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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
違う輝き
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前兆前 18

力が押し合い、爆発はせず、炎と影が限界を迎えるずっと先に炸裂する直前であった。裏拳からの影がタイガを呑み込んだのだ

影は四角柱の形となり、そこへ軽くノックする。静寂と変化も起きずにいたが、中では送り込まれた数種の強大な属性エネルギーによる衝撃が数えることを忘れてしまう程、瞬間に繰り返されていた

次に現れた骨の手が四角柱を握り、地へ叩きつけると轟音と共に広範囲のクレーターを作る。中央の一番深い場所で、変形どころか僅かな傷、ヘコみすらない黒い四角柱がそこに


「死んだなら返事してくれ」


無茶を言うが、タイガからの返答はすぐに出た。ガラスに似た黒い破片を撒き散らし、突き破ったのは刀の刃先。刀により突き破られた箇所から光が覗き、光の力がジョーカーのガスマスクに少しだが一筋の傷を刻む

刀と全身より光の属性エネルギーと己の気力を放出し、黒い四角柱の檻を粉々にする。だが、タイガは違和感に襲われていた。違和感の正体は大体察しがつく、腕を組むジョーカーを睨みつけた。ガスマスクの下はどのような顔をしているのだろうか?

笑っているだろう、間違いない。自分から解除したのだから


「お前は今、僕自らが解いたのに気づいたな。どの道ずっと眺めていたとしても、お前ならば突破できたであろう。遅かれ早かれだ。解いたことを後悔させるつもりで来てみろ」


「後悔で終わらせるつもりはねぇ!右腕だけじゃなく、お前自身を道連れにする意気込みで行く」


タイガの右眼から血が垂れ、口からどろりとした血反吐を吐き出す。普通とは違い耐え切り、傷は治癒したがさっきのダメージが持続している。左瞼を開くことすら震えてしまう

片手でも扱いやすい刀を手に構えを取らず、肩に掲げ走り出した。ジョーカーは動かず、身構えず、腕を組み直す

警戒を捨てた。いちいちしていたらそこを突かれるからである。間合いを詰め、上げた右足で蹴ると見せかけ踏み込み、刀を振り下ろす。白に紅を纏わせた大きな斬跡が残る一刀に、5つの突きによる斬撃も発生させる

しかし、5つの突きによる斬撃はジョーカーを抜けたが、振り下ろした刀は右腕を使い受け流され、地を深く切断する。振り下ろした際に頭に過ぎったのは「来る!ここへ。一撃だけか、そこから連続してか?」であった

しかしジョーカーの攻撃は、人さし指で1回優しくつつくだけ。戸惑いからか、反撃する気が起きずにただどういうこと?と尋ねたそうな顔


「さぁて、次の手にお前はどうする?」


戦闘開始から初めてその場から動いた。背を向けゆっくりと数歩、ジョーカーは手を振りながら退る

その背へ、タイガは飛び蹴りを放った


「ガードからのカウンターか、蹴りならば僕も蹴りで受けて立つか。蹴りにしておこう。私なりにやりやすい蹴りを喰らってください、お願いします」


月を背に悠然と佇み、迫るタイガへ左足で中段回し蹴りで迎え撃つ。渾身で足底を放った蹴りは、タイガの右足と衝突する

重い、押してくるタイガからの蹴りでジョーカーへの力が加わると共に沈んでいく。このまま押し切り、蹴りの一発でも撃ち込めればと考えていたが、更に力を加え入れようとした時、ジョーカーからの見えない何かに押し返され、吹き飛ばされてしまう

態勢をすぐに整え、着地した際に左手へ十文字槍を出現させると同時に、蹴りの押しにより隕石の落下時点のように陥没した大穴からジョーカーは歩み出てきた


「ジョーカーもちゃんと肉弾戦ができるのだな。膨大なエネルギーや魔法に能力、曰く付きや神話の武器を駆使するばかりだと勝手に想像していた。それか、優秀な部下に任せきりで手を汚さず名声だけを貰っておく、よくいるお偉いさんと同等かと。ジョーカーは自分から手を汚すとは聞いた覚えもあるが、それも単に自分の恐ろしを知らしめる為に流させたものだと疑いもあったぞ。俺の中で、ちょびっとだけな」


