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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
違う輝き
67/217

前兆前 21

激痛と口や目からの出血、流血が続く。視界が茶色く濁り、僅かでも指を動かしたり空気に触れるだけで全身に拷問となる痛み。死んだ方がマシだと普通なら考えてしまうだろう

何度も痛みの限界が更新されているような気がした。それはタイガの体に起きた異変、自らが一番に感じとっている。動くだけで耐え難い痛みならばなるべく動かないことが望ましい。だが、今は敵がいる目の前なのでそうはいかないはずなのだが、動こうにも全身に力が入らずにいた

しかし、ジョーカーはこのような現状のタイガにトドメを刺そうとせず、こちらを見つめる


「痛いか?痛いよな。ごめんな」


「毒・・・か・・・っ!」


正解なのかジョーカーは手を叩き拍手を贈る。なぜ毒だとわかった理由は、感じとった異変はタイガ自身の体が抗体をつくろうとしていること

普通ならどんな毒だろうと、生まれ持った丈夫さと不思議な力で効くはずがない。だが、ジョーカーが自分に送った毒はこの世に存在していなかった別物だと疑う


「バレたか!なーんてな。なにしろ、スペードと一緒で他の五星みたいに隠す必要がないものだし。でも毒をつくり、取り除いたりできるだけなんだよな僕の能力は・・・おまけ程度ということで」


タイガは考えていた。いつ毒を自分に送り込んだのかである。空気中に撒き散らすタイミングはあったのだろうか?触れるだけで良いなら場面が多すぎる

激痛で意識がおかしくなる中でふと思い出した。最初辺りで、指でただ突かれただけに終わったあの時。突いた後に放った言葉も引っかかる。確信はないが、あくまで可能性


「貴様はハオンの爪が刺さり、できたはずの傷口は綺麗に治っていたが僕の毒は動こうとする筋肉、治癒や再生しようとしたり抗体をつくろうとする肉体、細胞組織に過剰反応して何度も新たな劇なる毒を生む」


ジョーカーは語り始める。激痛に苦しむタイガに知ったことではないとばかりに

聞いてくれているかな?など、どうでもいいのだ。スペードが興味を示す相手に、ちょっとでも自分を知ってほしいだけある

それは嘘であるかもしれないが


「逆に、たとえ誰かがどのような毒に侵されていようが治せる。猛毒のキノコやカエルを口にしようが、毒蛇に噛まれようが、幻想生物の未知なる毒にやられようがな。蜂毒にやられ起こるアレルギー反応に生じるアナフィラキシーも止めれるが、活発にさせてショックさせることも可能だ。毒にも様々な種類があって治癒とまでいかないが傷口を毒で一時的に麻痺させ痛みを和らげたり、肉を腐敗に似た状態にして繋ぎ出血等を抑えたりもできる。さっきの貫いた女にも施しておいてやった」


こいつの言葉がほとんど耳に入らず、タイガは毒で朽ち腐敗を始めた肉体の再生と抗体をつくるのを止めピクリとも動かなくなってしまった

生きてはいるが、ほとんど死体であり時間の問題でもある。ジョーカーは返事をしてくれないタイガに対して退屈そうだ


「はぁ・・・あぁ・・・待つのは嫌いじゃないのだがな」


彼が動かなくなったのは自分が何もしないからだろうか?そう考えたジョーカーは少し手を加えようと、自らの影を右肩へ移動させ、そこよりドス黒い小さな鋭利状のものが伸びるとタイガの頭部へ突く

