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悪の組織のNO2  作者: 大沢 雅紀
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超人化

次の日

「おかしいな……昨日締めたはずなのに、なんであいつはあんなにピンピンしているんだ?」

平気な顔をして教室に座っている天馬を見て、大賀は不審そうに顔をしかめる。彼は昨日のことを何も覚えてなかった。

「おかしいよね。うちのスマホのいじり画像が消えているよ」

彼女である葛城あづさも不審そうな顔をしている。

「ともかく、早くどうにかしないと……」

そう思っていると、二人は理事長の息子、弥勒翔太に呼び出される。

「いつになったら、奴を追い出せるんだ?あいつは目障りなんだよ。いつも僕の日向にまとわりついて」

そう詰問する翔太の顔は、教室で見せるさわやかな笑顔ではなくて、嫉妬に醜く歪んでいた。

「も、もうちよっと待ってくれ。いつら奴がしぶといからといっても、毎日締めているんだからそろそろ効果があるはずだ」

「そ、そうだよ。うちらも色々やっているし」

弁解する二人だったが、翔太は納得しない。

「手ぬるいんじゃないか?」

翔太はそういって、冷たく笑う。

「なんなら自殺に追い込んでもいいぞ。どうせ学園に言えば、いくらでももみ消せるんだからな」

それを聞いて、大賀たちの背筋に冷たい物が走った。

「いいか?何としても奴を日向から引き離すんだ。僕に従っていれば小遣いもやるし、少々のことはもみ消してやる。大学の推薦だって思いのままだ」

餌をちらつかされ、大賀たちの顔に欲望が浮かぶ。

「わかった。意地でも奴を追い出してやる」

「うちも頑張るよ」

こうして、毎日大賀たちは天馬を放課後リンチするのだったが、思い通りにはいかなかった。

「てめえ!逃げるんじゃねえ!」

自分のパンチをひょいひょいと交わしていく天馬に、大賀たちはムキになって突っかかるが、日に日に天馬の動きは早く鋭くなっていった。

「はぁ……はぁ……くそっ」

散々殴り掛かってもかすらせることもできず、大賀たちは疲れて地面にへたり込む。

「それじゃ、お仕置きタイムだな。『電脳拳』」

「あばばばばばばば!」

最期には、強烈な苦痛の電気信号を頭に流し込まれて、発狂したように泣きわめくのだった。

『よし。大分肉体コントロールがうまくなったな。もう私の補助はなくても奴の攻撃をかわせるようになってきたぞ』

「ははっ。全部お前のおかげだよ。俺ってこんなに素早く動けたんだな」

放課後何度も戦ったおかげで、もはや天馬の身体に憑依しているアダムの助けを借りなくても、自力で大賀のパンチをよけられるようになっていた。

そして帰宅後、毎日電脳世界インフェルノでトレーニングを重ね、自分の身体のより有効な動かし方を学んでいく。

「ほう。かなり改善されたな」

アダムは天馬の姿を見て喜ぶ。デブだった体は引き締まり、すっきりとした体形に変化していた。

「自分でも驚いているよ。ここまで改善できるなんてな」

「まあ、トレーニングに加えて人体内部の新陳代謝プログラムを更新しておいたからな。今の君なら、より肉体を効率的に操れるぞ」

そういいながら、握力計を手渡してみる。

「試してみろ」

「わかった。ふん!」

天馬が握力計を握りしめると、300キロの数値が表示された。

「おい……嘘だろ」

「本当だ。ゴリラやチンパンジーでもそれくらいの握力を持っているだろ?同じ類人猿の仲間であ私たち人類だって、潜在的にはそれくらいの力はもっているということだ。ただ『理性』という中途半端なプログラムのせいで、本来の力を発揮できなかっただけでな」

アダムはそういいながら、握力計を置く。

「あと、顔面の筋肉を操作して、形を整えることこともできるぞ」

アダムが天馬の顔に手を触れると、顔のパーツの位置が微妙に変わっていく。不細工だった天馬は、シュッとした顔のそこそこのイケメンに変化した。

「これで肉体の改造は終わりだな。君も一人前の超人だ。そこで、いよいよ悪の組織「オンライン」を本格的に起動させようと思う」

電脳空間インフェルノに、これからの計画表が浮かぶ。

「私は人間を襲ってエナジーを集める。君は資金調達と仲間を集めてくれ」

「わかった」

アダムと天馬はしっかりと握手するのだった。


「さて……資金調達と仲間集めを任されたけど、どうすべきか」

天馬は現実世界の自分の部屋に戻って、じっくりと考え込む。

「うーん。難しいな」

腕組みをして考え込んでいると、いきなり部屋のドアが開いて、怒り狂った顔の天虎が怒鳴り込んできた。

「あんた!いい加減にしなさいよ。うるさいっていっているでしょ?」

「うるさい?」

天馬はきょとんとなり、首をかしげる。

「そうよ!毎日毎日部屋の中で騒いで!こっちはアイドル活動で疲れて帰ってきているのに!あんたがいるせいでくつろげないでしょ!」

「ああ、そう言えば、俺が電脳世界インフェルノで筋トレしている間も、肉体はこの部屋で活動をつづけていたんだったな。すまんかった」

天馬は頭を下げるが、その体からムワッと汗のにおいが漂ってきて、天虎をさらにいらただせた。

「もう限界!パパに頼んで、あんたなんか追い出してやるわ!」

そう言い捨てて、荒々しくドアを閉めて出て行ってしまった。

「追い出される……か。不思議だな。前はあんなに家族から相手にされないことが悲しかったのに、今ではなんとも思わない」

以前は両親に愛されなくても、妹から嫌われていても家族としての情があった。しかし、『絆人類』に進化した今の天馬にとっては、親にも妹にも特別な感情を持てず、ただの他人としか感じられなくなっていた。