「肉弾戦は得意というより、数ある内の1つにある戦闘法の利用に過ぎず。拳も足も、武器も、生まれて持つ物に目覚めさせ得た物、教わった技術も、私は全て利用する。こんなおかしな私についてきてくれている部下達が優秀なのは訂正のしようがないな。確かに、私自ら出向かずとも終わらせてくれていたりする。それにより、私に名声が入るのも否定はしない。だが、これだけは否定させてほしい、僕の手は汚れ過ぎている。ずっと取れずにいてさ、洗っても洗っても・・・洗っても!洗っても!洗ってもっ!」


空間を振動させ、不穏な吐き気に襲われる威圧。パキキッ!!と音をたて、ジョーカーの周りよりいくつもの巨大な骨の手が影より出現

タイガは右手に刀、左手に槍を持ち構えたが、直後に一瞬にして骨の拳の1つが腹部に打ち込まれた

体内全身からの息を吐く、拳の威力にスピードと属性エネルギーが加えられた一撃は体感したことのないダメージを生む。拳をすぐに引き、次の一撃を放ってきたので両腕で防ぐが衝撃を全て吸収と和らげなどできず、足を踏み込んだ瞬間に残り全てで囲み怒涛のラッシュで攻撃を開始

鮮血が飛ぶ。殴る衝撃で空間と地に亀裂が入り、遠くまで振動が伝わり建物や海を揺らす


「返事は?僕の返答への感想は?殴られたぐらいで死なれたら、スペードに期待外れと教えなくちゃいけないじゃないか」


ぐっ・・・!と右拳を軽く握り、巨大な骨の腕達は姿を消す。そこにタイガの姿は、ある。伏しておらず、青天にもならず、目元を影で覆い顔を少し下へ向けていた

生きているのか?ジョーカーは問いかけてみたい。全身から鉄臭く赤い液体を垂れ流し、上着はボロボロ。右腕は抉れかけ、左腕は何度も殴った鉄パイプかのようにいびつとなっている。武器は見当たらず、防御に徹したのが見て取れる。踏み込んだ両足底から煙が昇り、自分の足下を踏み砕いていた


「生きているのか?って聞くのは野暮だな。下手な芝居はよせ、ハオンの先制より目撃している。もし死んでいるなら、僕はこうして声をかけてないさ」


「試しながら殺すつもりって、厳しいやつだ」


左手で右腕の抉れかけている傷口を掴み、すぐに離した。次に右手で骨折等によっていびつとなった左腕を2回殴り矯正させる

ボロボロとなった上着を破り捨て、黒い肌着を露わにする。治った腕で目や口周りを拭い、その血を肌着で拭き取った

ジョーカーは指でガスマスクの顎部を触る。骨の腕を1本だけを出現させ、再びタイガへと殴りかかってみた。骨の拳部分だけでタイガの身長を優に超えるが、彼は真正面より右拳を放ち殴り勝つ


「よーし、なかなかだ。末恐ろしい野郎だ、敵同士の関係でいるのが嫌になるな」


拍手を贈るが、相手からしてみれば嫌味に聴こえてしまう。タイガと同様に、ジョーカーも茶色のロングコートを脱ぎ捨てた。しかし、やっぱり拾いに行き着直す

脱いだのはいいけど、これに意味はあるのかと考えてしまったのだ。せっかくカッコつけてやってみたのだが恥ずかしく、気まずい雰囲気が漂う

タイガは何故か気を遣ってしまった。自分から口を開く


「お前、当たり前だがまだ力を隠しているな。その正体を吐き出して、俺を一気に葬ってみたらどうだ?」


「ふん、お互い様と言うべきか?それは貴様もだろ・・・何故それを使わずにいる?あの、モトキというやつに気を遣っているつもりか?さっきの攻撃も、その気になれば切り抜けることもできたはずだ」


「それでも、まだお前には勝てねーよ。いずれ、お前達を退けられるようになるのは俺1人じゃない。あのモトキが、俺の隠している正体に気づくようになるまで・・・あいつならできる!そう信じて待つ!」


