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何となく、気付いては居た。

通話が終わり、伊織ちゃん達と合流しようと移動する。

フードコート、スイーツエリア

「あ」

伊織ちゃんの後ろ姿が見えたから、駆け寄って声を掛けようとした。

だけれど、伊織ちゃんと、腕を組んでいる人が居た。

いつもは、赤く長い髪を垂れ流しているけれど、今日は

ポニーテールにしていて、後ろからでも判る、露出度高めのワンピース(これも赤い)を身に纏っている。

全身が赤い。靴も、この場には相応しくない、真っ赤なハイヒール。

冬馬くんと、奏太先輩以外の攻略対象者(この言い方以外の言い方が欲しい)だった人達が、姫花の周りに集まって居る。


さっき、奏太先輩が知り合いは居たけれど、取材拒否されたみたいな事は聞こえていたから

このメンバーの誰かは居るだろうと思って居たけれど

まさか勢揃いしているとは思わなかった。

今、話しかけられない空気感が漂っている気がする。

いや、うん、伊織ちゃんに誘われたのは私で、伊織ちゃんと来たのも私だから行かない方が可怪しい気もするんだけれど…

道場破りの人の感情ってこんな感じなんだろうか(多分違う)

取り敢えず、思うのは、イケメンってめっちゃカジュアルな服着て居てもオーラ凄いんだな…

だから、やっぱり、姫花の服装の場違い感が半端ない。

一応はスポーツ系のアトラクションがメインの場所だから、あんな…背中丸見えワンピース可怪しい筈なのに。(まあ、それ言うとさっきのインタビューで、雑貨屋が見たいと言ったのも可怪しいか)

スポーツアトラクションがメインのテーマパークって知らなかったのかな?

そうだとしたら可怪しいとは言い難いかな…


いや、でもいつ迄も此処に居るのは此処に居ると怪しい人でしかないから

声は掛けよう。空気が悪くなったとしても、其れは其れだ。

さっきのよりは辛くない…筈多分。

深呼吸をして、今来たよ私感を醸し出して…

「伊織ちゃん、お待たせ!」

頑張って大きな声を出してみたよ。

内心ガクガクブルブルして居るけれど。

約束していたのは私だし。

「あ…」

振り返った、伊織ちゃんの表情は戸惑っている様子。

「大丈夫だよ」

「あら?貴女も来ていたの?」

私の服装を嘗め回すように見て、姫花は鼻で笑う。

「やぁだ、そんな格好で、伊織と冬馬と一緒に来たなんて恥じらいと言う言葉を知らないのかしら?」

え、その言葉、どう見ても場違い風な服装の貴女に言って良いですか?

言わないけれど。

「私には、貴女の様に豪華絢爛な服は似合わないので、此れで良いんです」

そろそろ、作り笑顔がきつくなってきた。

頬が引き攣っているのが分かる。

「伊織と、冬馬は私と一緒に行動するから、貴女は独りで楽しんでいただけるかしら」

「え?」

ねぇ、どういう事?伊織ちゃん?

戸惑いの表情を伊織ちゃんに向けると、困ったように顔を逸らされた。

「伊織ちゃん、どういう事?言い訳でも何でも聞くから…」

声を荒げないように気を付けながら問う。

「ごめん…断れなくて」

断れなくて?

「私を誘ったのは、伊織ちゃんだよね?」

「ごめん…」

欲しいのは謝罪じゃない。

何で、今の状況になって居るのかが全然解らないから、説明が欲しい。

「分かった。(解らないけど)」

此処に一番近い駅と、電車代金計算しないと。

「また、学校で」

私は、そう言って、伊織ちゃん達に背を向けた。

そうしないと、感情に任せて、叫びそうな気がしたから、此れが正しいのだと思う事にした。

此処は、私が主役の世界じゃない。

どんな理不尽な事があっても、我が儘を言ってはいけない。

「伊織が、こっちに来るなら、僕は、雛川さんと行動しても良いかな?」

爽やかな声が聞こえた。

「悠?」

姫花の戸惑いの声が聞こえる。

「大人数過ぎると、邪魔になるし、独りで行動するのって寂しいよね?」

気が付けば、笑顔の悠先輩が私の目の前に居た。

いや何で。

伊織ちゃんが、姫花と行動する事になった事よりも、悠先輩が私の目の前に居る事が驚きなんですけど?

「いえ、私の事はお気になさらずに」

敢えて、()()()()作り笑顔で、そう言ってみる。

「私の様な、庶民と行動するメリットもありませんし。」

遠回しに、壁を作ってみる。

何と言うか、この状態で関わりたくない。

姫花の視線が怖すぎる。

あの人、過去に暗殺者だったとか無いかな。

いや、流石にそうだとしたら、表情に出過ぎているか…。

「独りで大丈夫です」

…でもさっきからずっと気になって居る事だけ確かめて置こう。

「あの、冬馬くんは、何処に行ったんですか?」

「冬馬?お手洗いじゃないかな」

そうか、トイレか。(納得してみる)


「では、私は此れで!!!」

逃げる事にした。なるべく避けられるのなら、厄介事には関わりたくない。

逃げてばかりな気もするけれど、逃げられる時に逃げて置かないと

気が付いた時、八方塞がりなんて事になったら困る。

逃げられない局面は何時か何処かで来る。

だから、逃げられそうな時は何としてでも逃げる。

そう決めた。

(でも走ってはいけない)



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