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ただ髪を切っただけ

お嬢様達が行くような高級美容室ではなく、

と言うか、美容室と言うより

昔ながらの“床屋さん”が行きつけだった。

祖父母が行きつけでそのまま、家族全員の行きつけになって居る。

床屋のおばちゃんが、鋏を持ったまま

床屋の椅子に腰かけている私に何度も

「本当に良いの?」

と聞いてくる。

「良いよ。バッサリと切って下さい」

「切ったら戻せないよ?」

「分かってます」

「毛先を揃えるだけじゃなく?」

「肩の少し下辺りの…ボブヘアーで、お願いします」

私の前世で流行っていた“悪役令嬢に転生した系列の話”での

メインヒロインだったはずの子は殆どが

“ボブヘアー”だった事をふと思い出し、そう口にした。

恐らくこの世界は本来なら悪役令嬢だった筈の女の子が

色々試行錯誤して“悪役”じゃなくなった世界なのだろうと思う。

それならそれで、構わない。


取り敢えず私の今の目標は!

このまま、学年1位の成績を維持して、そこそこ良い就職先に就職して

可愛い弟に苦労をさせない事だ!とさっき決めた。

(だって数時間前の私は、イケメン御曹司にちやほやされると本気で信じていたから)

我に返ると、これが本当の意味で“穴があったら入りたい”と言う心境なのだろうなとか思う。


数十分後、床屋のおばちゃんが

「終わったよ」

そう声をかけてくる。

こんなに髪が短いのって幼稚園くらいぶりな気がする。(幼少期の写真で見る位)

床に落ちている髪を見ると

こんなにあったんだ…とか思う。

ホラー作品で使えそうと思うくらい、この髪の量は気持ち悪い。

でも、その分身軽になったのだから、何か逃げないといけない時には少しは速く走れそうだとも思う。

幾ら、この世界でのヒロインじゃなくなったとは言え

“主人公補正”と言う面倒臭いものが付与されて居そうだという事は把握している。

そう言った場合、悪役令嬢だった筈の姫花に

本人は意図していなくても、私に危害を加えてくる事があるかもしれない。

取り敢えず、もしかしたら、さっきまでの髪より似合っているかもしれない。

椅子から降りて、支払いを済ませて、床屋から出た瞬間

今までの景色と違って見えたのは、体が軽くなったからだろうか?

それとも、長かった髪と共に、

“私はこの世界でのヒロインだから、皆に愛されて生きていく”と言う

かなり痛い思考も置いてきた気がする。


…髪切ったから、序に主人公補正も消えないかな。

なんて思いも込めつつ、家に帰った。







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