区切りすぐ出現させ、天空へと投げた十文字槍に夜空を切り開く光柱が包む。高く跳び、槍を掴むと光は稲妻へ。白き光属性の稲妻は空を駆け巡る龍へと姿を変え、まったく逃げるも避ける素振りを見せずにいるジョーカー目掛けて投げる

龍は口を開き、空気に何重もの層を生む咆哮。速度など計測するのは不可能、投げ放たれた槍はジョーカーを光で呑み込み、貫き、消滅させるつもりであった


「ここで避けたら、僕じゃなくてこの街どころじゃ済まされず、大変な惨劇になりそうだな」


1つの地域を犠牲にしなければ勝ちへの兆しすら覗かず、仕方なく、そのつもりでいる。タイガも含め、もし五星の誰かと戦うとなれば他もそう心掛ける

ジョーカーはどうやって対抗するか選択していた。相手の光に対して自分の闇、別の属性エネルギー、なんとなく防ぐだけ、あえて避けてみる。どれをやっても楽くてたまらなそうだ

選んだ答えの発表。右手に希望の光を、左手に絶望の闇を、裏を返せばどちらもそれに成る2種の属性を。合わせ、渦巻く白と黒を優しく自分から放す。ふわりと浮雲のように停止した直後、白と黒の螺旋状のビームが目標一直線に発射

白き龍を捕らえ、絡みつき、そのまま螺旋状の白と黒により空間に開かれた沼のような黒いゲートへと連れてかれてしまった。閉じた瞬間、眩い光を放つ爆発が発生する。だが、一線の光を生んだだけであり、爆音も途切れてしまう

ジョーカーの手には、タイガの十文字槍。壊さず、自分の物にせず、投げ返す。槍はタイガの目前で突き刺さった


「貴様に味方する光、僕には光と闇の両方が味方したようだな」


味方は多い方が良いとは限らないと心の内で呟き、走り始めながら槍を引き抜くと右手に刀を握る。普通に、2つの武器での斬りかかり

と、思わせておいて急に滑り込みながらの蹴りへ変更。ジョーカーの耳障りな笑いは耳に入らず、股間と腹部の間を目掛けて

ジョーカーはやはり避けるつもりはなく、足首を掴もうと左手を伸ばす。この一瞬で体勢を変え、彼の背後へと回った。首に右腕を回し拘束、ガスマスク下に布で巻かれた頭部から凄く良い香りがする

このまま締め落とし、首をへし折ろうとも考えたが、その考えは過ぎると何故か恐怖と悪寒に襲われてしまう。別の手段へ、右膝で背を蹴り上げた


「うらぁぁーーっ!!」


叫びながら、更に宙へ舞ったジョーカーの背へ炎を纏った拳による一撃を打ち込んだ。手応えはある、腹部より凄まじい炎が貫き噴き出す

しかし次の瞬間、ジョーカーの全身が真っ黒に変貌。大気に塵となって消えていく


「残念でしたっと・・・」


やつは真後ろにいた。しかも、一撃を叩き込む寸前の体勢

タイガの背に走った2つの感触は、すぐに痛みへと変わり口から空気と少量の血反吐を吐く。肩と肘によるタックルにより、鈍い音と共に跳び上がったタイガを追い越し、空へ昇る

タイガの視界に入ったのは、夜となった空の景色ではなく、ジョーカーの姿であった。左足で腹部に蹴りを放ち、一気に落下させられてしまう

地に叩きつけられると同時に、すぐに立ち上がったタイガだが、見上げた空にはもうジョーカーの姿は失っていた。彼は10メートル先で、手にティーカップを持ち一息


(あの一撃は、回り込んですぐなんかじゃなかった。勢いつけて、ちゃんと撃ち込んできやがった)


「あまり動くようなのは勘弁してくれ。体力に自信が無くてさ、五星の中でも走るのが一番遅いんだ」


紅茶を飲み干し、ティーカップをハンカチで丁寧に磨く。借り物なので壊したらハートにお仕置きされてしまうぞ、それはそれでありだけど

ティーカップを磨くジョーカーとの距離は、今から一歩走り踏めば息を吐く間も置かさせず届く。先程から、一向にダメージを与えれた気配はないが手段と何かを行い続けなければ

