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第19話 悪くいわないで


 と、つぶやいていた。あたしのなかで留め具のような何かが外れた。クラスメートが大勢いる教室で、だんだんと大きくなるつぶやきが口中を飛びだした。


 よく知りもしないくせに、映画も杉村くんのことも悪くいわないで!


 ざわついていた教室が静かになる。あたしは、と小声で続けた言葉は、自分でも予想だにしない言葉だった。


 あたしは、シズのそういう無神経なところが、嫌い。


 そうはっきり告げたあと、ハッとして見あげた目に、にやついた顔がみえた。怒りもせず、泣きもせず、不満もみせず、シズがいう。


「うちだって、あんたなんか嫌い」


 にしし、と笑いながら落ちてきた言葉をひろいあげて、そんな風に人の気持ちを簡単にあつかうところも嫌い、と応じた。


「うちは、そんな風に、なんでも重く、悩んでるのは自分だけです、みたいな被害者面して生きてるやつが嫌い」


 あたしは、なんでも楽しくやっていければいいと周りを振り回して傷つけて、それでも平気な人が嫌い。


「うちは自分だけが孤高で、ひとりでも生きていけます。タフですよ、人の目なんて気にしません。他人に左右されない自分をもってます、なんて感じの、おどおどしながら、じつは芯のとおった女が嫌い」


 そう言って、シズはあたしのほおを軽く平手打ちにした。そして、さあ叩けといわんばかりに、自分の顔を突きだした。


 そうして交互に平手打ちを続けるうちにクラスメートの仲裁が入って、シズとのケンカは終わった。


 その日、はじめてシズと一緒に下校した。よくわからないけど、やっと友だちになれた気がして、シズのことをよく知らなかったのはあたしだったと、そう思った。


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