さり気ない誘い方をしたかった。…伊織視点
父親から、友達と行きなさいと
父親が経営する会社の室内テーマパークのチケットを渡された。
何でも、新しいアトラクションが完成した記念で招待客しか入れない
プレオープンの日にちらしい。
誘うと言っても、昨年まで引き籠りだったせいで
こういう類の事は苦手だ。
今までさり気なく、璃々那ちゃんにメッセージのIDを訊いたり
ランチのお誘いをした事はあったけれど
休日遊びに行こうなんて誘ったことが無かった。
いや、何度か誘おうとして、何度も断念をしていた。
正直言うとボクは“遊びに行く時の普段着”が無い。
姫花に呼び出された時は基本、姫花が好きそうな服を着ていくから(ゴスロリ系)
多分こう言った施設にはそぐわない格好だと思うし
(激し目なアトラクション有り)
何より、こう言うお誘いって
つまりはデートだよね?
デート何てした事無いから、もし誘い方を間違えたら、
断られるだけじゃなくて…
永遠に避けられる人生になるのでは…?
其れは何としてでも避けたいけれど、誘わなかったら
其れは其れで、このチケットをくれた父親の厚意を無駄にするかもしれない。
独りで行ったとして、その様子を見られたら
悲しませてしまうかもしれない。
頑張れボク!そう思って璃々那ちゃんに話し掛けたは良い物の
「ね、次の日曜日暇?」
声が裏返った。
「予定は無いよ」
「じゃあ、一緒に今度新しく出来る室内テーマパーク行こう!」
声が裏返らないように慎重に言ったら感情を置いて来たみたいな話し方になった。
「うん」
誘えたあぁあぁあぁ!(歓喜)
「じゃあ、日曜日に璃々那ちゃんの家の近くのコンビニに午前9時に待ち合わせね?」
「うん」
璃々那ちゃんは、返事をしてから少し試案をする様な表情を浮かべた。
え、やっぱり、予定があ…
「えっと…お昼ご飯って…」
え、お昼過ぎても遊んでくれようとしてる?!
「テーマパーク内にフードコートあるんだって。動きやすい格好で、来てね」
歓喜の声を気付かれないようにしたら、また感情を置いてきたような話し方をしてしまった。
そうして僕は緊張したまま席に戻る。
璃々那ちゃんとデート楽しみだなぁ。
なんて考えて居たら、
「俺もテーマパーク行きたい」
冬馬が話しかけてきた。
「えー…そう言うの興味あるタイプだったの?」
休日こそ無限に寝て居そうな…
「無いけど、俺も璃々那ちゃんと遊ぶ」
え、デートが…と言いたかったけれど
実はもらったチケットは、5人まで誘える。
「分かった。璃々那ちゃんを迎えに行くのが9時だから…8時半に迎えに行く。1分でも遅れたら置いて行くから」
「ん」
頷く冬馬。
「あ。何でさっき、ロボットみたいな話し方して居たの?」
冬馬にそんな事を言われて
「何の事?」
「無意識か」
「何が」
「璃々那ちゃん、誘っていた時。」
「…こう言うの慣れて無いから緊張しただけ」
冬馬の観察眼怖すぎる。
いつも寝てるだけのくせに(悪口では無く事実)
それでも、取り敢えず誘えてよかったと思う。
…デートじゃなくなったけど。