ジョーカーから近づいてくる気配はほとんどなく、全て自分から仕掛けてばかり。ちょっとした変化となれば良いと考える

ジョーカーはティーカップを磨き終え、次はどうしてくるのか期待しながら待つ。タイガの全身より紅いオーラが漂い、刀を手に上段の構えを。峰は左肩の上を通り、別名は火の構え、天の構えともいう。非常に攻撃的な構えを取り、微動だにせず

上段の構えにある振り上げた刀に曝け出した身体、ここに攻撃すればどうなるのか色々頭で予想してみて楽しくなる。近づけばどうだろう?あれで斬られるのは確か、近づかなければどうだろう?振り下ろされた刀は大地を裂き、斬撃による攻撃となるかもしれない


「この一振りで、多少なりの変化でも・・・」


ジョーカーが一言を言い切る寸前、瞬きすら間に合わずにタイガの目前へ立たされていた。身体と共に刀にも漂う紅いオーラはとても熱く、アイスクリームなど一瞬で溶けてしまうだろう

ジョーカーへ、ただ力任せに刀を振り下ろす。1回だけの耳に響き、しばらく音を拾えなくなる轟音の直後、一筋の紅い斬撃は地の深くまで刺さり夜空へと届く。斬る剣術の技術を無視した、己の力任せに叩き斬る技

普通ならば真っ二つでは済まされない。だが刀身は切り抜けず、ジョーカーの左肩に少し喰い込みながら止まっていた。僅かな出血だけだが、タイガは決して失意に陥らず、逆に少し笑む


「これもまた、残念か?」


「いいや、ちゃんとお前に傷をつけれるとわかった!」


右手を握り、炎を纏わせ渾身の正拳突きを放った。ジョーカーの胸部と腹部の丁度中部であり、衝撃が目に見えて生み出され周りの残骸や破片を吹き飛ばす。豪炎がジョーカーの背より噴き出した

入ったが、また燃えかすのようになり背から攻撃される危険があったが、御構い無しに力を更に加え続ける。めり込ませ、殴り飛ばす

今度は黒い塵とならず、体勢を整え着地した。ここからも黒い塵にならず、殴られた箇所を撫で始めた


「痛いな・・・不思議な痛さだ。何故僕が貴様の目前まで進んでいたのかより、この痛さにばかり首を傾げてしまう。この痛さの正体、お前にはわかるかい?」


「ジョーカーに痛いと言わせただけで、光の道筋は太くなる」


「そうか?希望の捉えは各自の自由だけどさ。でも、僕だって普通に痛がるぞ。ゴミを捨てに行った帰りに階段で躓いて脛をぶつけたり、クローバーが投げた金の像が顔に直撃したり、馬をブラッシングしようとしたら後脚で股間を蹴られて種を残せなくなると不安になりながら、のたうち回ることなんてよあるけどな」


冗談だが本当にあった出来事を口にしながら、水溜りのような黒いドロドロしたものがジョーカーの周りにいくつも現れる。そこから骨の腕が伸びるが、影が全体へ侵食してしまい先端を鋭利状に、ベルガヨルの付き人を貫いた刃と同じものへと形成される

タイガは貫かれたりするだけでは死にはしないが、心臓を直接握られている感覚に襲われていた。どれから動かす、全て同時かもしれない、考慮しながら視線を配る。刀、槍、拳に足、全てを駆使するなり、己のエネルギーで搔き消すのもあり。来るならこいと、心構えと覚悟を


「良き顔だ。憲兵にもやってみたがそのような顔はしてくれなかった。勝敗、生きるか死ぬかなど頭から外し、どうすべきかを考えてくれている。顔から、お前の覚悟が汲み取れるぞ」


「どーも。終いの顔を見せるのはまだ早いだろ。お前のそれぐらいで!」


ジョーカーは左手を、自らの顔横へ持っていき握る。タイガは全身に力を入れ始めたが影の刃は動かず、ジョーカーの握られた左手はぐったりと力が抜けたように下ろされ、腰横を1回だけ叩くと走り始めた