頭部へ突き刺さる前にタイガは跳び上がり、宙で回転しながら退がる。着地と同時に片膝をつき、口から黒混じりの血の嘔吐


「やっぱり、その気になったら動けるようだな。立てず、なんとか口を開き助けや殺してくれと懇願するやつらばかりだったのに」


「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」


拭っても拭っても目や鼻からの血は拭いきれず、その動作だけですら意識が飛び、ショック死しそうなほどの激痛が襲い、血管が破け皮膚を破り噴き垂れ流れていく

ジョーカーの左右より、影から黒が伸び、先程とは比べ物にならない巨大な刃を形成する。地から少し浮きながら、楽しそうに笑う


「貴様がどこまで頑張れるか観たくはあるが、こうして終わりを迎えるのも辛い・・・で、1つ提案なのだが、僕に頭を深く下げながら毒を消してくださいとお願いするればお前の体からお望みどおりに毒を消してやろう。これだけは本当だ、嘘だったら五星達と魔王帝様を殺しに挑んでもいい。信じてくれ」


「信じてくれ」あのジョーカーの言葉のはずなのに心に直接刺さった。タイガの直感だが、不思議とこれは本当なのだろうとわかる

指を微かに動かすだけでも激痛が襲う状況だが、さっきの回避と同様になんとか振り絞り、ジョーカーの言う通りにすれば解放される

だが、これは命乞い。敵に頭を下げたくない等そういったプライドは持ち合わせてないが、今はモトキも戦っているというのに自分だけ慈悲を貰ってよいのだろうか?

違う。命乞いをして、慈悲を受けては生きて終わってから勝利したあいつに話しかける資格があるのだろうか。モトキ自身は気にしなさそうだが、己の奥底で剥がれない泥が付着してしまう。ならば、ジョーカーへ告げるのは一つ


「なめ・・・るなよ・・・お前に、頭は下げねぇ・・・目にしておけ、これが俺の・・・ど根性じゃあああああああーーーーっっ!!」


赤きオーラが吹き荒れる。全身から血管が隆起し、血を吹き出すが険しく凄まじい黒き眼光はジョーカーを睨む

ジョーカーは腕を組んだまま、黙り込んでいた。彼の眼にはタイガがどのように映っているのだろうか

タイガは激痛や出血を気にせず、足に力を入れ両拳を握り構えをとった次の瞬間、痛みや視界の濁り等が突然として消えてしまった。明らかに自分ではなく、ジョーカーの仕業である


「どういうつもりだ・・・?」


「まずは謝らせてくれ、すまない・・・この毒の力は本来お前のようなやつではなく、主に気に入らず大嫌いな一般の相手を苦しませるか、病の治療が為に使用するつもりでいる。なのに僕は使った。だが使ったことに謝っているわけじゃない、僕は貴様をどこか甘く捉えていた。馬鹿に指先遊びのような試しをしてしまったことに謝りたかった」


ジョーカーは茶のロングコートを脱ぎ捨て、ネクタイも外す。もう拾い、着直さず、浮くのをやめ、地に足が着くと同時に彼の背後より一瞬だけだが、黒い人影のようなものが見えた

タイガは驚いていた。そして似たように、白い人影を覗かせる


「やはり、色々隠しているな」


「お前の方がシークレットだらけだろ」


タイガが左足を後ろへやり、踏み込んだ次の瞬間、いたる場所からマグマが地を破り噴き出す。無謀にも走り出し、瞬時に間合いを詰め右拳に炎を纏わせながら正拳突きを撃つ

ジョーカーは左手で受け止めるが手袋は燃え、ガスマスクはヒビだらけになり、生じた衝撃により足底が地を削り少し退がる。空いている片方の手に影が包みタイガへ叩きつけを行うが彼も空いている左の手で掴み止めた

互いの両手が塞がった。しかしジョーカーが突如影となり姿を消し、タイガはバランスを崩しながらも真後ろへ向け回し蹴りを放つ


「おぉっと・・・」


少し体を反らされ、あと一歩届かず躱されてしまった。だが空振りに終わらせず、次に上半身を捻りながら十文字槍を突く

だがジョーカーの背後より、骨の巨大手が頸の襟を掴み投げ飛ばした。「あらっ?」と間抜けな声を挙げながら飛んでいく先で、待ち構えていたかのように現れた骨の手がジョーカーを上からは叩き落とす


