別視点…Hその3
丁寧に包装された大きな箱を受け取った後
生徒会長の席にそれを置く。
(本当に何を考えて居るんだ。面識ない筈の相手に突然こんな物を)
此れを、持ってきたと言う事は、既に此れの送り主は登校しているという事で…
だけれど、此処には居ない。
(全くあの自由人は…)
校内放送で呼んでも構わないのだけれど、そんな事で此処に来るのなら苦労はしない。
一応、メッセージアプリで【生徒会室に来い】とだけ送ってみては居るが
きっと来ないだろう。
と言うか、メッセージ自体読んでいない可能性もある。
(探しに行くか)
そう思い、生徒会室から出ようとした時だった。
「何かあったのか!」
勢いよく、生徒会の扉が開き、麗斗が入って来た。
「あ、あぁ」
(ビックリして、目が飛び出るかと思った。)
「どうした、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして」
「いや、麗斗が迎えに行かなくて自ら来るなんて…嵐でも来るのかと」
「たまたま、スマホを持っていたらメッセージが届いたから来たんだが」
「あぁ。…えぇと、とある女子生徒が、不審物を届けに来たんだけど」
「不審物…?そう言うのは、校内警備に届けるべきだろう?」
「そうしたかったんだけど、届け主が良く知る人物だから、本人に直接渡した方が良いかと」
「本人?」
「俺の知る人物か?」
お前だよ。
「僕の目の前に居る人物だよ」
麗斗は振り返り、後ろを見る。
「……?」
「僕の目の前に居るのは、君だろう?麗斗。」
「うん?」
首を傾げられても
「誰かの席の上に贈り物をした記憶は?」
ハッとした表情をする麗斗。
「不審物だと思われたのか?」
「そうだから此処にあるんだろうね?誰からか判らない物を置かれて居たら僕でも、どうにかして返そうとするよ。」
「…そうか…じゃあ直接渡しに行くとしよう」
包装された大きな箱を持って、生徒会室を出ていこうとする麗斗を止めようと声をかける。
「面識もない人に渡されても困るだけだと思うよ?と言うか、何で急にそんな物」
「…何故だろうな」
其れだけを言って、背を向けて去って行った。
何があったんだろうか。
姫花が言う通り、あの子には、怪しい能力があるのだろうか。
現に、姫花を溺愛していた冬馬と伊織、奏太までもが
あの子に執着し始めている。
謎の力が働いていることは間違いないだろうが
其れが悪い能力なのか、僕には判断しかねる。
そのうち僕も、見極めるために、会話をしてみるべきなのだろうか…
(木乃伊取りが木乃伊になる可能性もある)
でも、姫花に気付かれないように、あの子と話す事はとても難易度が高そうだ…。
頭痛の種が増えた気がする。




