アレは誰で、何故私は
うなされて、目が覚めた。
体中、嫌な汗が纏わりついている。
紅い目がずっと此方を見ている様なそんな気がして
目が覚めて居る筈なのに、震えが止まらない。
あの後、お手洗いから出ると
談笑している姫花が見えた。
紅い髪は、鏡に映って居た人よりも明るい紅に見える。
鏡に映ったあの髪色は姫花の髪の様に薔薇色では無く
其れこそ鮮血の様な色だった気がする。
じゃあ、アレは誰。
私は、誰を見たと言うのだろうか。
そして何より、今日の姫花は紅い口紅をしてはいない。
心の何処かで今日の事を信じたくなくて白昼夢を見たとでも言うのだろうか。
一緒に来た筈の伊織ちゃんが
味方だと思っていた伊織ちゃんが、姫花の横にぴったりとくっついて居て
私に目もくれない。
いつ勘違いをした?伊織ちゃんだけは私の横に居てくれるって。
解っていたじゃない。
この世界は姫花の為に存在をして居るんだと。
其れなのに、何故こんなにも胸が押し潰されそうな位苦しいのだろう。
彼らに背を向け私は、また独りで移動する。
泣くな。
私は、悲劇のヒロインなんかじゃない。
それから私は、無我夢中でスポーツエリアで独りで出来そうなアトラクションを
選んで、こなして行った。
スラックライン、トランポリン、スカッシュ、ボウリング、シャトルラン(アトラクションか?これ)…片っ端からやり終え、シャワールームで汗を流した後に気が付いた。
身体は綺麗になったけれど、服は汗に塗れたままでとても臭いし、何よりべた付く。
確か、服屋も入って居たはずと思い出し
ファストファッションのチェーン店を発見したので、マネキンが着ている物をそのまま丸ごとと、下着を購入した。
シャワールームに戻り、着替える。
着替えてから気が付いた。
「コインランドリーあるんだ…」
まあでも、裸でコインランドリーを使用するわけにもいかなかった訳で…
取り敢えず着てきた物をショッパーに入れて持って帰るにしても臭いのは変わりないし…
洗って帰ろう。
コインランドリーに来て着た服を投入し(全自動の為洗剤の持ち込みは不可)
靴の洗濯機も有ったのでついでに洗う。
便利。
次来るときは着替えと、匂いが漏れない圧縮袋持って来よう。
そう決めた。
洗濯、乾燥が終わり(通算1時間程)
洗濯した物をショッパーに入れ、施設を後にする。
姫花たちは帰ったようで、姿が見えない。
伊織ちゃんから【姿が見えないから、帰るね】
という何とも言い難いメッセージが届いていた。
連れてきた人としてどうなんだ?と思ったけれど、そんな事もうどうでも良くなっていた。
伊織ちゃんは選んだのだ。
私よりも、姫花を。
施設から出ると、外は既に薄暗くなりつつあった。
此処から一番近い駅に向かって…そう思ったら
「あ、やっぱりまだ居た」
「冬馬くん、何で」
「うーん?何でって言われても。まだ居そうな気がしたから」
「姫花…さん達と帰ったんじゃ…」
「何で?」
何でで返されても困る。
「家の車呼んだから、送っていく。」
「え、電車で帰るから」
「此処から駅までかなりの距離あるよ。本格オープンしたら駅までのシャトルバス出るらしいけど、今日はプレオープンだし…」
かなりの距離とは。
疑問に思って居ると、スマホのマップを見せてくる、冬馬くん
「此処が、現在地。駅まで5㎞」
「5㎞…」(平均で1時間以上かかる計算になる上に、この辺の土地勘は無い。そして直線距離で5㎞の場合、実際はもっと距離がある。タクシーを使う場合、やはり土地勘が無い為ぼったくられる可能性もある。治安は悪くなくても危機感大事。)
「お願いします」
厚意は有り難く受け取っておこう。
って事で、冬馬くんに家まで送って貰い、家に着いて部屋で疲れ果ててそのまま眠りについた…気がする。
多分夢を見て居たんだろうから…眠って居たのは間違いないと思うけれど
何処から何処迄が夢?
のろのろ起き上がり、灯りを点ける。
其れから、時計を確認すると
21時少し前を指していた。
物凄く運動したはずなのに、お腹が空いて居ないのか
空腹すぎて逆にお腹が空いて居ない気がしていないのか定かでは無いけれど
纏わりついている汗が気持ち悪くて
着替えを手にして、部屋から出た。




