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第16話 あたらしいメニュー
週末には、もうしあわせたように映画館の入口で出会い、映画をみて、モールへ寄って、感想を話しながらケーキを食べたり、カフェラテやフラペチーノを楽しんだ。
ひとりで黙々と食べたり飲んだりしていた同じメニューが、まるで別物のように美味しかった。なぜ人は話したがるのか、その答えをすこし知ったように思えた。
子どものころはともかく、男の子とこんな風に話すことってなくなってたし、これってデートなのかもと思いながら、でも、連絡先を交換することもなく、ただ、いずれなくなってしまう映画館とショッピングモールがあたしたちをつないでいた。
それがなくなれば、これもなくなってしまうのだろうか。
不安のなかで、でも、踏みこむことが怖くて、手のひらの砂をつかめないように、落としてしまうことが怖くて、杉村くんから連絡先を聞かれても、なんとなくごまかしてしまう。
そうして閉館までのカウントダウンが近づくにつれて、名付けがたい焦りに似た感情がふくらんできたころ、彼とケンカをした。




