本音と建て前って難しいよね
館内地図に寄ると、各階突き当りに掃除用具部屋があるらしい。
掃除用具部屋の中に入る。
はたき、箒、モップ、雑巾、ワイパー、ハンディモップ
色んな掃除用具がある。
「あ。ロボット掃除機」
此れを使うとしても、最後の手段。
先ずは、上から。
窓を開けてから掃除に取り掛かる。
頭には頭巾。
照明には手が届かないから、脚立も使う。
ハンディモップで、埃を落とす。
まあ、ほぼ埃は無かったけれど
気持ちの問題。
廊下の照明の掃除が終わったら、次は窓。
類が見ていたテレビ番組で“おばあちゃんの知恵袋”と紹介して居た事を試してみる。
窓の掃除には、新聞紙を使うと良いらしい。
こんな事もあろうかと、鞄に忍ばせて来た新聞が役に立つ時!
新聞紙を湿らせて、窓を拭くとピカピカに…
と思ったけれど、既にピカピカだから、これ以上は触っちゃ駄目な気がする。
この知恵袋は別の機会に使おう…。
廊下の床掃除の前に、各部屋の掃除をしておこう。
まず、端の部屋から、冬馬くん、大和(心の中では呼び捨てのまま)、蒼くん、伊織ちゃん
エレベーターを挟んで、悠先輩、麗斗先輩、一部屋空けて、姫花(と姫花のメイド)
因みに一部屋空けたのは、姫花のメイドの指示らしい。
姫花の部屋から掃除をしようと、
一応ドアをノックしてから、ドアを開けると
「貴女何なんですか」
居ないと思って居た姫花のメイド(姫花と似た赤髪、糸目、茶色いメイド服)が居た。
「黒井さんに言われて掃除をしに来たのですが」
「ハウスキーパーが入ったと聞いているので結構です!卑しい庶民に掃除何て!もし何か盗まれたら…どうしてくれるのかしら?」
まだ、各部屋に荷物は運び入れていないと言われたし、備え付けの物(ベッド、クローゼット、ソファ、テーブル、エアコン、テレビ)は全て固定されているから、盗めない。
タオル類や掛布団を盗んだ所で今の所重いだけ。
この辺りには、バスも来ないし(私有地)、駅までもかなり距離があるから、そんな物を運んでいる時点で怪しまれるだろう。
まあ、言葉の綾なのだろうが、庶民と呼ばれる人達が全て泥棒だとでも言いたいのだろうか。
だけど、掃除は要らないと言われたから
「承知いたしました。では、他の部屋の掃除に移らせて頂きますので、失礼します。」
「どの部屋も、掃除なんかしなくて構わないわ!」
取り敢えず逆らうと面倒臭そうな事になりそうだから、軽くお辞儀をして、部屋を後にする。
…まだ荷物を運び入れていないと黒井さんは言って居たけれど
ちらりと見えた、姫花の荷物と思われるものは、あのメイドが運び入れた物だろうか。
近くの部屋から、掃除を始めると、難癖を付けられそうなので、離れた部屋から開始しよう。
…ついでに、後で黒井さんに姫花の部屋の掃除が出来なかったと伝えておこう。
それにしても、あのメイド、姫花に着いて行かなかったんだな。
勝手なイメージだけれど、お嬢様付きの使用人は日傘を差したり、飲み物を渡したり付きっ切りで何かしていると思ったのだけれど、違ったようだ。
冬馬くんに割り当てられた部屋。
カーテンの色が緑なのは、髪の色(イメージカラーとも言う)だからなのだろうか。
廊下と同じ様に、上から掃除を開始する。
シャンデリアとかじゃなく、シーリングライトで良かったと心の底から思う。
流石にシャンデリアの掃除方法は知らない。
あのガラスとか燭台とか一個一個手作業でやるのはキツイ。
素人手を出すな危険。
プロの人は簡単な掃除方法を知っているのかもしれないが
掃除においては、ど素人だから、無理。
(自宅の掃除くらいは難なくこなせる)
ハンディモップを屈指して、隅の埃やらカーテンレールの埃やら取っていく。
ハンディモップ優勝!最強!最高!天才!
と色々な場所の掃除をしながら思っている。
天井から、備え付けの家具の裏や隙間を終え、掃除機をかける。
吸引力が凄い掃除機。
通販番組でよく見るけれど、(宣伝している人達が胡散臭くて)信用はしていなかったのだけれど
凄い、本当に凄い。
凄く売れるのが分かる位凄い。(凄いしか言って居ない)
最後に、ドアノブを除菌シートで拭いて部屋から出る。
(トイレや浴室は擦らずに流すだけの洗剤に頼った。後、拭いて流せるシートで軽く拭いた)
同じように他の部屋も掃除…の前に廊下にロボット掃除機を設置しておく。
充電がどの位で終わるか解らないけれど、廊下掃除はヤツに任せたい。
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大体の部屋の掃除が終わった所で、黒井さんが呼びに来た。
「お疲れ様です、どんな感じですか?」
「一部屋を除いて、掃除は完了しました。」
そう伝えると、黒井さんは顔を顰める。
「す、すみません、やはり遅かったでしょうか」
「あ、いえ、その一部屋と言いますと、仙崎様の…」
「はい、仙崎様付きの方に掃除はしなくて構わないと言われたので部屋に入る事すら出来なくて」
「勝手な事はしないで欲しいと伝えておいたのに勝手に部屋に荷物を運び入れて…」
ブツブツと何か呟いて居る黒井さん。
「仙崎様の部屋の掃除はしなくても構わないでしょう。何かあったら、直ぐに伝えて下さい」
真っ直ぐ視線を合わせる様に言われる。
見下ろされるでも無く、屈んで目線を合わせて言うから、何だか照れる。
攻略対象者達じゃなくても、かなり美形が多いから
本当に目のやり場に困る。
まあ、目は逸らさずに、見つめ返して、
「はい、わかりま…承知いたしました」
危ない危ない。
此処三日位、ビジネスで役に立つ敬語の使い方の本を読みこんで来たとは言え、やっぱり慣れないから、完璧な敬語使いには、なれないようだ…。
「私には、敬語では無くても構いませんよ」
気を遣われてしまった。
こう言われた場合の対処方法もあったけれど、
敬語じゃなくて構わない=タメ口可では無い。
敬語でもタメ口でも無い言葉が一番難しい気がしている。
「さて、そろそろ昼食の時間なので、料理を運ぶのを手伝って欲しいのですが」
「はい、お任せ下さい」
と言った物の先程迄掃除をしていたから、着替えた方が良いだろうと思う。
「すみません、着替えてからでも宜しいでしょうか」
「そうですね。では、先に戻って居ますので着替えたらキッチンへと来て下さい」
「承知致しました」
二階迄一緒に階段で降り、一度別れる。
部屋に入り、メイド服からメイド服に着替える。
普通に洗濯が出来るメイド服らしいから、今日の仕事が終わったら洗濯機を借りて洗濯しよう。
軽く畳んで、籠の中に入れて置く。
忘れないように、メモ用紙に洗濯!と書いて、籠の中のメイド服の上に置く。
(フラグかな?)
部屋から出て、鍵を掛ける。確認は念入りに。
フラグはへし折っておかなくては。
まあ、へし折った所で何かしらは起こりそうな気はしている。
世の中そんな物。
さて、キッチンに移動!
メイド服の隠しポケットに鍵をしまう。
穴が開いているとかベタな事は無い。
隠しポケットにはファスナーが付いているから簡単に落ちる事も無い。
完璧(何が)




