私、変わります
校門前で伊織ちゃんと別れ、私は一人、徒歩で家に帰ってきた。
ふと思う。
実は空想世界と違って居た事がもう幾つかある。
あの世界とこの世界での違いは、かなりあったけれど
それ以上に違う事があって
今日までは特に気にならなかったんだけれど
無意識で私がしていた事が、この世界をほんの少しだけ(世界的には、ほんの少しと言う感覚だろう)
空想世界の中の主人公は、“一人っ子”と言う設定だった。
学園生活を謳歌させるために、そういう設定にしたのだろうが、なんと今!私には天使のように可愛い弟がいる。
生まれて初めて…否、正真正銘初めて“目の中に入れても痛くない”と言うものを実感している。
(当然だが物理的にでは無い)
まぁ、その要因を作ったのは、まだ前世の記憶が戻って居なかった私の仕業なのだが。
クリスマスにサンタクロースにお願い事をした。
『弟か、妹が欲しいです。』と
…うん。
何と言うか、両親は頑張ったよね。
その手紙を見つけた、その日に。(深くは追及しないが)
サンタクロースからは別の贈り物も貰ったから、とても悪い気もしている。
だけどそのお陰で、私には5歳年下の“シスコン”で“可愛い”弟がいる。
ついでに言うと
私が勉強を教えているから、成績は優秀だ。
運動神経はそれなりだけれど。
家に帰ると、弟が出迎えてくれる。
私と同じピンク色の髪、母親に似てサファイア色の瞳(私は父親と同じエメラルド色)
髪の色は、どちらも母親から受け継いでいる。
父親はライトブルー。
「姉さん、お帰りなさい」
「ただいま。」
最近声変りが始まったらしく、以前と比べると少しだけ低くなって居る声は寂しさもあるけれど、此れは此れでいい声だと思う。
将来声の仕事についたら、世の中の女性たちは皆ときめくのでは無いかと、弟バカは思う。
「大丈夫だった?虐められたりとかは無かった?」
「何もないよ(直接的には)」
靴を脱いで自室に向かうまで弟は着いてくる。
可愛い本当に天使。
制服を脱いでい普段着に着替える。
パーカにスウェットが楽だ。
空想世界内での主人公は絶対にしなかった格好。
基本、可愛らしいワンピースだったな。
フリフリでリボンが付いているような。
ロリータファッションと迄はいかないけれど
前世でゲーム交流サイトでは、小学生かよと服装に迄難癖をつけられていた。
その影響では全く無いけれど、私はカジュアルな物を好む。
安いし、動きやすいし、このまま眠れるし、コンビニにも行ける。
あの学園に通う人たちには縁遠い服装。
…色々違うんだから、髪型も変えてみようかな。
風に舞うサラリとしたロングヘアが特徴だったけれど、
私はこの世界の主人公じゃないのなら、がらりとイメージチェンジをしても構わないだろう。
そうと決まれば、パーカを脱ぎ捨て、Tシャツに着替える。
部屋の前で待っていた弟に
「美容室に行ってくるね」
そう告げ、財布の入ったトートバッグ片手に家から出た。




