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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
それぞれの影が過ぎた道 別場
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二つの影 揺るがぬ闇 10

迫るセムとの距離を見計らい、動き出す

大きな、跳びの一歩。右足が着くと同時に鞘から剣を抜く動作、火花ではなく黒紫の飛沫

セムはノレムの背後に、鞘から抜かれる剣より飛び散った闇がミスト状に強大な黒に霞む圧のある気配となるのを見た

足が止まりそうになるが、それは自分の気の持ちよう。恐れは生まれてないので、一度もブレーキや躓きもなく足は進む

薄く少量の光が、全身から剣へ漂う

鞘から剣を抜き切る直前、一気にスピードを上げ、抜き胴

セムは前方からの一撃を自らの剣の刃にに光の力を展開させ、振ることで受け弾く。剣から手に痺れが生じていた

斬り抜けたノレムは手応えや防がれたを気にするより、即座に袈裟斬りへ繋ぐ

顔はその方を向かずに剣を握る手だけを回し、刃で刃を押し付けるようにして続けて防いだ

剣と剣の光と闇が弾け合う


(重くなってきている)


刃と刃の接触後、セムからの押す力に抵抗はせず両者の間に距離をつくる。その直後、彼の剣より光の斬撃が連続して放たれた

ノレムは左の掌に稲妻を走らせ、握ると前へ撒き散らすように手を開く

稲妻はまるで繊維状に壁を張ったかに見えるが、幾多もの稲妻が空間を流れ斬撃を打ち消していった


「ちぃ・・・っ!闇ばかりじゃないか!」


ノレムは目前に敷かれた稲妻の壁を1箇所に束ね、発射。まるで稲妻の花束であった

セムは避けるべきかと考えたが、後方には王がいる。まずは避る選択肢は捨て、全身に光のエネルギーを溜めながら跳び、放出する

その光は範囲を絞りながらも強大であった。いや、絞ることでより密度と威力を高めれたのであろう

稲妻を押し返し、剣で防御体勢に入ったノレムを光に呑み込ませた


「っと・・・」


光は消え、絞ったことで城や王にほとんど被害もなく済む

着地したセムの足底、手の掌と甲、口から白い煙が漏れており、その目にはボロボロとなったノレムが映っていた

映る彼の体勢は変わらずにいる


(始まりと全然違う。1回1回剣を交え、光を力として扱う度に、着実な成長を体感している。初実戦による緊張から慣れとなり、流れを我が物とし始めたか)


ノレムの身体の至る箇所からも白く小さな煙が、弱々しく揺れていた

光のダメージと脇腹から走る熱と激痛により、気を緩めば足から崩れ、意識が眩み霞むかもしれない

剣で防御の体勢から、大振り穏やかな風圧を生ませ突きの構えへ


「これからの交戦で、お前を確実に倒す!そして、俺はジョーカーに勝つ!」


「その意気込みは甘すぎるぞ」


足を踏み出す前、光が剣刃に集まり光刃と化す

光の一撃で、闇を打ち払うつもりである

両者同時に走り始め、ノレムは突きで闇の棘を放出し、セムは飛び跳ね、剣を床に振り下ろし叩きつけることで光を生じさせた

2つの力が激突し、ノレムとセムはそこへ飛び込むと剣の攻め合いが発生

最初の刃と刃の接触の衝撃で、光と闇は弾け消されてしまった

睨みつけと噛み締めた歯の見せ合い


「俺を確実に倒すと言ったな!だが俺は勇者に負けるつもりは無い!俺にはお前とは別の再び闘うべきある光がある!」


「何を・・・言っている!!」


力押しで上からノレムの剣を剣で押し付け、先端を床につかせると、そこから素早く剣を引き斬りつける

その一太刀は届かない、闇をヘドロのように塗りたくった左手が刃を掴み捕えていた

ノレムの持つ剣の先はそのまま押し込み、床から巨大な闇の棘を突き上げる


「あぶねっ!」


棘が突き出す寸前でセムに予感が走り、ロベアートもセムの名を叫んだ

ノレムに掴まれた剣を無理矢理引き抜くと後方宙返りで躱し距離をとる

彼の剣刃を掴んでいた手から闇と血が滴っていた

セムは足が着く瞬間に床を蹴り、再度攻め立てようとするが、突然「待てーい!」の声が響き、ブレーキをかけてしまう。ノレムも、セムもロベアートも同じ方を向く


「一度休憩を挟みましょう。休憩は大事です。さっきのバースデーケーキもあるぞ」


その光景は、まさに目を瞑りたくなる惨状であった

倒れ、壁にモタれ、絶命している兵士達。転がる珠に折れた杖。散らばり兵に刺さったりしている槍に短剣の類い。床に、壁に、飛び散らせたり擦ったような跡は惨劇を教えてくれる

