居た堪れないってこう言う気持ち
お茶の準備をされてしまった為、生徒会室に入らなくては、いけなくなってしまった。
「本当に良いんですか?」
生徒会の応接間と思われる、やたらとフカフカしているソファに、身を任せそうになりながら、(何とか耐えている)そう訊く。
「ん?何が?」
キョトンとしながら、悠先輩が、物凄く香りが良いアップルティーを注ぎ入れつつ、言う。
「本来なら、生徒会役員以外入室不可と言われているのでは?」
「そうなんだけど、生徒会長が直々に連れて来てる時点で、入室不可も何もないよ」
「そうなんですね…」
「それにしても、君が、傘を貸してくれた人だったとは…世間は狭いね。」
「ソウデスネ(棒読み)」
思わず目を逸らす。
「マカロンとクッキー、何方が好みか判らぬから、両方持ってきた!」
如何にも高そうなお皿に、ピンク色のマカロンとアーモンドが乗っているクッキーを乗せて持ってきた。
「お気になさらず…」
「何方も、お勧めの菓子店から仕入れている物で、この間のパーティーでも出したんだけれど…」
何かに気が付いたようだ。
「は!!!君はあの時、ドレスを返しに来た…」
「気付いていなかったの?」
怪訝そうな表情をする、悠先輩。
「仕方ないだろう?返されると思わなかったドレスを、返されたという事に衝撃を受けて居て、その人の顔まで、覚えて居なかったんだ」
「まあ、結局は返す事を許されなかったので、有り難く着用させて頂きました。」
「ところで、あの時は何故、あんなに頑なに受け取ってくれなかったんだ?」
「私は、庶民なので、憐れまれて、施しを受けたのだと勘違いしたのです。」
「そう感じるものなのか!?」
驚かれてしまった。
「いえ、あの時は何と言うか、周りが全て敵になったと思い込んでいたと言うか…」
今思い返すと本当に、自意識過剰すぎて自分が気持ち悪い。
「確かに、貴族が通う学校に、初めての平民入学生だったから、不安だったのか…」
「其れに、アレもだよね。」
悠先輩が口を挟む。
「アレ」
麗斗先輩はピンと来ていない様子。
「入学式の日に、姫花が」
「ああ、何か泣き叫んでいたな」
忘れて居たようだ。
「姫花が我が儘を言うのはいつもの事だから、忘れて居た。」
「まあ、そうだけれど。あの日は、貴族としてのマナーを全て放棄したかのような態度だったから、僕は忘れられなかったよ。」
貴族としてのマナー…?
「人を指差すなんて、貴族として絶対にしてはいけない事なのに」
「そんな事をしていたのか」
麗斗先輩は興味が無さそうに言う。
「見て無かったのかい?」
「泣き叫んでいるのをどう対処したらいい物かと考えて居た。」
「相変わらず、無関心なんだね」
無関心?その割には、ランチに一緒に居たりこの間も一緒に居たのに、無関心?
