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宣戦布告?

イケメンたちの中心に居た姫花が此方に気が付く。

ふわりと微笑むと、伊織ちゃんの方に駆け寄る。

「久々に伊織の男装見たけど、やっぱり格好いいわ。伊織も一緒に…」

伊織ちゃんの手が私の手を握って居る事に気付くと

花が綻ぶかのように微笑んでいた表情は、まるで汚物を見る様な表情に変わった。

「そう、伊織が私のエスコートに来なかったのは、此の庶民のせいなのね?汚らわしい女。」

汚らわしいとは。

幾人もの男性を侍らせている人にだけは言われたくないけれど、

実際、庶民な事は違いないし…

何も言わないという選択をする。

「其のドレス、有名ブランドの最新作な筈なのに、どうして貴女みたいな庶民が着て居るのかしら?」

説明をする義理は無いけれど、説明しても良いんだろうか。

ドレスが無い私を気遣って、送って下さった物だと。

「璃々那ちゃんは、汚くなんて無いし、此のドレスも、璃々那ちゃんがドレスを持っていないって言って居たから、麗斗に…」

姫花は、麗斗の方を向くと、令嬢とは思えない素早さで、詰め寄る。

「どういう事ですの?」

「俺はただ相談を受けて、それならと勝手に贈っただけだ。姫花が考えている様な事は無い。其れに、全員参加にすべきだと提案したのは姫花だろう?正装での参加や、伊織に男の正装をさせるべきだと言ったのも。だから、正装であるドレスを持って居ないと言う生徒にドレスを贈るのは当たり前の事だと思ったんだが…?」

「ドレスを持っていない生徒は不参加にする事と決めておくべきでしたわね」

苛々しながら姫花が呟いた。

きっと姫花は、庶民である私が、全員参加だからと言う理由で、ドレス以外の服で来た時に、大いに嗤うつもりだったんだろうと容易に想像がついた。

でも、私はドレスを身に纏ってきた。

それも、姫花の婚約者の麗斗が贈ったと言う、一番許しがたい事で。

「まぁ良いわ。伊織。もう、エスコートは其処までにして、私達と楽しみましょう?」

うっとりする位妖艶な微笑みを伊織ちゃんに向ける姫花。

私がそっと手を放そうとすると、伊織ちゃんは逆に強く手を握って来た。

「ボクは」

伊織ちゃんの目は、姫花を蔑むかのような目をして、

「エスコートをしてきた人を蔑ろにする様なことはしないよ。それにもう、姫花の周りには多くの人が囲って居るでしょう?其れ以上、何を求めるの?」

姫花の目の前から立ち去るように、伊織ちゃんは私の手を引いて、

ホールの左側へと進む。

立食形式の食べ物が左側にある。

お腹でも空いて居るんだろうか。そう思った。


伊織ちゃんは手を離すと

「ごめんね?手、強く握って。痛くなかった?」

さっき、姫花に向けていた表情が夢だったかのように、優しい目を向けて、私に言った。

「大丈夫だよ。えっと…良かったの?」

そう訊くと

「なにが?」

キョトンとした表情を浮かべる伊織ちゃん。

「姫花さんだっけ…あの人の誘いを断って大丈夫だったのかなって」

「あぁ、うん。だってあんなに囲って居てまだ、侍らせたいとか…」

(そうか、伊織ちゃんは不特定多数の一人になりたくないんだ。姫花が一人だったなら、姫花と居る事を選んだのかもしれない)

そう納得した。

「其れに、エスコートしてきた人を蔑ろにしたくないのは事実だし、璃々那ちゃんと一緒に居た方が楽しいし。」

可愛くてカッコ良くて優しい、伊織ちゃんって天使か何かですか。

天使の羽とか光輪とか付いていたりしない?


「何か食べる?」

伊織ちゃんがそう訊いて来たけれど、

テーブルの上には、見た事も無いくらい高級そうな料理が並んでいた。

「遠慮しておくよ。」

こう言う物は、慣れない人が食べるとお腹を壊す可能性がある。

あー…今日の夕飯は、お肉屋さんのコロッケだった筈…

私の分残っていますように…。

最近弟が、成長期で、沢山食べる。

優しい子だから、多分残しては居るだろうけれど、パーティーに参加すると言うメッセージを送ったから、きっとおいしい物を沢山食べて来ると思って居るかもしれない。

そうしたら、コロッケは残って居ない…と思う。

帰りにコンビニでパンでも買って帰ろう…

そんな事を考えながら、料理を見つめて居る。


ふと、周りが賑やかになり、声の方を見ると

「おーほほほっ」

如何にもな高笑いが聞こえてきた。

ドレスと同じ赤い色の扇子で口元を隠すようにして、姫花が此方に向かってきていた。

周りの男子生徒たちは皆、傅くような体制で、姫花の両隣に並んでいた。

…小学生の時の卒業式の花道を思い出してしまった。

まぁ、あれは傅いたりはしないけれど。

「あら、姿が見えないと思ったら此方にいらしたの?庶民は居心地が悪いからもう、お帰りなられたと思いましたのに。」

…逆じゃない?

さっき、伊織ちゃんにコテンパンに言われていたのに懲りないなぁ。

「貴女?いい気にならないで戴けます?今は、貴女はちやほやされて居ますけれど」

(自分語りかな?私は別にちやほやされて無くない?)

そう思って思い出した。

確かこのセリフ、逆ハーレムルートに入った時の合図的なセリフだ。

(全く、そんな気配無いけれど。)

「良くって?皆、庶民の貴女が物珍しいから、特別扱いしているだけですのよ?その辺り、勘違いなさらないで!」

其れだけを言って、姫花は、踵を返す。

何しに来たんだろう。



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