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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
違う輝き
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前兆前 14

指定された場所はモトキ以外の全員が存じているが、用事があるや、たまたま通りがかった等の理由で訪れた記憶を持たず。地理に詳しい者と、ベルガヨルの家が所有する場所と知っている者

記されていた場所へ近づいてはいるようだが、人気が少なくなり、この辺りだけ曇り空のような暗さ。それが不安、警戒を誘わせる

キハネだけ鼻唄に足取りは軽く、彼女の周りだけ明るく不穏な気配を寄せ付けない。楽しんでいるわけではなく、親族の堅い集まりに行かずこちらを選んでよかったと


「うーむ・・・」


タイガはミナールから手紙を借り、記されている文字を読み返し難しい顔をしていた。何か暗号や引っかかる部分でもあるだろうか?ミナールが尋ねるが、モトキはどうせくだらないこと考えているかもと彼女へ耳打ち

まさにそのとおりであった。以前のミナールも、今回もベルガヨルも、わざわざ手紙で誘い出してきたのだから、今度自分も手紙でモトキを呼び出し決闘でもしてみようかと企む

タイガをよそに、モトキは辺りを見回す


「しっかし、人気が・・・ここ辺りだけ繁盛できない呪いでもあるのか?」


「ここの周りはほぼ、ベルガヨルの家が買い取っているのよ。店もせず、人もあまり住まず、ただ所有しているだけ」


何を考えているのか分からないとついつい口から零すが、近くにいたモトキだけでなく、他2人も忽然と姿を消す。ミナールは周へ視界を配らすと、ゴミ捨て場近くで三人が猫の出産を見守っていた。しゃがみ、頑張れとエールを送り続ける

ミナールは深く溜め息。命の誕生を見守る3人に怒る真似は出来ず、待つことにした


「頑張れ、頑張れ!見守るしかできねぇけどさ」


「下手に手助けするよりはずっといいがな」


猫は4匹の子猫を生む。親猫が生まれたばかりの子の体を舐める姿は胸に来るものがあるものだ

キハネは左右の人さし指を合わせ、陣を猫の周りに展開すると猫の親子は姿を消す。どこにやったのかモトキが聞く、キハネが言うには自分の家へ転送したようだ。姉の元へ送ったから安心してと言うが、モトキからすれば全く顔の知らない方である


「小さな命の誕生を目の当たりにするのは満足した?なら、さっさと行くわよ。あの子の灯火が尽きさせられてしまいそうなのだから」


「あぁ・・・そうだな、すまない」


彼女は、足を進める速度を上げた。不安で堪らないのだ

人質として利用しているならば自身が辿り着くまで命の保証があるはずだが、あのベルガヨルだ。他のMaster The Order達を、特に己より上にいるやつらを嫌う。嫌気に取り憑かれ、勢い余って殺してしまっている可能性すらある。殺されなくとも、痛めつけられ二度と光を感じれない、歩けなくされてしまっているかもと不安を駆り立てる心配からの不安が過ぎる

急ぐのも無理はない、モトキは焦るな等の声をかける真似はしなかった。自分はただ、馬鹿なお節介でついてきただけ。余計な首の突っ込み


「綺麗だ、眩しすぎる。俺なんかと比べものにならないぐらいに」


「な、なによいきなり!?」


ミナールの容姿を褒めわけではないのだが、そこも否定できない。突然の言葉に振り向き、勘違いしている彼女は顔を真っ赤にしながら、すぐに顔を逸らした

モトキは思わず声が漏れてしまっていた。彼女のことを根まで理解していないが、自分なんかと全然違う。幼き頃の考えもしない、ただ蛆のように湧く復讐心から始まった己には到底磨けない輝き


「ここね・・・」


あれ以降、黙り込んでしまっていたモトキは彼女の言葉に足を止めた

そこには廃墟だが、昔はそこそこ人が入っていたであろう小さなホテルがあった。ミナールによると、ここのオーナーはベルガヨルの祖父により消されたらしい。ここに限った話ではなさそうであるが

慎重か突撃か悩んでいる暇を置かず、遅れて到着したタイガが扉を蹴り砕き、お邪魔しますとホテル内へ


「昔から相変わらずだなぁ・・・」


「迷ったら突撃するタイプよね、あいつ」


タイガの叫び声が耳に通る。まさか、待ち構えられ奇襲されたのかと急いで後を追い、ホテル内へ

刻は昼間のはずだが、中は薄暗く白黒の世界が広がっていた。入ってすぐのエントランスで、タイガは叫んだはずだが全く平気そうである

何があったのか、あの叫びの理由を尋ねると昔に発売していたがいつのまにか消えていたジュースの瓶を発見したらしい。栓も開いておらず、中身の液体もある。モトキの記憶から変色はしていないが、飲みたくはならない


