クレーンゲーム怖い
「小次郎様……」
クレーンゲームの前で、ブツブツと何度も名前を呟く。
「りり、いつも物欲センサーのせいにしているけど、ソレが駄目なんじゃないの?逃げられて居るんだよ、コジローサマに」
「え、愛を注いで居るだけなのに」
「愛って言うか呪いっぽい」
「のろ…失礼な」
「今何回目だったっけ」
「えっと、三回目…かな」
視線は揺れ動く。
「その倍ね」
「アームが弱いんだよ」
「此処、他の場所より良心的な価格だから、其処迄散財してないけれど」
良心的な価格とか、散財とか言う10歳の少年…
「いつまでやる気?」
「あ、あと一回」
「其れ、多分取れるまで言うよね?」
ジトっとした目つきで見てくる、類。
「だって此の、小次郎様の縫い包み、尊みが革新的で革命的で改革的で、凄すぎるんだよ」
「その発言だけ聞いていると、頭良さそうに思えないよ」
「其れは解って居るんだけど」
「りりがやると永遠に取れない気がするから、貸して。取ってあげる」
え、待って何このイケメンな台詞。
「類、本当に10歳?」
「生まれた時から知ってるのは、そっちね」
「産まれたばかりの類は本当に天使かと」
と力説して居たら
目の前にフワフワな縫い包みが差し出される。
「え、」
「取れたから、早く受け取ってくれる?」
早業。いつの間に
「ありがとう」
そう言って受け取る。
目の前に天使と推しの縫い包み。
何この瞬間、此処は天国かな。
「お礼に、お姉ちゃんが何でも買ってあげるよ、類」
「考えとく」
此の素っ気なさも可愛い。
なんて思って居たら、何処からともなく高笑いが聞こえてきた。
「庶民の方は、こんな物で幸せになれますのね。安上がりで羨ましいわぁ」
こんな物?
誰かは判って居るから、スルーしたいところだけれど、其れをすると不敬だとか言い掛かりを付けられそうな気もする。
さてどうするべきか。
人間難しい。
「関わったら駄目だよ」
類が怪訝そうに言う。
「言いたい人には言わせておけばいいんだから。」
解って居るからこそ、関わりたくないけれど、きっとそれは無理。
向こうは、私の事を認識した状況出来て居るのだろうから。
嫌いな相手に関りに来るなんて、やる事無いのかなと、考えつつも口には出さない。
序に、奏太先輩の友達って姫花だったのか…とも思う。
取り敢えず声のする方をこっそり見る。
………!?私は目を疑った。
アノ姫花が露出して居ない。
制服以外では、矢鱈出すトコ出していたのに、今日はお洒落(?)ジャージ着用…だと!?
有名ブランドの物だろうけれど、顔以外全て覆われている…流石に不特定多数が居る所では、身の危険を感じたか…。
と、かなり失礼な、想像をしてみる。
此処に居ると知って態々来たんだろうけれど…
出来れば今会いたくない。
小次郎様の縫い包み抱えている姿見られたら、なんて嫌味を言われるか…
「あ~~~~~ら、何処かで見た事があると思えば、貴女だったのね」
まあ、バレてるよね。知ってた。
「うわ」
類が嫌そうな声を出している。
「りりの知り合いだったんだね」
「あ…うん、学校の…」
同級生ではない。友達でも無い。どういう関係なのかは、さっぱり判らないから、ただの知り合いって事にしておこう。
「其方は?」
姫花の視線が類に移る。
「弟です」
そう答える。
何となくだけど、類と姫花を会話させない方が良いと思った。
「へえ、弟。ねえ、貴方、私のモノにならない?」
類の目を見て、とんでもない事を言い出したと思った。
「え、嫌ですけど。」
類は怪訝そうな表情を隠すでもなく、そう言った。
「りり、そろそろ、待ち合わせ場所に行こう。父さんと母さん待ってると思う。」
姫花の横をすり抜ける時、類はとても不快そうな表情を浮かべた。
―――姫花視点―――
(年下、ツンデレ、騎士、敵の弟…
良いわ、良いわ、良いわ!あぁ…
あの女が泣き叫ぶ所が目に浮かぶ…)
姫花は恍惚とした表情を浮かべ、立ち尽くしている。
(それにしても、流石あの方たちの息子…
とても顔が良い……
失敗作のあの女とは似ても似付かないほどに…)
(今はあの女が良いかもしれないけれど、近い内に…)
「うふ、うふふっふふふ…」
正直美しさと掛け離れたような表情で笑って居る。
―――奏太視点―――
(一応、お目付け役という事で、姫花に着いて来たけど、突然笑いだして怖いんだけど。)
ドン引きしている。




