排水口から愛を込めて。
ごぼり。
ごぼ、ごぼ。
ゴポポポポ。
じめついた身体。
汗をシャワーで流し、爽やかな香りと共に泡は流れてゆく。
仕事で疲れきった身体の隅々にまで温もりが行き渡っていった。
「ふぅ~♪」
並々と注がれた浴槽に身を委ね、余分な水分を絞りきった手拭いを頭上へと乗せる。
今日も一日に終わりを告げ、湯船で一頻り浸かったあとは発泡酒で満たされるだけだった。
全身に満ちてゆく灼熱は、日頃の暑さよりも高いというのに心地好い。
風呂とはかく有るべきなのだろう。
吐いた息は湯煙と混じり合い、直ぐ様辺りを白く染め上げてゆく。
じわじわと押し寄せる熱が頭のてっぺんまで押し寄せ、最早何も考えられなくなってきたその時 ── 奇妙な感覚が耳に届く。
ごぼり。
ごぼ、ごぼ。
ごぼぼぼぼ。
多分、排水口が詰まってしまったのだろうか。
普段から丁寧に掃除は欠かさなかった筈なのだが、こういう事もあるのだろう。
「は~あ……。 ったく……」
面倒臭そうに、投げやりに差し出した掌。
ふいに誰かが掴んだ。
ぬるりとした感触が全身の毛穴という毛穴から忍び寄る。
「ねぇ……ワタシも入れてよ……」
気付けば、いつのまにか寝室で横たわっていた。
「あれは……いったい……」
まとわりつく汗を拭い、再度眠りにつこうと毛布を被ろうとして気付いてしまった。
隣にあった瑞々しい毛玉が夥しいぐらいに形を成して、それはあの世からのサプライズだったのか。
私は絶叫する間も無く、ふっと奈落の底へと沈んでいった。
朝早くに起きて、湿った布団。
そこには
────
自分のものではない長い髪が敷き詰められていた。
「天井裏から」ではないのが味噌。
懐かしい歌ですよね~。