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ただの泡ですが、今だけ人間です3

「お取込み中のところ悪いんだけど……」

「お取込み中だ。静かにしろ」

「そうです。今、全力で筋肉確認中なので、お取込み中です」

「えっ。お前、このタイミングで筋肉確認しているのか?!」

 ギュッと抱きしめていた、ただの泡を放し俺は凝視した。

「はい。大変いい胸筋でした。というか、筋肉を確認しないなら、何故引っ付く必要が?」

 ……種族の差は根深いらしい。

 そういえば、彼らの夜の営みはくっつく必要がないものだった。だとすると、ハグで親愛を表すことがそもそもないのかもしれない……ううう。


「やめて。同じ顔同士が抱きしめ合っている光景だけでも脳みそがバグりそうなのに、追加で変会話しないで。というか、さっさと人魚姫をちゃんとした人間の形にするから、そういうのは後回しにしてちょうだい」

 確かに同じ顔同士で恋愛をするのは、俺の愛も試されるが、周りの脳みそも試されていそうな絵面だ。

「そもそも、今回は一時的にしか変化できない薬よ。今変身したって量的に一時間程度なんだから。いちゃつくのは後にしなさい」

「そういえば、変身が解けたらどうなるんだ? ただの泡は、ただの泡に戻るのか?」

 ただの泡から人間に変身したのだが、ただの泡は元は人魚だ。水がない場所で人魚になっても大丈夫だろうか?

「うーん。個人的には、人魚に戻って欲しいところなのよね。そもそもが、泡になっても活動している状況がバグっている感じだし」

「えっ。困ります。私はただの泡の体気に入っているんです。あの、むしろ人間になってもただの泡になれるようにしてください。それとも、また王子が私以外の誰かと結婚しないと泡になれませんか?」

「「えっ?」」

 いや待て。

 またただの泡になる気か?!


 ただの泡でも愛せるけれど、ただの泡の姿が好きと言うわけではない。

 そもそも、何故俺がただの泡以外と結婚してまで戻る必要があるんだ。

「俺はお前以外結婚する気はないからな」

「そうなんですか?」

「そうなんだ! だからお前が俺以外と結婚するのも認めないからな!」

「はあ。それは別にいいんですけど。ただ、泡って、便利なんですよね」

 もしかして、結婚という概念がないが故の弊害か?

 俺の顔が困った顔をしてコテンと首を傾げた。俺があざと可愛いとか、脳みそがバグりそうだ。


 とはいえ、どれだけバグっても俺の愛が利便性に負けてたまるか。

「ただの泡のままでもいいが、絶対俺はただの泡以外結婚しないからな。それで王位継承権がなくなろうが知るか。その時は国を捨て——」

「ひぃぃぃ。やめてちょうだい。軽々しくそういう決断するのは!! 分かった、分かったから。ちゃんと好きな時に泡にもなれる薬作るから。お願いだからその結論に行くのは止めてちょうだい!!」

 大切な事なので二回言い、俺が愛に生きると宣言すると、泡ではなく魔女が叫んだのだった。

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