生きているのは、一目見てジョーカーとその近くで正気を失った眼のハーネだけである。彼女には赤き飛沫が顔に付着しており、震えながら座り込んでいた


「ロベアートよ、今この景色を目にした顔だな。その勇者に、視界が囚われていたか?」


座り込み、抵抗すらできなくなった彼女の頭を撫でる。微かな声で「ひっ・・・」と漏らしたが、またすぐに言葉を失い、親指の関節を噛む

「やめろっ!」の声が轟いた。大気を揺らす勢いであり、その主は目が血走り始めるセムであった


「彼女から、離れろジョーカーーーっ!!」


セムの変化にノレムは少し驚いていた

こうまでして、すぐに変わってしまうものだろうか?大気より伝わる力の圧が更に強まっている

この後、すぐにでもこの勇者は自分を飛び越え、ジョーカーへ襲いかかるだろう。はっきりすぎる程に


「私に剣を振るい、彼女を救うつもりかい?他にもいた神官と、彼女に向ける気持ちが違うな。わからなくもない、僕にも似た経験がある」


思い出に耽ろうとするジョーカーに、「黙れぇーーっ!!」の一声。足底から床が砕け、破片が飛ぶ

だが、その一声は届くも無意味すぎる。湧き上がる怒りの蓄積が溜まる度、力の増加と不思議なぐらい身体が馴染み始めているのを感じた。この力で、一気にジョーカーとケリをつけるつもりでいたのだが、その一瞬があまりに遅い

ハーネに、影より囲うように飛び出した黒き剣山が突き刺さる

セムの瞳孔が縮小、溢れんばかりの光は消えてしまった。口から一筋の血と光を失った瞳より涙を垂らす顔を自分に向けている


「なんということを・・・」


王のロベアートは深く顔を伏せ、反対にジョーカーは笑う。ハーネの涙を、親指でゆっくり拭いながら

ノレムは無言を貫き、意気消沈となり口を開いたままのセムの様子を伺うだけ

勇者本人に景色は見えていない、巡る記憶ばかりが映る。幼く、帰りたくて、夕焼けに染まる訓練場の外れで1人泣いている時に声をかけてくれたのがぶどう酒を届けに来ていた彼女であった