「雑な止め方だ。私の意思で動かしてるけど」


あのような避け方をする必要がなかった。他にも方法があるはずなのだが、数ある中であの避け方をしのは好きにやってみたかっただけ

強敵に出逢い、戦闘への喜びなど自分には理解できないが、様々な意味でちょっと楽しくなってきた。その理由は誰にもわからず、ジョーカー自身だけが知る


「お前が反撃してこないのをチャンスとして攻めさせてもらう」


高く跳び上がり、十文字槍を回させた後に落下しながら振り落とすと空より燃えるマグマの塊が無数に降り注ぐ

ジョーカーを対象に範囲を絞り、ピンポイントで密集させながら降ってきたマグマの弾は連続して容赦なく落ちる。やがて噴き出したかのような炎柱となり、夜雲を貫く


「くっ、手応えがなかった」


ジョーカーの気配がある。刀を手に斬りつけようとするが夜天まで昇る火炎の柱は下より掻き消されていく。肌に手で撫でてくれたような優しい風が吹き、激炎はその風に乗り消えていった

とても優しい風であった。この現状とはかけ離れたものであり、小さな旋風はジョーカーの掌上で遊んでいる


「火も風も、命を運ぶが牙を尖らせる」


旋風が集まる右掌をタイガへ向けてすぐ、胸と胴に強大な力が襲い吐血してしまった

背から抜けた螺旋状の旋風、優しかった風がタイガに牙を立てたのだ。抜けた胴の箇所周りは風により刻まれた切り傷が拡がっているがすぐに治癒

咳き込みながら睨むタイガの顔を見て擽られたかのような気持ちになったジョーカーは狂ったように笑う。しかし、それによりヒビだらけとなっていたガスマスクが完全に粉々に砕けてしまった

下に布を巻いているが形だけでもついにジョーカーの顔が、期待と楽しみで心臓の鼓動が速度を増す


「髪だけで顔に布をしてないからまずい!このままでは私の魅惑的な顔が!」


どうやら顔に布をしていなかったようだ。期待値が高まる。ついにやつの顔が見れる

かと思われたが、さっきと同じガスマスクが顔に装着される。こんなこともあろうかとスペアを用意していた

ちょっとがっかりするタイガに、ジョーカーは「残念だったなー」と白いういろうを差し出した


「これで機嫌をなおしてくれよ」


「何故ういろう!?いらねー!」


「なんでおいしいのに。あ、もしかしてチョコレートがお好み?ブルーベリーキャンディーもあるぞ」


彼から菓子類が次々に出てくる。両手にいっぱいとなった菓子をその場に置き、影へ沈む

「1つぐらい食す時間を設けても良いだろうに」と呟くのが聞こえた


「甘味を食べる気分じゃねぇ、ブラックコーヒーがあれば頂いていたかもな」


「ブラックコーヒー・・・?ブラックコーヒーか・・・あんな飲み終えた後、気分と胸と口内が気持ち悪くなるもの飲めるか!」


膨大なる見えないエネルギーを感じる。空間に亀裂が生じ空を揺らす、ガスマスクからドス黒い煙を漏らしながら力の気配はやがて濃いグレーの色となりジョーカーの周囲より噴き出す

こんなことで怒るなよと宥めたくなる。タイガは鼻で静かに笑った


「って、個人個人の食べ物による好き嫌いは自由だ。僕自身が嫌いなだけで、飲めと強要されたわけじゃないから怒る理由は皆無であるな」


きっぱりと鎮まった。ガスマスクの顎部に指をやりながら歩み始め、タイガから見て左側へ進んだかと思えば影に落ち、右から現れる

両手を広げ、「じゃーん!」と発すれば先程と同じ、一口サイズの板チョコやキャンディー等の菓子類が全身から撒かれた

無反応のタイガに、ジョーカーもそのままかたまってしまう


「あれ?クローバーや私の部下にいるある者、魔王帝様のいる王都の子供達はとても喜んでるくれるのにな」


「どうして一緒にして喜ぶと思ったんだ?」


泣く仕草をしながら片付けを始めた。この者の行動は意味あったり無意味であったり、どれが本気で悪ふざけか、本気で悪ふざけを楽しんでいる部分があるのは確かであるだろう

片付けを終え、濃い青紫か黒紫、どちらともいえる色をしたピンポン球サイズのキャンディーを1つガスマスクを僅かに上げ口へ。ガスマスクの下で舐めず一気に噛み砕き、次にヘドロのような影が地面から跳ね右腕を包む


