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別視点…Hその2

「生徒会長が来ません!」

僕が、生徒会室に行くと、半泣き状態の生徒会役員(男)が泣きついてきた。

「麗斗が時間通りに来ないのはいつもの事だよ。」

そう、いつもの事。

これから始める生徒会会議がどれだけ重要な物だったとしても基本

(生徒会副会長)に丸投げして、会議の結果だけを訊くと言うのも、いつもの事。

そんな事を解って居るはずの、生徒会役員が泣きついてくるという事は、想定外の何かが起きたのだと察する。

「何があったのか、話してくれないかな?」

安心させるように微笑むと、彼は

「あの、えっと…」

言い淀みながら、生徒会室の中にある長テーブルに視線を向けた。

「あら、悠の方が先に来たのね。」

この場所に似合わない人が、優雅に紅茶を飲んでいた。

「姫花、どうして君が此処に?」

「麗斗が、今日は生徒会の会議があるから一緒に帰れないと言うから、終わるまで待って居ようと思いまして」

「其れは、君も生徒会の会議に参加するという事?」

「あら?いけませんの?」

普通に考えれば部外者が、生徒会会議に参加する事は、良しとされないだろう。

「当然です。」

この学校自体に通う生徒は貴族だけれど、貴族にも階級がある。

生徒会役員に選出された者達は、姫花の家より身分が高くない者が多いから、断れなかったと推測する。

(日本の貴族(華族)制度は公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の5種類で、姫花は伯爵令嬢。)

同じ伯爵の地位であっても、姫花は今、公爵家の跡取りである、麗斗の婚約者という事も含めるとますます断り辛かったから仕方なく、此処にこうして姫花は、入り込んだのだろうなと容易に想像できる。

「麗斗に連絡は?」

役員に訊くと

「何度もしているんですが、既読すらつかなくて」

「ちょっと探してくるよ。アレが居る場所は分かりやすいから」

そう言って生徒会室を後にする。


本当に分かりやすい(物理的に)

基本何処に居ても、人だかりが出来て居る。

本人が気にしていない所が一番厄介でもある。

特別教室棟でその人だかりを見つけた。

「失礼するよ」

人だかりの一番後ろに居る生徒に声をかけると

「都筑さま!」

大声で苗字を呼ばれてしまったけれど、まあ今は好都合だ。

その場に居た全員が振り返る。

「此処に麗斗居るよね」

そう言うと人だかりが左右に分かれる。

美術室の入り口から見えた麗斗は、一心不乱に何かを描いているようだった。

黒髪をサラサラと乱しながら、大胆な動きで、豪快に。

僕はよく分からないけれど、他の人からすると、こういう動きでさえも、妖艶に感じ人々を魅了するのだと言う。

僕には理解しがたいけれど。


このまま放って置く訳にもいかないから(生徒会役員の為にも)

躊躇なく美術室の扉を開け、麗斗に声をかける。

描くことに集中していて聞こえていないようだが、此方としても長年の付き合いがあるから、ある程度、麗斗の弱点は熟知している。

「外に可愛い子猫が居たんだけれど」

そう言うと、麗斗は筆を止め此方を見た。

「こ、子猫…?悠!お前もあの可憐な子猫を見たのか!?」

麗斗は無類のネコ科オタクだ。

「…?なぜ悠が此処に居るんだ?」

「麗斗を探しに来たに決まっているだろう?」

「俺を?」

不思議そうに見てくる、麗斗。

「今日は生徒会会議があるからね」

「そんな物いつもと同じように結果だけ教えてくれれば」

「其れがそうもいかないんだよ。生徒会室に姫花が居て」

「なんだと」

麗斗は筆を置き、立ち上がり、美術室から駆け出した(廊下は走らないでください)

「お騒がせしました。あぁ、その画材そのままにしておいて構わないから。会議が終わったら、片づけさせに此処に戻すから。」

そう言って、麗斗の後を追った(悠は走らない)

少し振り返り、麗斗が描いていた絵を見たけれど、何なのか全く解らない。

相変わらず人間離れした画力(褒めてはいない)だと思った。

ある意味才能なのだろうけれど、理解しがたいと思う。


まぁ今はそんな事より、この後に待っている事を思うと頭痛がしてくる。



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