プロローグ
唐突に書こうと思って道筋だけはできたものです。
全然内容のほうはないため、不定期投稿とさせてもらいます。
ザーザーという耳障りな音で、遠のいていた意識が浮上してくる。体を濡らし体温を容赦なく奪っていく感覚と、今なお体から流れ出る温かい何かの感覚と相成って気分は最悪に近い。
刻一刻と遠のいていく意識、もう目を開けなくてもいいんじゃないかと思うほどの倦怠感を追いやり、気だるげに目を開くと、目の前は灰色の雲が空いっぱいに広がっていた。朝起きた時からずっとかかっていた雲だが、ついに雨が降り出したようだ。
周囲を見渡せば、戦闘の際に早々に焼けてしまった木々が見えるのみで動いているものは確認できない。先ほどともにいた仲間達も、この様子ではもう近くにはいないのだろう。それも当然なことで、視線を下に向ければ地面は赤く染まっており自分は血だまりの中に倒れている。そのことから仲間たちからは死んだと思われたらしい。
耳をすましてみれば、遠くのほうでいまだに轟音が鳴り響き続けていることから。敵との戦闘はまだ終わっていないらしい。
「っ……倒れている暇なんかない」
動かぬ体に鞭打って、体を起こしやすいようにうつぶせにしながら自分が着ているハイドラギアの魔力炉に魔力を通すと、それに呼応するように青い光が走り起動を知らせる。
ハイドラギアは、長きに続く戦争が始まってから作られた魔力で駆動する強化外装だ。今でも研究が進められており、軽量化や魔力効率が挙げられている。現在主流になっているのは第五世代で開発当初よりもかなり技術が進み、部分的に金属を使いそれ以外には魔力被膜というもので覆って防御力を上げるという画期的なものになっている。
それでも壊れるものは壊れるもので、『ライン』の着ているハイドラギアはもはや正常に起動するかも怪しいくらいに動きが鈍く、金属部分のパーツからは火花が散見される。通わせた青い魔力光は今にも消えてしまいそうなほど淡い。
だが当の本人はそんなことを気にも留めずに、近くに投げ出されていた軍支給の自動小銃を拾い杖代わりにしてぐっと力を入れて立ち上がった。そして、仲間たちが行ったであろう方向に向かって進み始める。
「行かなくちゃ」
思い浮かぶのは、増悪や嫌悪で顔をゆがめる仲間たち。そして悲しみに目にいっぱいの涙をため、それでも止まらず流しながら自分を撃った彼女の顔。
『お前は死者を辱めて楽しいか!!』
『裏切者!』
『あの時、助けたのは間違いだった』
『ごめんね、ごめんね。……なんで、こんなことになっちゃんたんだろう……』
いくら否定しても信じてもらえず、最後に聞いたそれらの言葉を思い出すだけで胸が張り裂けそうになりながらも、歯を食いしばって耐え先を歩む。行った先に待っている敵と、それに向かってい行った仲間を追いかけて。
最も大切に思っていた人に撃たれても、仲間じゃないと言われ心無い言葉を浴びせられても、ここで一人寝ているのは間違っていると思うのだから。
たとえ、”本当の意味で彼女たちとの仲間になれないのだとしても”心だけは仲間であり続けられるようにと。