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何でこうなった

私は今

何故か、ゲームセンターエリアで

クレーンゲームをしている。

…イケメン3人に囲まれて。

結局、悠先輩からは逃げきれず、悠先輩と一緒に着いて来た藤堂蒼(雨の日に会った人)と

トイレから戻って来た冬馬くんが私のクレーンゲームを見守っている。

正直気が散る。


今、何故私が必死にクレーンゲームをしているのかと言うと

武士恋(ぶしこい)のグッズのクレーンゲームを見つけてしまったからである。

其処にふらふらと惹かれる様に、近づいて、思わず財布の中のコインを投入していた。

そうして気が付けば、今の状況。

何でこうなったのだと私が訊きたい。

髷を結ったイケメンの武士のぬいぐるみを取ろうとしている女と

イケメン3人組。

何この状況。

だがしかし!私は頑張って、コジロー様を入手する。

本当なら全5種類コンプリートしたいところだけれど

思いのほか此のぬいぐるみ大きい。

縦45㎝…流石に持ち帰るの大変そう。

…不安なのは此処のアーム弱かった時だ。

持ち上がらない可能性がある。

こういうのが得意な人は色んな手法を知って居るんだろうけれど

私は其処まででは無い。

頑張れアーム!!!(他力本願)


やはり、アームは弱い。

持ち上がる事無く、少し動いただけで、終わった。

『軟弱な!貴様それでも武士か!』

武士恋の硬派キャラのムサシ様の声が聞こえた気がする(幻聴)

(元々存在する武士の名前を使用しているだけで、見た目も性格は史実とは異なる)

元々、1プレイで止める予定だったから、終わり。

さて、次は何処に行こう。

ご利用は計画的に。

重要。

と言いつつも、今の状況では無かったら

取れるまでやって居ただろうと思う。

この状況に感謝すべきなのか、それとも恨むべきなのか解らない。

けれど、ひとつ心に決めたのは

他の店舗で、此のクレーンゲームがある場所を調べよう。

という事だった。(オタク脳)

「あの、何で着いて来るんですか…」

「大人数での移動は苦手なんだよね」

悠先輩は言う。

「一緒に遊ぶって決めてたし」

伊織ちゃんと遊ぶって約束だったのでは。

そもそも私とは約束も何も…

「雨の日のお礼言いたくて」

ぶっきらぼうに蒼くんが言う。

「覚えてたんだ…」

思わず口に出していた。

「忘れるはずない。あのまま誰にも気にされなかったら、帰れなかった…」

真っ直ぐ目を見て言われるから、思わずドキリと胸が高鳴るのを感じた。

おお…流石イケメンアスリート…顔が良すぎる。

「雨の日って?何かあったの?」

私と蒼くんの話に割り込むように口を挟む、悠先輩。

「迎えが来ない事を忘れて、雨宿りしてた時、助けられた」

「あれは、偶々、伊織ちゃんと冬馬くんの知り合いって知って居たので、困って居るなら助けられないかなと思ってした事で…」

そう言うと

「そう、つまりは、俺のお陰」

どや顔をする、冬馬くん(表情筋は動いていないが雰囲気的にドヤ顔をして居そう)

「冬馬にはお礼したけど、この…えっと…」

自己紹介しなかったか。

したけど、忘れられたかどっちでも良いけど。

「雛川です」

「何かお礼する」

「いえ、お気になさらず」

「気にする」

「じゃあ、私じゃなく、姫花さんの所に行ってください」

後で何されるか判らないし。

「却下」

即答。

「あ、じゃあ、お腹空いて来たので、一緒に何か食べませんか」

奢りは無しで。

「うん。あ、敬語なしで」

「え、あ、うん。頑張る…」


フードコートに戻ってくると、まだ居た。

姫花様ご一行。

目敏く私達(と言うか悠先輩、冬馬くん、蒼くん)を見つけると

可愛く駆け寄ってくる、姫花。

「何処行ってたの?ほら、冬馬の好きなクリーム増し増しカップケーキ頼んであったんだよ?」

カップケーキと言うよりクリームしか見えない。

「蒼が好きなビターブラウニーも」

シンプルなブラウニーにしか見えないけれど、それが売って居たお店のポップに

世界一苦いブラウニーって書いてあるから、相当苦そうだなと思う。

「悠には、クマさんの野菜クッキー」

クマの形をした色とりどりのクッキーが見える。


そして姫花は私の前に立つと

「あら、貴女まだ居たの」

そう言って見下ろす。

「お腹空いたので、来ただけです。私の事は気にしないで下さい」

「あら残念。ここには庶民が食べられる物なんて無くってよ」

値段的には寧ろ庶民向けな気がする。

ラーメンや丼ものも売って居る。

寧ろ貴族の口に合わないものが多いのでは?と思ったけれど口には出さない事にした。


食べたい物が売って居るお店で注文をする。

「ナポリタンお願いします。」

そして言われた金額を払い、注文品が出来ると音が鳴る機械を渡されるから受け取る。

なるべく、姫花たちの居る場所から離れた場所に座り、音が鳴るのを待つ。

5分と経たずに音が鳴り、受け取りに行く。

粉チーズはお好きにどうぞとあるから、取り敢えずかける。

常識の範囲内でかける(ナポリタンにかける、チーズの常識とは)

セルフサービスの水を紙コップに注ぎ、ナポリタンが乗って居るトレイに乗せ、

さっき座って居た席に戻り、使い捨てのおしぼりで手を拭いた後

手を合わせて

「いただきます」

と言って、フォークを手に取る。

そして、フォークのみで綺麗にパスタを巻き取り、食べる。

周りが無いを言って居ても気にしない。

美味しい物を食べている時に迄他の事は気にしたくない。

その位美味しい。

値段の割にとかでは無く、今まで生きて来た上で食べた事がある、どのナポリタンよりもおいしいと思う。

此れを食べる為だけに、また此処に期待と思う程に美味しい。

こういう施設に入っている店舗だから、何処かにチェーン店無いかな。

そう考える程に美味しい。

食べ終え、紙ナプキンで口元を拭き、紙コップと紙ナプキンと使い捨ておしぼりを燃えるごみのごみ箱に捨て、返却口にトレイと食器を戻し、お手洗いに向かう。

ナポリタンを食べた後の口元確認大事。


紙ナプキンで拭いきれて居なかった口の端をポケットティッシュで拭う。

「早く帰ればいいのに。貴女の居場所なんて無いのよ」

振り返る必要はない。目の前の鏡に姿が映って居る。

「そうですね」

取り敢えず、相槌を打っておく。

「この世界のヒロインは私なのよ」

鏡に映る紅い瞳に炎の様な揺らめきが見えた気がする。

思わず振り返ったけれど、其処に“姫花”の姿は無かった。

そもそも、本当に姫花だったのか、思い出せない。

思い出せるのは、紅い瞳と紅い髪色、其れと真っ赤な唇。

輪郭すらも思い出せない。

ついさっきの事なのに。

背筋が凍る程、冷たくなっている気がする。

姫花じゃなかったら、アレは…一体…。

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