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でぇえとぉお! シテマス?

 ナインとフランの”でぇとぉ”は、ヤゴの街にさまざまな旋風をまき散らした。

 

 特に、これまで滝の山脈亭の名前なぞ、一言も口から出したこともない女性冒険者や魔術師にとって、舌の上に店の名を乗せる日がないほどであった。

 

 ――次の水曜日


(まぁ、俺様がここまでやればいいだろう……後でちょっくら滝の山脈亭を覗いてみるか)


 広場のねぐらで寝転がりながら夕焼け空を見ているナイン。

 その横を、街の人間の歓声と共に通り過ぎるモノがあった。

 思わず目を向けるナイン。


「なぁ……なぁにぃぃ!」

 ナインの目に入ったのは並んで歩く二人の男女。


 一人は、蒼白の礼服を召した、蒼き月の聖騎士指南役のアルゲウス、

 もう一人は、同じく蒼白のドレスに身を包んだ、妻でありパン屋の女将のイネスであった。


 腕を組みながら、通りをバージンロードに見立てて歩く二人。

 街の誰もがその姿に感嘆の息を漏らし、少女達は黄色い声を奏でていた。


「ど、どこへ行くんだあの二人。今日って結婚記念日だっけ?……でも今さら?」

 尾行と言うより、ゾンビのように体の力が抜けたまま、後をついて行くナイン。

 二人が向かった先は、滝の山脈亭だった。


「いらっしゃい……ア、アルゲウス様!」

『ええっ!』 


 さすがの親父も、アルゲウスに対しては”様”をつける。 

 屈強な冒険者達も、”闘将”の入店を確認すると、思わず姿勢を正した。


 イネスの為に椅子を引くアルゲウス。

 腰を下ろすイネス。


「い、いらっしゃいませ。アルゲウス様、イネス様。ご注文は?」

 闘将を目の前にし、緊張しながら注文するニケルにアルゲウスは


「赤玉キノコのクリームパスタを二つ。”妻”には白リンゴのジュースを。ワシには黒リンゴ酒で」

「か、かしこまりました」


 やがて、ニケルのパスタを口へ運ぶ二人。

「あら、おいしい!」

 イネスが純粋な感想を述べ、


「ふむ、ろくでなし(ナイン)が入り浸るのもわかる。あやつ、なんだかんだで味にはうるさいからな」

 アルゲウスはパスタの味にのどをうならせた。

 

 支払いを済ませると、野次馬をかき分けながら出て行く二人。

 イネスはその中に呆然とするナインを見つけると、軽くウインクを放った。


――その次の水曜日


「おめぇさんはともかく、フラン様や、パン屋の女将、そしてアルゲウス様が来てくれたとあっちゃ、いい宣伝になったわ。女性のみって訳ではねぇが、一応女連れで来ているしな」


 滝の山脈亭の裏口で青玉キノコのクリームパスタをほおばっているナインに対して、親父がコップに入った白リンゴ酒を差し出した。


「俺の奢りだ。おめぇも気ぃ使ってここで食べなくてもいいのによ」

 ナインはにやけながら親父の手からコップを受け取ると、中の白リンゴ酒を一気に飲み干した。


「ふぅ~。さすがにアルゲウスや女将の来店は予想外だったし、来ている客も恋人同士と言うより、同じ旅団の団員か、よくパーティーを組んでいる連中だけどな。でもまぁ、こんなもんだな」


 にこやかな顔で、女性客の為に赤玉キノコのクリームパスタをつくっているニケルの顔を見ると、店を離れようとするが……。


”きゃあ!”

”えぇ!”

 ふいに店内に沸き起こる、客達の叫び声が二人の耳に入った。


「ん? なんでぇ喧嘩か? 今日は血の気の多いヤツは来ていないはずだが?」

 喧嘩と聞き、ナインは足を止め、にやけた顔で親父と一緒に店内を覗くが……。


「「なぁ! なぁにぃいいいぃぃ!」」


親父とナイン、二人が同じ叫び声をあげたその先には


 金色(こんじき)の礼服を召した、金色犬鷲(こんじきいぬわし)の団の団長、イヌワシ。


 もはや隠密行動を放棄した、金色の装束を体中に纏った、ふくろうの団の団長、フクロウ。


 そして……そして……。

 背中とスリットを惜しみなくさらけ出した金色のナイトドレスに身を包み、まぶたには紫、唇には紅、顔には白粉(おしろい)を纏い、指輪からネックレスまで、アクセサリーを重戦士並みに装備した


 はやぶさの団、団長……ハヤブサであった。


店内の女性客はもとより、後を付いてきた野次馬の女性まで、ハヤブサの容姿に、もはや”女”として感嘆の声を奏でていた。


 男性冒険者や街男も、女装ではなく”女以上の女になりきった”ハヤブサの容姿に頬を染め、ただ見とれるしかなかった。

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