「っ!この禍々しい気!さっきまでとはタイプが別の禍々しさ!」


影は掌へと移動し、一塊りとなると細長い板状へと形を変えた。板状となった影からは黒い液体が滴り落ちる

タイガは刀を手に下段の構えをとっていた。己の意思ではなく、勝手に体が行動してしまう。キャンディーを噛んでから喋らなくなったジョーカーは正直、前にして怖い。怖くてたまらない

やつからは「強さ」とはまるで違う恐怖が漂う


「それが、お前の武器か?」


「今はな。本来の得物を使って相手をするつもりだったが、やっぱり一振りだけだから代わりにこれを・・・」


ジョーカーは構えをとらない。構えをとらない武器の戦闘術など数あるが、これはそれに当てはまるものではなく、余裕でもなく、普段の武器とは違うからである

険しく、警戒した顔をするタイガが走り出した。その後から続きジョーカーも走る

距離は一瞬にして失われ、刀は右下からの横なぎ払いから始まり、影は上より振り落とす


(一振りだけの影・・・!)


影と刃が触れ合った瞬間に桜の花弁が豪風により巻き上がり、優雅に桜だけ時間を得たかのように舞い散る。綺麗などの感想を述べる暇はあらず

ジョーカーからの力を感じ取れない。振り切り影ごと斬り捨てれそうなはずなのに、影に触れた刀はそれ以上力を加えられなかった

ズプン・・・と泥に石を落としたような音がした。影が刀の刃をすり抜け、タイガの顔へ。斬られるか、叩き潰される、広がる影に呑まれる等と思われたが、影は額に一度軽く叩くだけ

だが、指で突かれた際の毒のこともある。タイガは距離を取る選択をしたが、その前に右膝を撃ち込み反動で後退。反撃もせずジョーカーはただ片方の腕で防いだだけであり、撃ち込まれた箇所から微量の煙が立つ


「また毒でも送ったとしても、俺は根性と気合いでなんとか倒れんぞ。お前の言葉を信じてはいるけど、念の為に伝えておく」


「言葉どうり約束したから毒を使用してないさ、安心しろ」


「安心しろ」と口にしたはすだが、一気に全身より嫌な汗が噴き出す。本能が命の危機と逃げるのは不可能と報せる。逃げるつもりはないが意味が違う、もっと別である非常に絶望に包まる何か

大地が鳴り、海は荒れ、緑は終焉を待つ。世界が泣き、哀しみに沈み始めた。ジョーカーは腕を組んでから手を広げ再び狂ったかのように笑う


「一振りだけ、それはなタイガ・・・私はただこれをしたかっただけ、時間を取りたくなかったから一振りだけ」


月が消え、空に不気味な黒紫色が敷かれた。不気味さとは真逆で、次に輝く星々が散りばめられ彩る

タイガは別の世界に囚われたかのような感覚であった


「あーーっはっはっはっはっ!!ショーウターイムっ!」


長く感じる非常に短い一時だけ全てが沈黙に包まれ、ジョーカーより始まる広範囲に空間へヒビが刻まれた。景色が亀裂によりヒビの入ったガラスから眺めたかのように歪む

遥か上空より2つの光。夜空にはっきりと映える白と見え難い黒であった

凄まじい風が吹き始め、大規模な天変地異が起こる前触れを本能がしつこく報せてくる。考えている暇を与えない程の猛スピードで迫る2つの光の正体はすぐにわかった。予測して考えるより、目で捉える方がはやい速度で落ちてくるそれは隕石である

