第10話 おーすっ
と、明るく声をかけてきたのは、あたしの数少ない友達、シズだった。彼女は誰とでも仲良くすごせる屈託のない子で、簡単にいえば、あたしとは真逆の陽キャ。ほかに友だちも多いのに、なぜかよく絡んでくる
それがステータスなのかも。だれとでも付き合えるアピール、あるいは明暗比較の対象として。なんてことを思うあたり、間違いなく性根が腐ってる。だから、あたしはダメなんだ。と、沈みかけていた心に、
「おーい、どうしたどうした聞いてるかい」
と、シズの軽快な声が響いた。にんまりと笑いながら続ける。
「きいたよ、昨日の武勇伝。転校生に声をかけたらしいじゃない」
悪気もなく昨日のことを持ちだしてきた。こういうところが、シズのいいところであり、いやなところでもある。
「やぁ、サボって損したなぁ。一世一代の告白、見逃しちったぜ」
いったいどんな噂になってるのだろう。首を振って否定すると、
「え、ちがうの? 振られたんでしょ?」
などとデリカシーのない問いかけをする。本当に告白をして振られていたとしても、きっと同じように聞いてくるのだろう。
だからシズのことが嫌い、かもしれない。
説明するのも面倒だったので、ただの人違いだったことにして、そもそも告白なんてしていないとその場限りで終わらせようとした。そんなあたしの本音を知ってか知らずか、シズは、杉村くんの方を見て、
「あれが転校生かぁ。スポーツ好きのイケメンで、ちょっといい感じじゃない」
と視線をもどした。あたしは、昨日のことを思い出しながら、そうね、と気のない返事をかえしたものだった。




