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第6話 スクリーン


 あたしは映画を見終わったあと、その余韻に包まれながら、無人の映画館で白いスクリーンを眺めるのが好き。


 きっとあの人も、その数秒が好きなのに違いない。


 頭のなかをかけまわる陽気なウサギと非情な銃声とを感じながら、数列前の座席から立ちあがったあの人をみた。背が高く、わずかに横顔がみえる。同年代の男の子で、もしかしたら少し年上なのかもしれなかった。

 大学生にはみえないけど、おなじ高校生にしては大人びてみえた。落ち着いて静かな雰囲気と整った顔立ちがそう感じさせた。


 結局、同じ高校生で学年も同じと後でわかったのだけれど。


 あの人、杉村くんは、後列で立ちあがったあたしに気づかなかったのか、なにも映っていない白いスクリーンをじっと眺めて動かなかった。さしてながい時間じゃなかったけど、なんとなく邪魔をしたくないと思って、あたしも動かずにいた。逆の立場なら、きっとそうしてほしいだろうから。


 息をひそめるような数秒が過ぎ、振り返った杉村くんと目があった。


 そのときは、たがいに名前もしらない仲で、ときどき映画館でみかけるな、というくらいの、仲ともいえない仲だった。けれど、自分ひとりだと思っていたところに、思いがけずあたしの姿をみたからか、ああ、きみも? というような、はにかんだ笑みをうかべて、ほんのりと頭をさげていた。


 ことばを交わしたわけじゃなく、なにを伝えあったわけでもない。それなのに、その笑みは、あたしの胸を握りつぶした。やわらかいウサギのように。非情な銃声のように。


 ああ、この人は、きっと映画と白いスクリーンが好きに違いない。あたしのように。


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