仲直り?
午前の授業が終わり、お昼休みになる。
姫花は、数名の男子を引き連れて教室から出て行った。
今日はお昼ご飯何処で食べよう。
そう悩んでいると、
「璃々那ちゃん…」
気まずそうに、伊織ちゃんが声を掛けてきた。
「伊織ちゃん。ひ…仙崎さんの所に行かなくて良いの」
我ながら冷たい言い方だと思った。
「あの…ごめん。」
何に対しての謝罪だろう。
「ずっと謝りたかったんだけど…」
と言いながらも、全然目が合わないのはなんでだろう。
「今日を逃すと接点無くなるかと思って…」
メッセージアプリで繋がっているのに?
とかは言わない。
「言い訳はしない」
言い訳して貰った方が、何で突然接する事が無くなったのか判り易いんだけれど、まあ、言いたくないみたいだし、追及はしない。
「許してくれるかな」
許すも許さないも、謝罪って自己満足だったりするし、
此処で許さないって言い辛い。
其れに、正直こういう事には慣れている
今世は、良い人としか付き合わないようにしているけれど、前世では…
思い出したくも無い様な人達に付き合わされていた。
謝れば全部許されるような考えの人達、謝罪を受け入れないと、物理的に制裁を加える人達。
「別に怒って居ないから、許すも何も無いよ」
怒ってはいない。悲しかったけれど。
「今日は仙崎さんの所に行かなくて良いの」
「今日はと言うか、ボク、姫花と一緒に居ない方が多いよ」
え?
あれ?
私と一緒に行動しなくなってから、いつも姫花と一緒に居るんじゃないの?
私の勘違い?
「なんだ…そっか…」
伊織ちゃん姫花ルートに入ったかと思っ…
「あの日の事がずっと頭から離れなくて…伊織ちゃんも仙崎さんを好きになったと」
「も?」
「あ、ええと、此の学校の人皆、仙崎さんの事好きみたいだから」
皆かどうかは判らないけれど。
「まあ、家柄的に特別扱いしないと、どうなるか判らないからね」
…家柄。
そう言えば、姫花の家の事は全く知らない。
設定資料にも家の事は全く書かれて居なかったし、姫花を主人公にした同人誌を描いていた、原案者も姫花の家の事には全く触れなかった。
姫花に限らず、全ての登場人物の親の職業は一切描かれていない。
爵位だけは設定資料に書かれては居たけれど。
物語には全く関係ない事は省かれていたんだろうと思う。
だから、ゲームの中では起こらなかった事があるんだろう。
そう考えた。
「特別扱いしないとどうなるの」
「最悪の場合、退学?…と言ってもそんな権利、姫花自身には無いけれど」
つまりは、姫花の親族には此の学校に関りがある人が居ると言う事か。
簡単に退学させる事が出来るほどの権力を持っている。
…成る程、其れで、私を急遽新クラスに移せると言う事が…
でも、そんな事が出来るのなら早めに自分をA組にする様に頼んだら良かったのでは。
と思ったり。
若しくは、私を退学させるとか。
態々それをせずに、私を新クラスに移動させ、自身はこんな中途半端な時期に、Aクラスに転組(?)してくるなんて
……不思議だな。
…は!お昼ご飯!(重要)
「伊織ちゃん、お昼行かなくて良いの」
「え、璃々那ちゃんはどうするの」
此処で食べる。
とは言いだせない。
何となく。
一人ご飯も慣れている。
「其れなりに済ませるから気にしないで行ってきて」
我ながら、謎の言い方だと思う。
けれど、その言葉に何かを察したらしい伊織ちゃんは、とても申し訳なさそうな表情を浮かべて教室を後にした。