「これ、けっこう好きだったのに。そこら辺に転がしておくなよ、ちゃんと飲んで消費するか消費期限にはもったいないけど捨てろよな。中ありで道端に捨てるのが1番良くねぇぞ」


モトキとミナールに非情なる蹴りのリンチ、タイガは頭を守っているが表情は変化せず

キハネが最後に、遅れてホテル入ってきたがリンチされているタイガには目もくれず。エントランスを見回す

気配を感じる。そこへ視線を一点集中

すると突然、見つめていた視線先のずっと奥にだけ灯りが点く。照らす場所はフロント、そこにはベルガヨルの付き人である男女2人が立っていた


「チェックインでしょうか?チェックアウトでもよろしいですよ」


男の方が笑顔で羽ペンを手に、宿帳へ勝手に名前を記入していく。Master The Order御三方の名は知っているが、1人初見の方が

丁寧に、まずは静かに気品のあるお辞儀から、「貴方様は?」と伺う


「モトキだ。誰かの友人かお連れか、手下でも奴隷でも、好きに捉えてくれ」


「モトキ様ですね、よくぞお越しくださいました。大したおもてなしはできませんが、ごゆっくりなさってください。お食事はビュッフェとなっており・・・」


隣でずっと目を閉じたまま、表情を変えずにいる女性が男の後頭部を叩く。けっこう骨まで響いたのか、捻り出すような声で男はしゃがみ込んでしまった

改めて、女性の方が前に出て物静かに頭を下げる。その静かに頭を下げている間があまりに何も起きず逆に警戒してしまうミナールをよそに、モトキとタイガは先程発見したジュース瓶の栓を抜き、交互に匂いをぐ。匂いを確かめ険しい顔になる2人は次の瞬間、頭頂部に巨大なたんこぶをつくり床に伏せていた

ミナールの拳には煙が上がり、ふざけてる場合じゃないと怒る


「ミナール様だけでなく、キハネ様、タイガ様、お忙しい中、このような真似をしてたいへん申し訳ありません」


「申し訳なく思うなら、さっさとあの娘を解放してあげなさいよ」


そこから口を開かず、一歩退がる。交代するように男が前へ

手を広げ「ではっ!」としっかり隅まで通るような大声を、すると建物内の灯りが一斉に点く。エントランスからフロントよりずっと先にある横幅10メートル以上はある絨毯の敷かれた階段へ何かが落ちた

階段に打ちつけられることなく、有刺鉄線が巻かれ天井から吊るされている状態

蓑虫のように吊るさる物の正体はすぐにわかった。緑の布に有刺鉄線を巻かれているが顔だけは確認できる。ぐったりした顔であった。ミナールの瞳が小さくなり、額から右目にかけ血管が浮き始めた


「ベルガヨル・・・!ベルガヨル!!どこにいるの!?」


声の直後、再び天井より落ちてきた

爪先からゆっくり着地、有刺鉄線など気にせず吊るされている娘に左腕を回す。右手小指でこちらを指し、銃を撃つような動き

付き人の男が多種の花弁を投げ降らせる。もう投げまくり、ついには花弁の入る籠ごと投げた

頭に直撃、籠は階段に落ち下まで転がっていく


「皆様!オーナーのご登場です!ぜひご挨拶をとお越しくださいました!」


「いつまでホテルで引っ張るつもりなんだ!お前は!」


頭や肩についた花弁を払い、娘を巻きつける有刺鉄線に触れれば生き物みたいに動き拘束を解く。包む布も破き剥がし、抱き上げ、一歩ずつ階段を踏み下る

階段を下りきったベルガヨルの元へ付き人2人が、彼から一歩退がった位置へ。落としきれず残る花弁はないか入念にチェックを行い、最後に女性の方があまり匂いのキツくない香水を頸へ吹きかけた

ここにMaster The Order8名の内、半数の4名が集まる


「これはこれは。まずはミナールから、ミナールだけのつもりだったが・・・他に2人も。しかも、いずれ予定のキハネまで・・・」


「都合良く居合わせてましたから、ついてきたのです。困り顔の一つでも晒してみては?ミナール殿だけで済ませられず、今のところ4名が立ちはだかりますよ」


引きつった笑みを晒す。これは嬉しさと自信の表れ、彼女の言葉には困り顔をできるがてきない現実があるのだ

Master The Order同士での争いは避けるようにと学園長なんか霞むずっと上からの忠告、それが不利にさせ、盾にすることも可能

それはキハネも、他のMaster The Orderもよく理解している。ベルガヨルはそれができず、口開きしかできない現状と、仮に戦っても、まとめて蹴散らせれる自信から笑ったのだ

だが、ここで引っかかる。彼女は4名と言ったが、Master The Orderはキハネにミナール、タイガの3人。まさかだが、ついでにいるような一般生徒も頭数に入れているのかと疑問を持つ


