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第24話 本当は……


 わが町最後の映画館がなくなっても、あたしの日常は続いていく。大きなスクリーンは小さな画面に代わり、チケットの代わりに、DVDやスマフォを手に持つことが増えた。そして、


「いやぁ、とうさん頑張っちゃうよ」


と、父さんがわざとらしく腕まくりをしてみせる。きょうは、杉村くんが初めて家へ遊びにくる。ただ、友だちがくるとしか伝えていないので、男の子だと知ったら、父さんは相当ビックリするに違いない。


 さて、夏野菜の季節も過ぎ去ったとはいえ、父さんが勝負飯に何を選ぶか、だいたい予想はできた。いまや旬など関係なく、冬でも夏野菜が入手できるのだから。


「きょうは暑いし、やっぱり夏野菜でしょ」


 と、嬉しそうな父さんに、ちょっぴり申し訳ないと思いながらも、あたしは大事なことを切り出した。父さん、ごめん。本当は夏野菜のカレー、あんまり好きじゃないの。


「えぇ! あんなに美味しそうに食べてたのに?」


 ああ、あれ、演技だから。どっちかというと牛肉より鶏肉の方が好き。野菜は煮るより生で食べたい派なの。言うたびに、父さんが、えぇ? と驚いてくれる。


「はやく言ってよ。好きだと思ってた」


 困惑したような父さんに申し訳ないと思いながら、さらに続ける。きょうはパスタとサラダにしてくれると嬉しいな。最近は、冷凍でも美味しいんだよ。


「えぇ、それでいいの? でも、悪かったなぁ。ほんと、夏野菜が好きだと思ってたわ」


 怒りもせず、逆にあやまってくる父さんは、本当に優しい。そんな人に男の子がくるって言わずにサプライズを仕掛けるなんて、こっちこそごめんね。いたずらっぽい気持ちが表にでていたのか、父さんは、


「ねぇ、まだなんかある?」


と聞いてきた。ううん、ないよと応じて、もうひとつの秘密をのどにしまいこんだ。


 本当は、父さんの足、とってもくさいけど、それは頑張って仕事をしてる証だから言わないでおいてあげる。これからも、がんばってね。あたしも、がんばるよ。



 ……あたしは、映画館のきみが好き、そして、真夏のカレーが嫌いです。

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