現実と空想世界(ゲーム)の違い
前、私が生きていた世界では、
この世界はゲームの中の世界だった。
可愛くて、性格も成績もいい
けれどちょっと運動神経が悪い、何処にでも居る
庶民の女の子が主人公の乙女ゲーム。(女性向け恋愛ゲーム)
この世界は、貴族制度の残る日本。
それ以外はいわゆる“現代日本”と相違ない世界。
まぁ、貴族制度がある時点で、かなり違う気もするけれど
庶民には、あまり関係ない話。
貴族しか入れない店や施設なんかがあっても
貴族街と言われる場所にあるから、やっぱり庶民には関係がない。
貴族の気まぐれで、庶民の人たちもパーティーに招かれたり
という事もあったみたいだけれど、それはあくまでも
貴族ではない金持ちに対してだったりする。
主人公はそれには含まれない
一般家庭の子だから、貴族には縁もゆかりも無いはずだった。
何処の高校に進もうか悩んでいた時、受けるだけでも受けてみないかと
担任教師に提案され、受験費用が免除だったから、
貴族が多く通う“カナリア学園”を受験してみた。
飽くまでも、自分の実力がどこまで通用するのかと言う事を確かめるための物だったのかもしれない。
それがまさか、この年受験した全ての受験生の中で
全科目1位と言う偉業を成し遂げるとは本人も
受験を勧めた担任教師も思ってもいなかった。
まぁ、受かったのだから、通ってみたら、
貴族のイケメンたちに入学式の日に一目惚れされて
本来なら味わう事のないキラキラした人生を歩み始める。
そんな物語である。
乙女ゲームにありがちな、陰謀や妨害なんかも殆ど無く
ただイケメンたちに、ちやほやされるだけと言う
超チートヒロインの物語である。
その世界に、主人公と同じ名前見た目で生まれてきて
同じようにこの学校に通う事になったのに
今の状況は全く違う。
誰一人として私を見ない。
彼らが見ているのは、話しかけているのは
ゲームの世界でヒロインに貴族としての厳しさや誇りを
わざわざ、嫌みの様に伝えてきた
“悪役令嬢”“この学園の生徒会長神堂 麗斗の婚約者”
仙崎 姫花だった。
ゲームの中で姫花は、麗斗と、麗斗の親友都筑 悠としか接点が無い筈だったのに、今の彼女は、そうではない。
恐らく、貴族の集まりなんかで接点が出来たのだろうと思う事にした。
その影響で、この世界の主人公は、私から、姫花へと変更されたのだろう。
正直、美人とは言い難い、私よりも、
ゲーム外で行われていた、ゲーム交流サイトで実施されていた
“サブキャラ人気投票”で怒涛の1位を獲得していた
戦隊もので言う主人公的な色の髪色(戦隊モノの主人公は赤髪ではないが)
容姿端麗な姫花に。
分からなくも無い。
高校一年生とは思えない程、羨ましいスタイル。
私はと言うと…。
まぁ、乙女ゲームのヒロインなんて殆ど似た様な物よね。多分。
嘆いて居ても仕方がない。
好きな人たちと、憧れだった場所でモブキャラとしてでも生きられるんだから、
遠くから見つめて居よう(ストーカー駄目絶対)
それに、前世で好きだった人達がいる世界に転生出来るなんて
宝くじの高額当選者になるよりも、レアな事だろうし
たとえ彼らと会話する事が出来なくても
幸せな事だと思う。