いわゆる転生ってやつ
今日から高校生です。
貴族ばかりが通う学校に、唯一の庶民として
私は入学する。
入学試験で、全科目1位だった者だけが“入学金、授業料、その他諸々の経費無料”と言う特別制度があり、私はその制度を使って、庶民でありながら、この学校に入学した。
別に貴族じゃなくても、誰でも入学出来るのだけれど、貴族の人たちの家柄を気にする態度や、空気感に気圧されて、入学してもすぐに転校したりする人が相次いだ所為で、ここ数年は、一般人が受験をする事さえも無くなっていた。
特待生制度があったとしても、全教科で1位の成績を取るなんて言う高難易度の偉業を成し遂げられる人なんて居なかった。
それなのに、一般入学者のお金持ちでは無い庶民が
その偉業を成し遂げた。
それが私。
生まれた時から、何故かこの学校に、特待生制度を使って入学しないといけないような気がして
勉強を頑張った。
凄く頑張った。
そして今ようやく、その理由が分かった。
此の校舎、この制服、この景色
全部知っている。
昔…前世好きだった乙女ゲーム
『ラブトラップ~愛され過ぎて困ってます~』
の世界だ…
桜が舞う校門前からゲームが始まる。
超チートヒロインが校門を潜ると
その場に居た全ての人が振り返り
その先を歩いていた
メインキャラ達に一目惚れされ
華やかなスクールライフが始まるという…。
このゲームが始まる時のメインキャラ勢ぞろいのスチルが本当に綺麗で
大好きだった。
この校門を潜れば…私のもてライフが始まるんだ…
そう意を決して校門を潜ったのに。
何も起こらない。
と言うか先を歩いているはずのメインキャラたちが居ない。
もしかして、時間を間違えた?
…まぁいいか。
きっとこの先何処かで何かあるはず。
そう思った時だった。
フッと空気が変わる。
周りに人が皆後ろを振り向いている。
私も釣られる様に後ろを振り返ると
メインキャラ…この学校に通う人達の中で
最も位が高い貴族達が勢揃いで登校してくるのが見えた。
メインキャラなだけあって、顔が良いのは当たり前だとして
何と言うか全てが貴い。
その中の一人と目が合った気がした。
すると、その人は、キラキラした笑顔を浮かべて
私の方へ駆け寄ってきた。
が、私の横は華麗にすり抜け
「姫花!」
そう言って、私の遥か前を歩いていた
赤髪ストレートロングヘアの少女に抱き着いていた。
…姫花?
立ち尽くす私の横を他のメインキャラ達も通り過ぎていく。
ええと、もしかしてこの世界のヒロインは、私じゃなくて
派手な見た目、メリハリボディの姫花に変わったって事ですか…?