歳も同じぐらいで、初めてできた友達でもあり、よく抜け出して星を眺め、一緒にこっぴどく怒られもした。付き合いは変わらず、今日この日まで

ある日、いつからだったか?ハーネに向ける感情に変化があったことに。彼女から自分に向ける目も少し変わっていた気がする

勇者の儀式を執り行うに必要な神官となる運命にあったが、勇者と神官の関係の前に、ずっと一緒にいたいと想える関係であった


「ぐぅ、うぅ・・・ハーネ・・・」


苦しい、苦しくてたまらない。胸が痛い、痛すぎる。頭を打ちつけて泣き叫びたかったが、悲しみに染まりきる前に、怒りが塗り替える

一言も発せず、俯いたセムは剣を力なく持つ。とても静かな間の後、柄を握る指から、全身へ、力が流れ込む

気流すら味方につけたかのようだ。ノレムは前方から押される感覚に襲われていた

強大な光の力に、セムの体は追いついている


「ジョーカー様!交代なんて提案しないでください!信じると言ってくださったので!」


「よし、勝てよノレム」


その命令だけで充分。ノレムはそれが嬉しいのか、珍しく笑みをこぼす

セムの怒りは大気に光を走らせ、城全体にまで伝わっていた。このままだと城が全壊しそうだ

その明確な殺意はジョーカーに送られている。微かな涙の雫は下に落ちず、上へ舞っていく

歯を噛み締め、「ふーっ!ふーっ!」と荒く息をあげながらジョーカーへ襲いかかろうとするもノレムの飛び蹴りが遮ってきた

セムは剣を持たない方の腕でガードを行い、剣で斬り捨てようとするがその腕に踏み込む力を少し加え、バネにして距離を置く


「どけぇっ!!俺の手でジョーカーを葬ってやる!!あいつを倒してハーネを救う!!あんなやつの側で眠らせておいてたまるか!!」


「俺を倒してからじゃなかったのか?行く道先の障害となる岩山だけを見て越えようとするヤツは、足元の石ころに気づかず躓くんだぞ」


「なら飛びかかったことすらにも気づかれない突っ切られた小さな火の粉で終わらせてやる!!」


左手の指を全て曲げ、掌底突きで光のエネルギーを旋風のように、衝撃として放つ

ノレムは闇の力を全身より溢れさせ、それは闇を纏う剣に絡みつき始めたところで迫る光に大振りの一刀

振る寸前、5つのギザ状をした黒紫色の輪が形成されており、内に刀身を通させ、並び回転していた

剣が振られ、輪も刃を擦り抜けながら放たれた瞬間に巨大化し、5つの闇輪の刃が闇と共に光の衝撃を回転しながら抉るように受け止め相殺させる


「闇は光に抵抗できず浄化されていろ!」


相殺され、弾けた光の粒を掴み握ると光のスピアに形成させ、投槍。それを数回、素早く移動しながら繰り返す

ノレムは闇の纏う剣でスピアを斬り消し、防ぎ、軌道を変える

次のスピアを斬り捨てた直後、ノレムの目前には水平状に剣刃が迫っていた。身体を逸らし、躱す

髪が少量だが切れたが、あのまま頭部上断面図となるのはゴメンである

身体を反らし躱したタイミング。そのまま、真後ろに身を捨てるとその反動を利用し、床に両手を着け支えながらセムを上空へ蹴り上げた

蹴り上げ、腕に力を入れ跳ねると宙後転からの起き上がりにすぐ、セムへ向けて黒紫の闇の剣山で滅多刺しにする

彼のとった防御は、腕をクロスさせてのガード。薄く光が全身を覆っていた

闇の剣は容赦無く彼を攻撃。しかし貫かれはせず、着弾と同時に先端から砕け散っていく

どうやらセムの方も全て、完全に防御するのは無理なようだ。クロスさせた腕には痕があり、真正面以外の側面に位置する腕や頬、足の各場所には軽い切創

ようやく攻撃が止まり、腕を解くもその先にノレムの姿はない。セムの脳に電撃が走った

振り向き様、回し蹴りを放つ。自分より更に上空から両膝を畳み、高速で前転しながら落下する。その勢いを利用し、強烈な蹴りを撃ち込む

セムの膝に炸裂。威力を吸収できず、その位置から一瞬にして床へ轟音と共に叩きつけられた


「くっそーーっ!!」


剣山の滅多刺しと今の蹴り、額からと各傷の箇所より血が垂れている。それを拭い、剣を手にして見上げるがノレムはもう着地していた


「力に体は追いついてはいたが、精神はほんのわずかに追いついていなかったようだな」


眉間にシワを寄せ、睨みつける。ノレムの言葉を耳にして、そのような顔になったわけではない

滑り込みながら足払いを仕掛けるが、力任せの蹴り上げに体が宙を舞い、高速で回転させられ再度床に叩きつけられ、跳ねる

体勢を立て直し、光のスピアを左手に形成させ投げると同時に走り出す。追いつくギリギリのスピードで

光のスピアは半分程のサイズになり、数を増やし1本1本が大きく曲がる。多方面からノレムへ一点集中

ノレムは剣で上段の構えを、そこから微動だにせず静寂

剣に光を携え、多数のスピアが到達するより一歩先に相手へ剣の一撃を叩き込む

ノレムも動いた。この一瞬、剣の一撃とスピアが到達する寸前の一瞬の間に自らの剣で攻撃を受け流し、死角へ回り込むと闇の纏う刃で斬りつけた


「ぐあっ!!」


ノレムが構えていた場所な光のスピアがぶつかり合い、閃光が連続して発生していた

浅い、それは自身でもわかっている。左の側面から背にかけ一線に斬られ、険しい顔をするセムは手から光のエネルギーを放出する

大きく跳び、後退しながら剣に纏う闇の一振りで光を覆すとその剣を鞘に納め、右手は柄をしっかり握ったまま距離を詰めると鞘より剣を抜き、居合いの形で突き

その闇は、セムの胸を貫く


「濁りのない光よ。真っ直ぐすぎた光では、俺を倒せん」

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