第11話 二重写しの
週末になって、ひさびさに映画館へいった。
併設するショッピングセンター、いや、本当は映画館の方が併設なんだろうけど。とにかくそのショッピングセンターでは、一部店舗をのぞいて撤退が始まっていた。
想像の二重写しに、廃墟と化した建物がみえている。ふりかえれば映画館も同じ。はがされたポスターの白いあと、上映予定のとぎれた掲示板、ひっそりと暗い窓のむこうへ。そして破れた庇の下に立つ背の高い少年……。
そこまで思って、あたしは身を固くした。
いりぐち近くに立っているのは、たしかに杉村くんだった。もちろん、また映画館で出くわすかもしれないと思ってはいた。けれど、例の出来事のあと、彼から話しかけられることもなく、もしかしたら、彼には双子の兄弟がいて、その人だったのではないかと妄想するまでになっていたし、なにより、本当に彼が杉村くんなのだとしたら、あたしと会う時間帯はさけるだろう。いや、さけるべきじゃないか、そう思っていた。
それなのに、夏空をながめて目を細めている彼は、たしかに彼だった。
彼が、道路向いにいるあたしに気づいた。
帰ろうか。あたまに浮かんだ思いを、プライドか不満か怒りか、なにかはわからないけれど不快な思いが掻きけし、あたしは、傲然と映画館の入口へむかった。
彼に声をかけることも、目をやることも、頭をさげることもなく通り過ぎる。
おもったよりもゆっくりと自動ドアがひらき、冷たい人工的な空気が夏とぶつかりあう。そのただなかで、ぐっと片手をつかまれた。




