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⑩
「お、おい。そんな強く噛んだらペンが折れるぞ?」
「ぎゃー!!! 近づかないでください!!!」
心配になってかすみに近付くと、凄い勢いで教室の端まで逃げられてしまった。
「・・・あ、ゴメン」
流石の僕も、そんなに避けられるとは思わなかった。
少しやり過ぎたかと思い、僕はYシャツのボタンを閉める。
「それにしても先輩、なんでそんな恰好してきたんですか? 誘ってるんですか?
わ・・・私に惚れられても知りませんよ」
かすみは軽い調子でそう言うが、途中から照れた様に口ごもる。
そして自分の発言を思い返して恥ずかしくなったのか、頬を紅潮させ下を向いてしまった。
「えっと・・・」
「う・・・」
なんだか、部室は変な雰囲気に。
「・・・あー。僕は別に、赤実に惚れられても構わないんだけど」
意を決して、口を開く。
「っ・・・!?」
だが僕がそう言った瞬間、パキッと乾いた音が鳴り響く。
「ひゃあ!? 折れたぁぁぁ!!!」
見ると、かすみの咥えていた青色のペンが見事に真っ二つに折れていた。