大まかに見て距離から計算してもかなりの大きさをほこる2つの隕石。あんなものが1つでも落ちたら世界の崩壊と滅亡、生命と文明の消失は免れない


「ほらほら〜、貴様は全生命を背負うはめになった状態だぞ。それとも記念に一枚、写真でも撮って終焉を受け入れるかい?」


「正気かよ・・・」


あれがただの隕石なはずがない、夥しいぐらいのエネルギーを感じる

やはりこいつは五星の1人であるジョーカーであったと思い知らされる。罪悪感を滲ませず、彼の異常さを物語る

しかし、ここで意外な事態が起こった。ある程度の距離まで落ちてきて、隕石の落下速度が急に緩やかになったのだ

挑発している。どうにかしてみろと言いたげな雰囲気、だが強大な力は緩まず速度が遅くなっただけ


「どの道、放っておけば落ちてTHE ENDさ。僕にだって、言葉を交わすぐらいの時間が・・・」


ジョーカーを無視、タイガのやることは決まっている。自身の周りの地から噴火を行い、噴き出した極太いマグマが隕石へ。だが、ほんの僅かすら押し返せずに黒と白は赤橙をものともせずに進み続ける

タイガは最初から押し返すなり、これで隕石を破壊できるなどと考えてはいない。噴き出すマグマから飛び出し、跳び上がると右手に光を

白き光を中部に、赤いエネルギーが包む。大きさなど隕石と比べ物にならないが、これに全てを懸け、これに全てを乗せて、ぶつける


「見てろよ!!ジョーカーーーっっ!!」


マグマが勢いを失い隕石に完全に掻き消されてしまった。隕石の落下速度は元に戻り、空間をも更に激しく揺らす

タイガは迫る隕石に向け、右手の光を投げ放った。光は最初に白い隕石へ着弾すると稲妻と衝撃を生み大気を波打つ

光は隕石の進行を止めるのに精一杯であった。力み突き出した右腕が震える

しかし、隕石は1つではない。もう1つの黒い隕石が白い隕石に着弾した。押し返せされそうになり額、腕、掌よりの出血。力むだけでは最早無意味


「ほぉ・・・」


「はあああぁぁぁーーーっっ!!」


持ち堪えさせたのは気迫であった。徐々にだが隕石を押し始める。ジョーカーは興味ある態度の見上げ

1度瞳孔を失い、タイガの全身が黒く濁った直後であった。光は膨大化し、黒と白の隕石を巻き込みながら遥か空へと消えた

遠くからの振動音の後、空には8回の紅い衝撃層が広がり、ヒビの入った空間は剥がれ落ちガラスの破片のようにゆっくりとジョーカーへ優雅に降り注ぐ


「見事、見事・・・はっはっはっ!素晴らしい!」


称賛の拍手を贈る。何故だか、とても嬉しそうであった

息切れをするタイガに、ジョーカーは攻撃を仕掛けない。彼の調子が戻るまで再び紅茶でも楽しみながら待とうとしたが、ティーカップ出現させた直後に十文字槍が飛んできた

ヒョイっと紅茶を揺らさず、軽々と躱す


「お前・・・!ジョーカー!ジョーカーーーっ!!本気でないにしろ!あれが落ちていたら!」


「今まで不本意ながら世界を救ったことのある僕だ。一度ぐらい、僕の手で滅亡させてもいいじゃないか」


「ダメだ、話が通じない」


ふざけた態度に映るが、今も偽りなく真剣さが少しも薄れずにタイガへ伝わっていた

さすがに紅茶を数杯飲んで気分が悪そうだ。手が止まってしまい、微かに「うっ・・・気持ちわるっ」と聞こえたような気がする

生暖かい風が残り、少し耳を通過するのは街よりね警報ベルの音や生ある騒ぎ声、泣き声に自分勝手な怒鳴り声。これらを起こした、無差別に世界を滅ぼそうとしていたやつが前にいるが、こいつがやったと言っても信じてくれなさそうに雰囲気からのほほんとしている


