⑨
翌日。
「先輩、こんにち・・・はぁっ!?」
教室に入ってきたかすみが、僕を見るなり突然驚いた声を上げる。
「お疲れ、赤実。最近は暑くなってきたな」
僕はボタンを全開にした制服のYシャツをぱたぱたと仰ぐ。
「ちょ、ちょっ・・・先輩!? 昨日私が言った事、覚えてます!?」
かすみは慌てて胸ポケットから青いペンを取り出し、それを咥える。
「青い色を見ると興奮するって話? ちゃんと誰にも言ってないよ」
「そ、そうじゃなくて・・・! な、なんで!
制服の下に青いシャツ着てるんですか!」
彼女が慌てている理由、それは僕がYシャツの下に「青い」シャツを着ているからだ。
「あー、本当だ。ゴメン気付かなかったよ」
当然、全部分かって着ているのだが。
「せ、先輩。青いシャツ・・・ぜ、全然似合ってないですね」
かすみは青いペンを噛みながら、思いっきり目を反らしていた。
「えぇ、酷いな。そう言われるとちょっと傷つくんだけど・・・」
「ひ、酷いのはどっちですか!!!」
かすみは最早、舐めるやかじるなどを通り越して、噛み砕かんという勢いで青色のペンに食らいついていた。