「おい、そいつも頭数か?宿帳に記入する際にモトキと名乗っていたが・・・はぁ、おんぶされるバッタの雄みたいな」


「こら!この殿方は新しいMaster The Orderのメンバーですよ!Fourthに位置するので、私やミナール殿にタイガ殿、あなた様も繰り下がりになられますね」


「そ、そうよ!」


ミナールもキハネに慌てながらも同調、その直後である。ホテル内のどこかで、亀裂が入る音がした

ベルガヨルの底から、ふつふつと滲む怒りを報せてくれているのだろう

モトキもミナールも、すぐにキハネの考えがわかった。ここは否定せず、黙るのが得策だろう

タイガは笑いそうになっていた。もし嘘だとして、色々転んでそうなっても面白いからだ。元から一番下なので大した被害を感じられないが、「繰り下がるのか、それは大変だ」とシャレで言ってみる


「そいつが?冗談にしては腹がよじれ、呆れるすらできないぜ。なら、俺がSeventhに繰り下がりか?その野郎の実力すら測れておらずなのに」


「それは愚問だな、問題すら心配しなくていい。こいつは爆発すれば俺より強い。はず」


モトキより、タイガの方が圧倒的に強いのだが彼は信じている。いつか、モトキの強さが爆発する日が訪れることを。モトキには片鱗がある

キハネとミナールも続いてタイガに賛同。ミナール自身も一度、短いながらモトキと手合わせをした際に隠れた実力に触れていた。手加減したとはいえ、彼に負けた

キハネは言い出しっぺからのノリであった。彼の実力、武器、得意で苦手な属性エネルギー、魔法は?呪術は?それらを使えるのか、知る時間が欲しい


「過大評価のしすぎだろ。お前らより強いとしても、俺より強いとは限らねぇ。だったら一先ず、俺をFourthまで上げ、キハネとミナールを下げてからそいつをFifthにすべきだ。戦わせず、上の判断だけで置かれるのなら納得できないぜ」


付き人の男からナイフを受け取り、刃を抱きあげた気絶する娘の頬へ切れない程度に押しつけた。右へ、左へ、上へ、下へ、少しでも動かせば綺麗な肌に傷がつくだろう

ミナールは身構える。その姿にベルガヨルは刃を押し当てる位置を首へ、やはり眼、頭、どこにしようかと挑発を含んでの迷い


「Master The Order同士での戦闘禁止・・・本当に、邪魔なルールだよな。ほーら、ミナール・・・気絶はしているが、傷をつけず陵辱すらしてない取り巻きの1人がスパッと命を落とすことになるぞ。この娘を助けたければなんて・・・別に、ただ俺はこいつを死なせたいだけ。助けるかは、お前の勝手。ミナールだけじゃなく、運良くついてきたキハネかタイガでも結構だけどなぁー・・・新人はどうだ?」


向こうから戦闘を仕掛けさせる。これが最初からの目的。別に助けなくとも、彼女や居合わせる他の評判にすら影響が出るだろう

ベルガヨルは次の考え、ならいっそのこと娘を屠り怒ったミナールを襲いかからせればそれでも成立する。ナイフの先端を娘に向け、この振り落としが全て決まるだろう。誰かが助けに行くか、そのまま突き刺され死ぬか

しかたないとミナールが一歩踏み出そうとするが、彼女の肩に手をやりモトキが止めた

「どういうつもり?」と2つの意味で聞く暇すら無く、彼の姿が消える。一歩踏み出したのはモトキであった


「あ・・・!ちょっと!」


ナイフが振り下ろされる前にモトキの右拳がベルガヨルの左頬へ、少し下から上げるように殴った。痛みがまだ到達する、何が起こったのか理解するより先にベルガヨルの体は階段を越え、扉のすぐ横の壁を突き破り大ホールの部屋へ

付き人である2人は、主が吹き飛んだことを知るまで時間を要した。どこに行ったのかすらわからず、見回し、突き破られた壁の先へと向かう

モトキの手には、ミナールの取り巻きである娘が抱かれていた


「誰でもいい、この娘を!」


娘を放り投げた。それをミナール自身が受け止めた直後、突き破られた壁先の大ホールより脅しに使われたナイフが数を増やし飛んできた

モトキはそれら全てを指で挟み、床へ捨てる。男に肩を借りていたがすぐに突き放し、殴られた左頬を摩りながら崩壊した壁を跨ぐ

その顔は、少し笑っていた


「仕掛けたな、お前から。新人さんよぉっ!お前なら、ミナールもキハネも仕留める必要がないな!」


「知ったことか・・・人質は救ったんだ、このまま逃走もありだけどさ、少し灸を据えたくなった。俺ができる範囲でな」


モトキは、1回だけ右肩を回した

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