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第21話 アリとポップコーン
夕方になり、夜になり、日差しが和らぐにつれて、今度は寒くなってきていた。まだ、彼はこない。ここまでくると、もう来なくても構わないような気がする。
あたしは、自己満足だけでここにいる。
それを自分でもわかっているからか、しびれてきた両脚をまげて、ほとんど座りこむようにしていた。お客さんのだれかが映画館のスタッフにあたしのことを告げたのだろう。女のスタッフさんが、どうかしたの、ぐあいでも悪いの、と声をかけてくれた。
あたしは首を振って、人を待っていること、さいごのレイトショーの時間に来なければ帰ることをつたえた。なにかあったら言ってね、と気がかりそうにしながら館内へもどるスタッフさんを見送って、また定位置へもどり、縁石に腰かけて、黄色い街灯に照らされる歩道のひびわれをみつめる。小さな雑草がわずかに葉を伸ばし、その奥から数匹のアリがポップコーンのくずを拾いに出てきていた。
すくなくともアリさんにとって、きょう、あたしがここへ来たことはムダじゃなかった。そんなことを思うあたしの頭上から、すっと人影がさした。




