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フードコートは悩ましい

姫花たちから離れて、両親との待ち合わせ場所へと到着。

「お買い物は終わった?」

そう訊くと、

「ええ、色んなお洋服があって楽しかったわ」

…買い物は?

「お昼ご飯、何が良いかしら?」

「ステーキ」

類は即答する。

「この辺りの洋食エリアは、高級ブランドの牛肉を使用して居るから、今日は遠慮して欲しい」

本当に高かったんだろうなと思う程、ローテンションで言ってくる。

「かつ丼?」

察したらしい類は我が儘を言わずに、思いっきり目の前にある看板を見ながら言う。

某有名チェーン店の牛丼屋が、フードコートに入って居るらしい。

此処のフードコート限定のカツ丼らしく、看板に大きくカツ丼の写真が使用されている。

牛丼よりも目立っている、カツ丼。

トンカツじゃなくて牛カツなんだろうかとも思ったけれど、思いっきり国産豚使用って書いてある。

「フードコートエリアで、好きな物を買って一緒に食べれば良いのでは」

と提案してみる。(提案と言う程ではない)

「カツ丼、味噌汁付けて良い?」

父に訊く、類

「その位なら」

「大盛は?」

「残さなければ良し」

男2人は、カツ丼にするらしい。

「璃々那はどうするの?」

「サンドイッチか、うどん」

饂飩(うどん)ならお家でも食べられるわよ?」

「この施設限定のトマトレモン饂飩(うどん)って言うのがあってね…」

「夏らしいわね」

「サンドイッチの方はね、夏限定の桃のクリームチーズサンドと言う物があって…」

「美味しそうね…」

「悩むよね」

「其れなら、シェアして両方とも食べるって言う手もあるわよ」

「お母さんは其れで良いの?」

「話を聞いて居たら私も食べたくなっちゃったんだもの」

「じゃあ、そうしよう」

きっと母は、色んな事を見越していて、先に私に訊いてくれたんだろうと思う。

外食する時は、いつも母は他人を優先させる。

優柔不断な娘でごめんなさい。と心の中で思いながらも、悩む物は悩む。


サンドイッチと饂飩(うどん)を無事に買い、類と父を探す。

ピンク色の髪は目立つ。

序に言うと、容姿端麗×2だから益々目立つ。

「お待たせ」

そう声を掛けると

「待って居ないよ。」

紳士的な返しを有難う父よ。

だが、周りの老若男女の視線が痛いよ…。

何だ女居たのかよって言う無言の圧怖い(気のせい)

「揚げ物だから、時間かかるって。」

類は、項垂れている。

「あ、それと、ほら、コジローサマ。俺に持たせたままだっただろ。恥ずかしかったんだからな」

…?

あれ?受け取って、その後一度持って貰って居たんだ…

「あ、有り難う。ごめんね?」

「別に良いけど…」

「類、ワンコインショップでその縫い包みが入りそうな袋探していたんだけど、見つからなくてそのまま持っていたんだよ。」

え、何それ、うちの弟尊い。

「カツ丼注文した時に揚げ時間10分かかるって言われたから…」

「その気持ちがとても嬉しいから、チョコレートパフェを買ってくるね」

「せめて、カツ丼食べてからにして欲し…」

ぴぴぴぴぴ…無機質な音がスマートフォンと同じくらいの大きさの機械からしてくる。

「受け取りに行ってくる。母さんと、りり早く食べないと伸びるよ。」

その機械を手に、父と類はカツ丼を注文したと思われる店舗に向かった。

いつの間にか、母は取り皿(小丼)に饂飩(うどん)を移し替えていた。

「先に食べていないと、類が膨れっ面をして怒るから食べていましょうか」

「うん。」

膨れっ面の類も可愛いけれど、其れを言うと益々気分を損ねるから大人しく食べておく事にした。

と言っても、すぐ戻って来たけれど。


「ボリューム凄い…」

「みんな同じにしなくて良かったわね…」

「大盛りだからね。」

「流石育ち盛り」

「…父さんは、普通盛りだった筈なんだけれど、あまり変わらないな」

少し困ったような顔をしているのは、食べきれないと言う不安ではなく、

縦に成長する類と違って、横に成長するかもと言う不安なのだろう。

「此処、一応室内スポーツの施設だから、食べて少ししてから運動すれば良いんじゃない?」

「次は筋肉痛が怖いな…」

「マッサージもあるから、其処で解して貰えば」

「マッサージなら、私がするわ」

母は、どうやら、他人に父を触らせたくないようだ。

らぶらぶだな、と思う(慣れている)

