ膨大な知識を付けなくてはならないし、
向こうが貴族を辞めるにしても、貴族だった風習は抜けないだろう。
恋愛だけならば、互いに嫌な部分は見なくて気付かなくても済むかもしれないけれど、
その先に進むとなればそうはいかない。
貴族に嫁いだ平民は、別れて平民に戻れたとしても
逆は難しいだろうと思う。
其れこそ「恋愛に現を抜かした挙句、結局は馴染めずに愛も冷めて戻って来た」と言うレッテルを貼られるかもしれない。
平民の私には理解し難い事だけれども。
何て事を考えながら眠りについた。
朝、スマホのアラームで起きる。
部屋についている洗面所で、洗顔歯磨き、髪を整えて
メイド服に着替え、キッチンへと向かう。
昨日、あんなシーンを見せつけられた(濡れ衣だとしても)人に
会うのはとても気不味いけれど、まあ、社会人としては(多くは無いが)在り得る事だろうし…
大丈夫、前世ではそんな事があったような、無かった様な…
偶々、そう言う状況に出会った事は無いが(ただ単に興味が無くて覚えていないと言う可能性もある)、在ったかもしれない。
平常心、大事。
「おはようございます」
声を掛けると、
「昨日は、申し訳ありませんでした」
そう謝られた。
おお、90度のお辞儀だ。直角、凄い。
とかどうでも良い感想が浮かぶ。
「気に病まなくて大丈夫ですよ。ああ言う事(二次元で)よくありますし。頭を上げて下さい」
取り敢えず口角を上げて置く。
「そう言って頂けると助かります」
黒井さんは頭を上げる。
そして、調理を再開した。
「今日の朝食は何ですか」
そう訊くと、
「本日の朝食は和食です。」
謎の壺がある。
もしかしてこの中は糠漬け?
鯵の干物、茄子の煮びたし、ワカメと豆腐の味噌汁
材料からするとそんな感じだろうか。
いや、ワカメの酢の物や、ワカメサラダの可能性もある。
ワカメの可能性は無限大!!!(謎のワカメ推し)
取り敢えず手を洗って来よう。
「手を洗ってきます」
そう告げてから、手を洗いに行く。
報告大事。
手を洗い、キッチンに戻り、指示されるがまま、野菜を洗ったり、皮を剥いたり、切ったり。
ワカメは結局味噌汁です。
壺の中は、思った通り糠漬けで、胡瓜,人参,大根が入って居ました。
美味しそうかどうかは、全く判らないけれど(漬物は買う派)
美味しいんだろうなとは思う。
和食が似合う食器に、全て盛り付け、リビングに運ぶ。
全員揃って居た。
珍しく、藤堂先輩が目を輝かせている。
「米だ、漬物だ、味噌汁だ。」
「和食お好きなんですか?」
「ああ!大好きだ」
普段無表情な人が笑うとなんかいいよね。
そう思った。
「ボクも、和食好きだよ!」
謎の対抗心を燃やしてくる、伊織ちゃんは可愛い。
全員の食べている様子を見守りつつ思う。
箸の使い方も綺麗すぎて、私一緒に食べられなくて良かった。
と。
自分自身の箸の使い方が可笑しいとかでは無いが、この中に紛れて一緒に食事何て、恐れ多すぎる。
全員が食事を終え、食器を片付ける。
食器を洗い終えたら、黒井さんと一緒に遅めの朝食を食べ、
次はもうお昼ご飯の準備に取り掛かる。
因みにお昼はパスタ料理がメインである。
パスタ料理と言っても様々である。
マカロニを使った物やラザニアなんかもパスタ料理に入るが、今回のは、生麵のフィットチーネと言う、日本でよく見るスパゲッティより幅の広い平打ちののパスタを使った、カルボナーラにする様だ。
フィットチーネは、クリーム系が合うらしい。
因みに甘い物が得意では無い人向けに、ハラペーニョ入りの辛いパスタも準備するようだが、甘いのも辛いのも苦手な人にはどうするんだろうとか思ったけれど、そう言えば、今いる人達の味覚、甘い物好きか、からいもの好きか、どっちも好きの三種類しか居なかったな。
こういう時はすごく楽だ。
「ハラペーニョを扱うのでこれを」
ゴーグルを渡される。
辛み成分が目に入ると危険なので、その為だろう。
黒井さんと二人、ゴーグルをつけてキッチンに立つ。
傍から見ればとても面白い光景何だろうな。そう思いつつ、調理を続けた。




