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契約書大事。

一学期最後の授業が終わり、帰路につく。

今日は図書室の立ち入りは出来ないので、早々帰る事にした。

のだけれど、

悠先輩から

【アルバイトの件について、一応誓約書、契約書を書いてもらいたいから、帰る前に生徒会室に来て欲しい】

と言うメッセージが届いた為、急いで(廊下は走らない)生徒会室に向かった。


生徒会室をノックすると、

珍しく麗斗先輩も居た。

他の生徒会役員の姿は無いので、会議とかでもなさそうだと思った

ソファに腰かけるよう促された後、

「ライチとスイカどっちが好き?」

悠先輩は唐突に、そんな事を訊いてきた。

「何方も好きです」

謎の選択肢なので当り障りのない答えをする。

「じゃあ、桃と夏蜜柑は?」

またしても謎の選択肢。

「桃ですね」

取り敢えず桃を選択。

「そう。じゃあ、桃のお茶入れるね」

そそくさと、お茶の準備を開始する、悠先輩。

ああ、何フレーバーのお茶が良いかの質問だったのかと

漸く理解する。

「スイカにしなくて正解だったぞ」

真顔で言ってくる、麗斗先輩。

そう言えば、麗斗はスイカが得意ではないとか設定資料に書いてあった気がした。

(嫌いでは無く、得意ではない。)

「麗斗には、普通のダージリンしか出さないから、スイカ選ばれても関係ないんだけどね」

そう言って目の前に氷が入ったグラスが置かれる。

そして、氷の上から、温かい紅茶が注がれる。

(耐熱性では無いグラスだと割れる可能性もある)

お湯の温度で氷が解け、涼しげな音を立てた。

「アルバイトの契約内容を確認の上、此処に署名をお願いします」

目の前の椅子に腰を掛けた悠先輩は、突然敬語に変わった。

「はい」

自然と、璃々那も背筋が伸びる。

そして、契約内容を読む。

特に変わった所も無いアルバイトの雇用契約書だったので、署名する。

こう言う物に有りがちな、物凄い小さく書いてある注意書きを探してみたけれど

そう言うのも無かった。


「本当はこう言う物じゃなく、履歴書で良いんだけれど、契約書の方が良いかなと」

…履歴書を書けと言われて書けなくはないけれど、正直、この契約書の方が有難い。

必要最低限の事だけ記入すればいいから。

「あ、未成年だから保護者のサインが必要だったね…」

「明日、持って来ましょうか?」

そう言うと

「当日に渡して貰えれば良いよ」

「そうですか…」

迷惑だっただろうか。

「あ、明日から、海外を転々とする予定で、帰国するのが、その…君にアルバイトに入って貰う日の前日だから、」

海外を転々…夏休み前半かなり忙しい感じ?

「何か訊きたい事とかあったらいつでも連絡してきて良いから。」

「はい、有難う御座います。」

ゲームだった時も、夏休み前半は、デートっぽい事出来なかったな。

その間に他の攻略相手と仲良くなって、いつの間にか別ルートとか、逆ハーレムとか…

チート系乙女ゲームで最も攻略が難しいと言われ…(でもヤンデレルートがあった)

確か、ヒロインが、毎晩メッセージを送ると好感度が上がる。

けれど、何処かの日で、ヒロインが風邪をひいたり、夏祭りに行ったり…

ランダムイベントに突入する場合があるから、そうなった瞬間、1日分やり直さなければいけなかったり…

凄く面倒臭いルートでもあった。


ランダムイベントを完全回避する方法を知ったのは、スーパーハッピーエンドを終わった事を、ブログに書いた時だった。

コメント欄で“悠先輩ルートでランダムイベントを発生させないコツとしては、1学期に、攻略対象と関わらず、6月に商店街であるクジ引きで世界旅行を当てて下さい”と…

…商店街のクジ引きで世界旅行って…

本当に何でも受け入れることが出来る人向けのゲームだなと認識した。

因みに、言われるがまま、誰のルートにも入らないで、6月まで過ごすと強制的に、商店街のくじを引くイベントに行けたのだけれど、各キャラの好感度爆上げアイテムがランダムで当たる仕組みらしく、其れこそ、物欲センサーが異常に働いているせいで、世界旅行のチケットが当たるまで何度も遣り直した。


ランダムイベントの度に遣り直すよりも時短にはなったけれど、面倒臭いのは変わりなかった。


「どうかした?」

ぼーっと考えていたから、不審に思われたようだ。

「いえ、両親に書いて貰って当日渡しますね」

グラスに残っていた紅茶を飲み干して、書類を鞄に入れ、立ち上がる。

「では、急ぐので、失礼します」

そう言って、生徒会室を後にした。


―――悠視点―――

「アルバイトって何をさせるんだ?」

唐突に、麗斗に問われた。

「何って、別荘の雑用。」

「毎年、人に世話を焼かれるのが嫌だからと、従者も連れずに行くのにか?」

「僕の気まぐれだよ。」

「気まぐれ、か」

「そう、気まぐれ」

「悠は、彼女が好きなのか?」

「好き…と言うか気になる存在ではあるよね。」

「珍しいな。悠は基本どんな人にも、好意を抱かないだろう」

好意、なのかは解らない。

「其れだけ聞くと、僕はとても冷たい人みたいじゃない?」

「浮気者よりは良いと思うが?」

「特別な感情を抱いている訳では無いよ。」

「だが、特別扱いはしているだろう?」

「特別扱い…本人にもそう思われているかな」

「どうだろうな。」

気付かれていても特に気にならない気がするのは、麗斗が言う通り

特別扱いをしているからなのか、ただの偽善なのかは判らない。


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