「関心も何も、あの時は生徒会長としてどうするべきか。と言う方が重要だと思っただけだ。」
「結局は、何もしなかったけれどね」
「泣き叫んだかと思えば、いつの間にかすっかり泣き止んで勝手に自分のクラスの昇降口に向かったからな。切り替えが早いと言うか。」
「そんな事考えて居たの?」
悠先輩は呆れたような顔をしている。
「関心していた。」
「本当、麗斗は…マイペースと言うか」
悠先輩は、別の言葉を発しそうになって居た気がした。
「昔、母が女性は皆演者だから、本心を見抜く努力をしなさいと言って居た事を思い出したんだ。」
…ゲームのプレイヤーだった時、麗斗先輩の過去回想で
確かにそんなシチュエーションがあった記憶がある。
その回想が出るのは、確か選択エンド決定時だった記憶がある。
(通常ハッピーエンド、ハーレムエンド、そして二人のキャラを同じ親愛度に上げつつ進めなければ見る事が出来ない、選択エンド(最後にどちらかを選ぶから、選択エンド)バッドエンドの4種類のエンディングがあった。)
その選択エンドに入った時、各キャラのトラウマだったり、思い出が本人の口から語られる。
(プレイヤーには、過去回想として、攻略キャラのショ…幼少期のスチルが入手出来る)
「あの人なら言いそうだね。」
「都筑先輩は、生徒会長の御母上を御存じなのですか?」
「家族ぐるみの友人と言うか、元々、母親同士が友人なんだ。」
「え」
悠先輩のお母様は、庶民出身だった筈。
麗斗先輩のお母様は貴族出身で…二人に接点は無かった筈…
作中で語られなかっただけなのか、それとも、また別の何かなのかは判らない。
「驚く事だった?」
そう、悠先輩に訊かれ
「あ、深い意味では無いのですが…」
「ああ、君も僕の母親の出自の噂を知って居たんだね?」
「…はい。すみません」
噂になる位の事なんだ…。
「謝らなくて良いよ。」
「悠の母親は、俺の母の恩人だからな。其れに、俺の母は、庶民も貴族も皆同じだと言う考えの人だから、悠の母親と友人でもおかしくはない。」
恩人。
「まあ、その事で、貴族主義者の姫花一家に厭われてはいるがな。」
母親の思考が嫌なのに、婚約したままなのは、其れだけ、神堂家との繋がりを作るという事は重要な事なんだな…。と思う。
まあ、母親の思考は置いといて、麗斗先輩の見た目や能力が好きと言うのもあるのかもしれないけれど、その辺は知らない。
それにしても、此のアップルティ美味しすぎる。(重要)
「此のアップルティ―何処で買えますか」
一応聞いてみる。私には買えないだろうけれど。
「駅の近くのスーパーマーケットで特売してた物だよ」
「え」
「驚くよね。僕の母親が庶民だったのは知って居るよね」
「噂程度ですが。」
「その影響で、ああ言う庶民向けのお店結構好きなんだよね」
「帰りに寄ってみます!」
食い気味に言ってみる。
と同時にやっぱり私は庶民なんだな…と実感する。
あ。そうだ序に今言ってしまおう。
「あの、夏休みのお手伝いの件なのですが、お願いしても良いですか?」
そう言ってみると、とても嬉しそうな表情をして
「良いのかい!?」
そう言われた。
イケメンの屈託のない笑顔眩しい。
「はい」
「7月30日から8月10日まで住み込みで働いて貰おうと思って居るんだけれど、大丈夫かな?」
住み込みは聞いていない気がする。
「住み込み…すみません、母に相談しても宜しいでしょうか」
「勿論。ご家族と話し合って決めて欲しいな」
「あの、其れで、決まったら、連絡をしたいのですが、連絡先を教えていただけませんか」
正直言って、この人達を探すのはとても面倒だという事を身をもって理解した上での提案だ。
「そうだね。メッセージアプリで良い?」
「はい。」
スマートフォンを取り出し、メッセージアプリで友達登録をする。(友達なんて言い方はとても烏滸がましいけれど)
悠先輩と交換し終えて、スマートフォンを片付けようとしたら、何故かキラキラした眼差しで、スマートフォンを向けてくる、麗斗先輩が居た。
「え」
思わず声に出す
「悠ばかり狡い」
「何狡いって」
「俺とも、友達になろう」
断り辛い。
「良いですよ」
ウキウキしながら、友達登録してくる麗斗先輩。
「いぬ」
思わず口に出してしまった。
麗斗先輩のアイコンがゴールデンレトリーバー(子犬)だった。
「俺の家族のレオンだ。」
因みに悠先輩のアイコンは、三毛猫だった。
「君のアイコンは…」
あ。武士恋の缶バッジのままだった…
「この間クレーンゲームで取ろうとしていたキャラかな」
バレた。
「そうです…」
何だろう此の居た堪れないような気持ち…。




