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第12話 ごめん、待ってよ
との声が、つかんだ片手とともに、あたしをひきとめる。その手を振り払うと同時、困ったような顔の杉村くんを認めながら、意地の悪い言葉をつむぎだす。
なんですか? と、みしらぬ人に対するように冷たくいう。もちろん、彼が間違いなく杉村くんだということをわかった上で。一瞬、ひるんだようにしながらも、
「わるかったよ」
と、彼が頭をさげた。そこで寛大な心をもつあたしは、すべてを水に流したのだった。……とはならない。なんとなれば、あたしだから。怒りと悲しみは同じものだと聞いたことがある。あたしは、ういてくる涙を感じながら、一方的に言葉をなげつけた。
ない勇気を振り絞ったのに、笑いものにしてくれてありがとう。
そういって踵を返すと、映画館へ逃げこんだ。ひっそりと暗く、あたしを守ってくれる子宮のような館内へ。
うしろから追ってくる様子はなく、あたしは、すぐに入れる映画をえらんでそれを見たけれど、めずらしく集中できず、あまり楽しむことができなかった。そしてそれを彼のせいにして、また一人で腹を立てるのだった。