「まあ、どうでもいいか。今の俺なら、たとえホームレスになっても生きていけるだろう」

天馬はそう思うと、これからの計画について考え込むのだった。


次の日

天馬は律義に学校にかよっていた。相変わらず大賀たちからの嫌がらせはやまず、クラスメイトたちからも馬鹿にされているが、そんな彼の評価を変えてしまう出来事が起こった。

「嘘だろ……どういうことだ」

壁に張り出された中間試験の結果を見て、茫然としている翔太がいる。いつも学園で一番だった彼が、今回は二番だった。

「天馬君。今回は頑張ったね。満点でトップをとるなんてすごいよ」

「はは。実力……じゃないんだがな」

日向に褒められて、天馬は照れる。実はトップを取れたのはアダムの知識をダウンロードしたからであり、少し後ろめたく思っていた。

「カ、カンニングだ!」

突然そんな声がかかる。振り向くと、怒り狂った翔太が迫ってきた。

「いつも底辺だって君が、いきなりトップだなんて、カンニングに違いない」

その声を聞いて、周りの生徒たちもウンウンと頷いた。

「カンニングっていうけど、どうやったんだ?」

「そ、それは、他の人の答案をこっそり覗いて」

そう決め付けて来るが、天馬はやれやれと首を振る。

「だとしたら、俺より成績が良い奴がいないとおかしいだろう。そいつの答案を写したことになっているんだから」

そう言われて、翔太は悔しそうな顔をするが、なおも言い募る。

「だいたい、満点って時点でおかしいだろう。事前に問題を知っていた僕でもとれなかったのに」

「事前に問題を知っていた?」

天馬が意地悪く聞き返すと、翔太はハッとした顔になる。

「な、なんでもない。とにかく、先生に言うからな」

そういって、走っていってしまった。

「なんなの?失礼にもほどがあるよ」

日向はプンスカと怒るが、天馬は苦笑を浮かべる。

「別になんでもいいさ。学校のテストなんて今の俺には意味ないし」

「え?」

「あいつがいくら騒ごうが、所詮弥勒学園の中での話だ。大学受験本番の試験でもないかぎり、俺の人生に大して影響ないさ」

そういう天馬は、大人びた表情を浮かべていた。そんな彼を、日向は好ましそうに見つめる。

「天津君、大人だなぁ。最近痩せてかっこよくなったね。なんだかいつも楽しそう。何かあったの?」

「まあね。目標と使命が見つかったからな」

「なんだか分からないけど、元気になってくれて嬉しいよ」

日向はニコニコとした笑みを浮かべてくる。

(俺に優しくしてくれるのは、この子だけなんだよな。もちろん彼女は誰に対しても優しいから、俺に対する特別な気持ちなんてないんだろうけど)

そう思いながら日向を見ていると、彼女を仲間にしたいという欲求が沸き上がってきた。

「日向。ちょっと俺の手を握ってくれないか?」

そう言いながら、手を差し伸べてみる。

「いいよ」

日向は無邪気に笑いながら、手を握りしめた。

(今だ。『電脳意識(テレパシー)}』インストール)

日向の手を通じて、人間を『絆人類』に進化させるためのプログラムを送り込んでみる。

しかし、日向は何も感じないようで、ずっと首をかしげていた。

(失敗した……日向には俺の仲間になる資質がないのか……)

彼女に恋心を抱いていた天馬は、その結果に失望する。

「いつまで手を握ってるのよ。いやらしい!」

その時、日向の取り巻きたちが割り込んできて、強制的に引き離されてしまった。

「調子にのらないでよ。日向はあんたみたいなオタクと違うんだからね!」

「ゆり、そんな言い方……」

抗議しようとした日向の口の口を、親友である月影百合子がふさぐ。

「日向はだまってて。いい、あんたみたいなモブ、日向にふさわしくないの。王子ぐらいのスペックじゃないとね」

「そうよ。最近ちょっと調子にのりすぎ。いい気にならないで!」

百合子たちは、口々に非難してくる。

「み、みんな。別に天津君はいやらしいことをしていたわけじゃなくて……」

「日向!こんなオタク相手しちゃだめ!いこう!」

日向は女子たちに引きずられて連れ去られてしまった。

「やれやれ……俺たちの仲間になれる奴って、どこにいるんだろうな」

去って行く日向たちをみながら、天馬は孤独を感じていた。


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