表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

MY song

排水口から愛を込めて。

作者: caem



 ごぼり。

 ごぼ、ごぼ。

 ゴポポポポ。

 

 じめついた身体。

 汗をシャワーで流し、爽やかな香りと共に泡は流れてゆく。

 仕事で疲れきった身体の隅々にまで温もりが行き渡っていった。


「ふぅ~♪」


 並々と注がれた浴槽に身を委ね、余分な水分を絞りきった手拭いを頭上へと乗せる。

 今日も一日に終わりを告げ、湯船で一頻り浸かったあとは発泡酒で満たされるだけだった。

 全身に満ちてゆく灼熱は、日頃の暑さよりも高いというのに心地好い。


 風呂とはかく有るべきなのだろう。

 吐いた息は湯煙と混じり合い、直ぐ様辺りを白く染め上げてゆく。

 じわじわと押し寄せる熱が頭のてっぺんまで押し寄せ、最早何も考えられなくなってきたその時 ── 奇妙な感覚が耳に届く。


 ごぼり。

 ごぼ、ごぼ。

 ごぼぼぼぼ。


 多分、排水口が詰まってしまったのだろうか。

 普段から丁寧に掃除は欠かさなかった筈なのだが、こういう事もあるのだろう。


「は~あ……。 ったく……」


 面倒臭そうに、投げやりに差し出した掌。

 ふいに誰かが掴んだ。

 ぬるりとした感触が全身の毛穴という毛穴から忍び寄る。




「ねぇ……ワタシも入れてよ……」




 気付けば、いつのまにか寝室で横たわっていた。


「あれは……いったい……」


 まとわりつく汗を拭い、再度眠りにつこうと毛布を被ろうとして気付いてしまった。

 隣にあった瑞々しい毛玉が夥しいぐらいに形を成して、それはあの世からのサプライズだったのか。


 私は絶叫する間も無く、ふっと奈落の底へと沈んでいった。



 朝早くに起きて、湿った布団。

 そこには


 ────


 自分のものではない長い髪が敷き詰められていた。

「天井裏から」ではないのが味噌。

懐かしい歌ですよね~。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