なんでこうなった
教室に戻ると、伊織ちゃんが話しかけてきた。
「今朝、ボクの机の中に招待状が来てたよ…」
「送られては来なかったの?」
「送り主に招待状を処分したって伝えたのに」
頬を膨らませ、不貞腐れている、伊織ちゃん。
「処分したって言ったんだ…」
「だって、丁寧に服装の指定とかあったんだよ?ボクはドレスで参加するなとか!多様性の時代なのに可笑しいと思わない?」
「ドレスOKなら参加したの?」
「うーん?璃々那ちゃんが参加するなら」
「する予定は」
無いよと言おうと思ったら
「雛川璃々那!」
私のフルネームを呼ばれた。
声の方を見ると
…え
黒い髪端正な顔、神々しさを感じる雰囲気…
生徒会長、神堂麗斗が教室の入り口で立っていた。
そして、いつの間にか、伊織ちゃんが
麗斗の前に居た。
「何しに来たの」
「伊織、お前の席に招待状入れて置いたが、見たか?」
「処分しようと思ってた所」
「大丈夫だ。予備はまだある。」
予備がある招待状…。用意周到過ぎて何も言えない。
「…それで?璃々那ちゃんに何か用事?ボクが話を聞くけど」
「此れを直接渡しに来た」
箱を見せているのが見える。
折角返しに行ったのに…
「何それ」
「昨日、伊織が言ったんだろう。ドレスが無いから参加出来ない子が居るから、自分も参加しないのだと」
「言ったけど…」
「だから、こうして、ドレスを届けに来た」
「名前とか言ってないんだけど」
「伊織が仲が良い生徒など、判るだろう。姫花は大量にドレスを持っているから、ドレスが無いという表現は正しくないしな。」
「えぇと…」
伊織ちゃんの後ろから、顔を覗かせてみる。
(別の言い方をすると、伊織ちゃんを盾にしている)
「それ、何ですか」
「ドレスだ!不審物などではない!今此処で中身を確認するか?」
「…それ、私が受け取るには不相応かと…」
「何故だ?」
「初対面ですし」
「気にするな。俺は伊織に頼まれたからこうして準備した迄だ」
「頼んでないんだけど」
不機嫌な伊織ちゃん。
「うん?だが、ドレスを持っていない人が、ドレスを入手し、パーティーに参加する事になったら、伊織も参加するんだろう?」
「ボクもドレスで良いならね?」
「うーん…」
「無理なら参加しない」
「…じゃあ、誰が、彼女をエスコートするんだ?」
「エスコート?一人だと参加出来ないんですか?」
私がそう訊くと
「そういう訳では無いんだが…」
「其れに、私は参加しな…」
「分かった!今回だけだからね?任せて!璃々那ちゃん!ボクがちゃんとエスコートするね」
にっこりと可愛い笑顔を浮かべられてしまったから
何も言えなくなってしまった。
なんでこうなった。
「このドレスは貴女の物だ、雛川璃々那」
そう言って、ドレスを押し付け、さっそうと去って行った麗斗に返せなくなってしまった。
強制参加のパーティー嫌な予感しかしない。
そもそも、このドレスのサイズ…合うんだろうか。
……いや、其れよりも!この箱何処に置こう。
凄く、物凄く邪魔だ。
一人一人に割り当てられているロッカーは、登下校時で使用するバッグが入っている為
其れ以上の物は入らない。
海外ドラマとかで見る様なロッカーが欲しい。
切実にそう思った。
取り敢えず、私の横は、窓なので、机と窓側の隙間に置いておくことにする。
…ふと思う。
ドレス返しに行かずに、気付かなかったと言う事にしておけば
強制参加を免れ…ないか。
やっぱり。
ドレスが入ってるであろう箱を横目に溜息が出る。




