楽しい時間はあっという間に過ぎる
両親と合流後、色んなアトラクションに挑戦をしてみる。
父と類が、卓球勝負して居るのを観戦(?)したり。
「俺、卓球初めてなのに、必殺技使うのはどうかと思う」
とか、類がクレームを言って居たけれど
「本気でやらないと、不貞腐れるだろ?」
と言われ、納得はいかないような表情をしていたけれど
「……必殺技教えて」
とか言い出して、試合は途中で終わってしまった。
そもそも、卓球の必“殺”技ってなんだ。
「曲がる打球の打ち方を教えよう」
「強そう!」
いつも、大人びている、類の小学生らしい所を見られて
少し涙ぐんでしまった(何故か)
「類は冷めている子だと思ったけれど、無邪気な顔も出来るんだね」
と思わず呟くと、隣に居た母に
「そう?類は、璃々那が居ない所だと、結構あんな感じよ?」
そう言われ、驚いた。
「…何で、私の前では冷めて居るの」
「冷めていると言うより、弟として、姉を守らないとって思って居るんじゃないの?」
「守らないと…?」
なにから?
「璃々那は、モテるからね」
「モテる?」
何に?
「消える打球とか打てないの?」
類の声がする。
類、其れは、漫画の読み過ぎだと思う。(他人の事言えない)
「無理」
父は即答している。
「じゃあ、ぎゅんって感じの打球は?」
ぎゅん…とは。
「無理」
「えー…」
心底落ち込んでいるようだ。
類、微笑ましい。可愛い。
「曲がる打球だけでも凄いんだよ?」
「うん、其れは解る。でも、何かもっとカッコイイ技打ちたい」
「カッコイイ技」
小学生男子らしい思考で安心して居るけれど、父は困惑している。
「カッコイイ技が使えて居たらプロになって居たと思うよ?」
「そっか」
「諦めるの早い。」
「プロレベルは諦めるしかない。」
プロになろうとは思わない類可愛い。(可愛いしか言えない姉みたいになりつつある)
「類は、頑張れば、プロになれるかも知れないけど」
「プロになったら、世界とか行かないといけないから嫌だ」
「海外も楽しいと思うよ?」
「今はまだ、家族と居たい。どうせ学校卒業して大人になったら、家出しないといけなくなるから」
何故か母が咽る。
「大丈夫???」
璃々那は慌てる。
「だ、大丈夫よ。類が、家出とか言うから、驚いちゃって……」
母が目を合わせてくれない。
父も思いっきり引き攣らせた表情を浮かべている。
驚いたとかじゃなく、この2人もしかして…駆け落ち。
そう言えば、両親何方とも、親戚やら祖父母やら会った事無いな。
ゲームでは、メインが学園!恋愛!イケメン!だったから、気にした事は無かったけれど
現実では、会っても良さそうなのに、全く会った事も聞いた事も無かった。
かと言って別に会いたいとも思わなかったから、気にする事も無かったけれど。
結局、卓球勝負は途中で辞めたようで、ラケットとボールを使用後はこちらへと書いてある籠に入れ、
璃々那と母の元へ来る。
「次は、りりと、お母さんも出来る奴にしよう」
そう、類は言った。
「卓球飽きたの?」
「そう言うんじゃなくて、りりと、お母さん暇そうだから」
暇そうに見えたんだろうか?
父と類の試合を楽しく見学して居たんだが。
「お母さんが出来る物…」
母は悩む。
「アイススケートなら出来るけれど、今の時期はやってないみたいなのよね」
スケート場(冬季のみ)と案内板に書いてあった。
「母さんは、プロスケーターに成れるくらいの実力があったんだよ」
何故か、父が自慢げに言う。
「何で成らなかったの」
類が訊く。
「まあ、色々重なったから」
何がとは聞けない雰囲気。
きっと、さっき、家出に矢鱈と反応した事も関係あるんだろうなと何となく思う。
「其れ以外は?」
「類、お父さん、帰りの運転もあるから、なるべく疲れないようなものにしてね」
璃々那が、類に言うと
「疲れない物…って何」
そう訊かれるとは思って居たけれど
何も考えていなかった。
「ボウリングにしようか。その位なら、母さんも出来ると思うから。」
(出来る=ピンを倒せるでは無い)
「ボウリング1ゲームして、帰ろうか。夕飯までに家に帰る為には其れ位の時間しかなさそうだし」
時計を見て言う。(ざっくり計算で1時間ほどと見積もって置く)
序に、今この施設内に居る人が、何時ごろに帰宅をするか解らないけれど、思った以上に人が居る為、時間によっては、渋滞になるかもしれないと言う事も考えての、帰宅時間までの計算。
混まなくて、スムーズに帰る事が出来たら、その場合は夕飯を作る。
渋滞に巻き込まれたら、コンビニで夕飯を買って帰る事を提案しようと考える。
(コンビニでは無く、ファストフードやレストランで食べたり、スーパーマーケットでお弁当や総菜を買うでも良い。とか考える)
ボウリングシューズを借り、案内されたレーンに移動する。
ボウリングのボールを選んでゲーム開始。
・
・
・
「また、ガター…」
母は俯く。
両手投げで、コントロールも出来て居ないけれど、5回投げて1ピンも倒せていない。
でも、ボウリング初心者なら、仕方ないと思う。
其処まで落ち込む必要は無いと思うのだけれど、
さっきから、父と類が、ストライクしか出さないのを見れば、母が落ち込むのも理解できる。
チート過ぎて怖い。
父の事は知らないけれど、
類は、ボウリング初めての筈。
学区内に、ボウリング場は無いし(校則で学区外に行く時は保護者同伴必須)、校内の催し物でもボウリング場に行ったとか言う話は聞いた事無い。
因みに、璃々那は、かろうじて、ガターでは無いと言うくらい。
運動神経も、コントロール能力も悪くは無い筈なのだけれど
ボウリングの玉に慣れない。
重さ、持ち方、投げ(転がし?)方…
どれも、難解だと思う。
きっと、分析したら、ストライク出せそう!と思うけれど
遊びに来ているのだから、そんな事はしない。
単純に楽しみたい。
前世の分も。