「トマトレモン饂飩(うどん)おいし…」

口に出すつもりは無かったが、余りの美味しさについ、言ってしまって居た。

「酸味だけじゃなく旨味も出て居るのね。簡単に作れそうだけれど、この味の深みは簡単に出せる代物ではないわね」

食レポか。と突っ込みそうになる。

けれど、本当にそんな感じがする。

「次来たら、其れ頼んでみようかな」

類がぼそりと言う。

「期間限定だよ?」

「大丈夫、期間内に来るから」

友達と、だろうか。

「ま、まさか、彼女…」

衝撃的な考えに至ってしまった。

「クラス全員で、遊ぼうって言いだしてる人たちが居て、其れで此処提案しただけ。20人以上だと団体割引も利くし、小学生以下の割引もあるから、他の施設で遊ぶより安く済みそうだし。来年は受験とかあるから、クラス全員で遊ぶとか無理そうだから、今年中に…」

「そっか、じゃあ、楽しむために、今日はリサーチしていこう!」

「一緒に来るとしても、別に一緒に行動する訳じゃないから…」

「そうなの?」

「結局は、仲いいグループで行動するだけだよ。」

そう言って、トンカツを頬張る、類。

本当に、類は、子供らしくないと言うか…

まあでも、それが類だからいいか。

それにしても、うどん美味しい…。

うどんを食べ終え、サンドイッチに手を伸ばす。

一切れではなく、四切れ入っていた。

母と半分ずつにしようと思って居たけれど、案外ボリュームがある。

「流石に、全部は食べきれないわね…」

「アイス買って、保冷剤貰って、一緒に入れて置けば良いんじゃない?」

有名チェーン店のアイスクリーム屋を指さす、類。

「冷凍用のコインロッカーもあったし」

「さっき、カツ丼買う前に、アイス食べたいって言って居たから、ナイスタイミングだったな」

父が言うと、類は赤面させて

「父さんだって!レモンシャーベット買おうか悩んでいたくせに」

甘党親子。可愛い。

「じゃあ、私、アイス買ってくるわね」

そう言って、母は立ち上がる。

「璃々那は、チョコと苺どっちが良い?」

あのアイスクリーム店でアイスを買う時、その二個で悩むことを知っている母らしい選択肢。

因みに、類はいつでも何処でもソーダ味。無い場合はバニラ。

「苺フレーバーにチョコトッピング!」

確か、何かのコラボやっていて、そう言うフレーバーがあるはずだと思いだした。

しょっちゅうCMで見るから、まだコラボ期間内だ。

「わかったわ。」

いつの間にか、カツ丼を食べ終えた父は

「一緒に行くよ」

母の横に立って、そう言った。

アイスクリーム店に向かう両親の背を見て

「…あれで、恋愛結婚じゃないって驚きだよな」

そう言った。

「え?」

「知らなかったの?」

初耳だった。

「お見合いだって。父さんは、そのお見合いで、母さんに一目惚れしたらしいけれど、当時母さんには、身分違いの恋人が居たらしいよ。」

…私が知っている話とは違う。

私が知っている話だと、身分違いの大恋愛の末、駆け落ちした…って聞いた気がする。

誰に?いつ?何処で?両親から、そんな話は聞いたことが無い。

「類は、何でそんな事知って居るの?」

「さっき、りりと母さんの事を待って居る時に、聞いたんだよ。」

先刻。何で、そんな話をこんな所で。

「何でそんな話になったの」

「お見合い後の初デートが、こんな感じの所だったんだって言い始めて。馴れ初めを聞かされた。」

聞かされた。

「まあ、その後に母さんは、当時の恋人と駆け落ちしたらしいんだけど、相手側の家族が捜索して、見つけられて…」

類は、其処で話を止めた。

「ごきげんよう、先程ぶりね」

姫花が立って居た。




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