第20話 ひさしの下
あたしは、ほとんど初めて、友だちに相談というものをした。自分も映画が好きなこと、映画館で杉村くんと出会ったこと、転校初日の騒動のことも話し、彼と仲直りしたいことをシズに話した。
その答えは自分でもわかっていたことで、あやまればいいと。映画館の最終日に、あさから待っていれば必ずくるはずと。
あたしは、わが町最後の映画館の最期を看取りにでかけた。あさいちから左側のひさしに立ち、彼を待った。さすがに最後の日だけあって、朝からたくさんの人が訪れてくる。映画好きのというよりも、映画館を惜しむ人たちなのか、家族連れも多かった。
すでに夏は過ぎ、蝉の声も入道雲もいない。熱く陽炎を立ち昇らせるアスファルトもどこかへ消えた。残っているのは、この季節にしては、という程度に暑い日差しと、開いたり閉じたりする自動ドアの音だけ。
昼が過ぎた。
まだ彼は来ない。水筒だけはもってきたけれど、あさいちに会えるんじゃないかという期待は裏切られた。もしかしたら、もう来ないのかもしれない。用事があるのかもしれないし、映画より野球の方が大事なのかも。
でも、離れているあいだにすれちがいになることが怖くて、あたしはそのまま待ち続けた。映画をみて出ていく人たちが、ちらりとあたしをみる。来たときにもいた子だな。きっとそう思っているのだろう。
トイレだけは我慢できなくて、上映スケジュールをみながら、もし来たらホールで確認できることを計算して短時間だけ入口から離れた。おなかも空いていたので、ビッグサイズのポップコーンを買って定位置へ戻る。
映画館の入口でポップコーンをむさぼるあたしは、まるでバカみたいだった。