「お前、敵国だけを滅ぼすならばともかく、自分の部下に、全てが失われるところだったぞ。やはり、五星の中でも凶悪だと噂されるジョーカーは部下や仲間、己の命すら失おうとも怖くないのか!?」


「怖いに決まっているだろ・・・」


この一言だけで、タイガは口を開けなくなってしまう。目を見開く紅鉢巻を額のに巻く者と、冷めた紅茶の入ったティーカップを手に持つガスマスクを被った者との間に不穏なる空気が通過する


「っと・・・怖いのは本当だが、こんな空気になるような感情でいるのは嘘だ。噂やイメージしていたジョーカーとは違ってがっかりしないでくれ」


「こちら的に、むしろ違ってくれた方が良いのかもしれないぞ。噂以上だったら・・・いや、さっきの隕石で異常さは身に沁みたさ」


優しく、小さく笑ってくれた

タイガは刀を左手に、刃先を向け右拳は握り締め炎を纏う。ジョーカーもティーカップを投げ捨て、腕を組み地面からちょっとだけ浮く

右拳を放ち、炎を放出。ジョーカーは左手で空間を掴むように捻りながら黒いスパークを発生させる光玉を出現させ軽く押す

高速で進む火炎とゆっくり進む光玉が接触し、光玉に走っていた黒い稲妻が急速に暴走

広範囲に、暴れまわるかのように黒い稲妻。タイガはそんな中でも冷静であった

刀に光を帯びさせ、薙ぎ払う。火炎に光玉、黒い稲妻を全て巨大な光の斬撃がまとめて巻き込みながら斬り進む


「いいぞ、ぶっつけ本番だろうと最中に成長もできる!貴様のポテンシャルはまだまだ高みへ昇れるぞ!」


光の刃へ、対処しようと左手をそっと突き出した直後であった。タイガは猛スピードで突撃を開始、踏み込んでから一瞬の速度でジョーカーとの間合いをほとんど無くす。光の斬撃も、巻き込まれ押されていた火炎も黒い稲妻もタイガにより煙に突風が突き抜けたかのように歪み消えようとしていた

刀を逆手に持ち、手からの炎が刃にまで伝わると荒々しい白へと変色する

白き火炎の刃を振れば剣先が過ぎた場所に燃える斬跡を残す。ジョーカーの右腕から入り、胴体ごと一気に切り抜けた


「な・・・!」


しかし、それはただの理想。斬ったと思われたジョーカーは片膝をつきながら身を低くさせ、しゃがみ、躱していた。躱してすぐ、次の行動をされる前に刀を振り切った直後のタイガの腹部へ左掌を撃ち込んだ。そこより亀裂を生じさせ広がっていく

骨の砕ける鈍い音に、瞳は色を失い、吐血。だがタイガは刀を手から消し、その手でジョーカーの撃ち込んできた左手首を掴むと右手を突きの形へ

さっきの毒、今の攻撃で咄嗟に閃いた。針を突き出したオオスズメバチが映り、赤熱に覆われた右手による突きがジョーカーの胸部を貫いた


「熱っ・・・!」


貫かれ、ジョーカーは反撃もせず引き抜こうともしない。これは余裕か、もはや死にかけているのどちらにしろ攻める機会であった

右腕を引き抜き、すぐその右拳には炎、左拳には光の属性エネルギーを握り、パワーとスピードに任せた速く凄まじい拳によるラッシュを叩き込む。衝撃により振動を生み、砕けた地より破片が浮く。わずか一瞬の内に連続して叩き込んだラッシュのとどめは炎の右拳による正拳突き

一撃により発生した轟音。更に砕けた地からの破片が舞い、全てが同時に落ちるとジョーカーの身体が吹き飛んでいく

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