タイガはすぐに我にかえり、刀と槍を消すと迫るジョーカーへ拳を撃ち込む準備。防御もせず、ただ走り拳の届く範囲まできた彼に拳を放った

ジョーカーは左手を地に着け、身を低め拳を避けながら身体を捻り、立ち上がりと同時に鋭い右拳を放つ。その拳にタイガは右膝を使い下から蹴り上げ、拳の軌道を左肩上へ通過させる。しかし、タイガの右目には人さし指と中指を合わせた突き、眼球を狙う左手の指先が映った。全然良い方向性が皆無の閉じたピースサインである


(えげつない攻撃しやがって!)


眼球に到達する前に間に入れ防いだのはタイガの右手、甲から2本の指が貫く。掌には赤い液体に濡れた指先が突き出ていた

空いている方の手でジョーカーの手首を掴み、指を引き抜いた瞬間にその指が貫かれていた右手の掌を相手に向ける。その手には炎に包まれた小さな白き光が現れていた


「やーべっ・・・!」


火炎の渦を身につけた膨大なる光の属性エネルギーが光線状に放出された。至近距離での発射にジョーカーは一瞬にして呑み込まれてしまう

軌道と規模を最小限に絞り、若干斜め上へ向け放った光線は地平線の遥か彼方へと進み空を突き破り、徐々に縮小させ消えていく

後ろへの障害物の確認、方角からずっと進めば海があり、海図を脳内で思い出し島のある位置、被害をなるべく抑えるなどを気にしすぎた。タイガは嫌な予感だらけである


(倒せているなら倒せていると願いたいが、あの不吉を体現したかのような雰囲気が消えちゃいねぇ・・・)


まさにそのとおりであった。別の場所からに出現した黒い影より棺が浮き、勢いよく蓋が飛ぶ。身体を起こしたジョーカーの手にはいっぱいの花だが、すぐに全て枯れてしまう

枯れた花達を手でバラバラにし、風に乗せ撒き散らす。棺は影へ沈んでいき、ジョーカーだけが残った


「花は好きなのに、花を枯らしてしまう・・・」


哀しそうに呟き、枯れた残りの花を握りしめる

この為にわざわざ花を用意したのに、手伝ってくれた方々にも謝りたい。花摘みの半分は蝶がカマキリに捕食されているのを観察していたが


「今のは危なかった。つい反射的に逃げてしまったぞ」


「嘘つけ、これをする為にちょうどよかっただけだろ」


「あ、バレちゃいました」


「え?ジョーカーならもしかすればと、言ってみたけがまさか正解とは」


互いに口を閉じてしまった。しばらく気まづい空気が流れる

過ぎるのをただ待ちたくないジョーカーとそろそろ動き始めると予測したタイガが身構えたのは、ほぼ同時であった。さっきので倒せなかったのは容易に想定できる。あれで倒せるならとっくにこちらの国は勝利している

タイガは右足を一歩退げる。その間に足元には白き両翼を広げた紋章が描かれていき、次の瞬間には高く跳び上がっていた

ついさっきに放った蹴りとは全くの別物、右足を突き出し、ジョーカーへ猛スピードで迫る足底には光の輝き


「体術での蹴りとは別か、蹴り返そうにもこちらも普通にするだけじゃダメだな。そうしてやりたいが、僕は違う手段をさせていただくぞ。さぁてここで、次の手にお前はどうする?だ」


ぞくりと体の芯から震え上がる何かを感じた。蹴りが到達する。そのはずであったが、ジョーカーは避けを行なってすらいないのに届かず

到達する寸前でタイガの目と鼻、口より出血してしまう。これにより横から骨の手による拘束を許してしまい、遠くへ投げ捨てられてしまった

そのまま己を掴んだ骨の手ごと突っ切るができなかった。黒混じりの血は身体の異常を瞬時に理解させ、立てなくなる程の激痛が襲う

口からの血の嘔吐が続く。右目は充血、左目は赤褐色に濁り始めていた。浮き出て張り巡る全身の血管は緑っぽく変色し、皮膚はそよ風が吹くだけで拷問の如く痛みを伴う

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