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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
違う輝き
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前兆前 11

キハネはやる気満々であった。モトキをMaster The Orderに加えようと学園長に推薦するつもりで勝手に話を進めており、モトキ自身はどう言葉を返せばよいのか焦り顔になり、下唇を軽く触れる程度に親指で引っ掻く

冗談なのか、本気なのか、タイガにどうしようと顔で訴えるが彼は親指を立てるだけ。タイガにとって、モトキがMaster The Orderになろうがならまいがどちらでも結構なのだ


「ま、待ってくれ!待ってくれ待ってくれ!」


「はい!元気がよろしいですね!推薦する本人がいると話が進めやすいからついてきてください」


タイガは助ける気がさらさら無い。急遽なことで焦り慌てで絡まる喉をなんとか破り声を発するが待ってくれとしか言えない。キハネは聞き耳を持たず、藁紐でモトキを拘束すると学園長室へ連行を開始

床を跳ねながら引きずられるモトキは「わーっ!連れてかないで!」と泣き言を口にするが、あれはタイミングを見て脱出するつもりである。自分で抜け出すより先に、ミナールが独鈷杵を投げキハネが引く藁紐を切断


「切れましたね・・・ミナール殿、邪魔をなさるおつもりですか?普通の生徒ならば、Master The Orderの推薦と聞けば抵抗せず連れてかれるでしょうに。そしてあなたへ、余計なことをと告げるでしょう」


「ふん、嫌がってるから助けたわけじゃないわ。あいつとは先に約束があったから、横取りされた気分が嫌になっただけよ」


ジリジリと、キハネから詰め寄ってきた。数歩進み止まり、数歩進み止まりを繰り返しミナールの鼻と鼻が触れそうな距離まで。彼女が視線をぶつけ合う隙に、タイガはモトキを拘束する藁縄を解き始めた

力任せでもよかったのだが、燃やして藁縄を消す。焦げ臭い匂いは充満せず、キハネが破壊した壁から風に溶け消えていく

モトキはタイガに「覚えてろよ」と小声で呟くが、「やれるもんならやってみな」と鼻で笑いながら返された


「はぁ、俺がMaster The Orderねー・・・入学して日が経ってないのに、いきなりなったら元いたクラスメイトからの目を変に気にして、慣れず流されて廃れてしまいそうで怖いんだよな」


「だと思った」


モトキがなりたいと言えば止めはしないつもりであった。だが、やはり今の段階では嫌がるだろうと分かりきっていたことだ。「やっぱりですかい?」と無駄に、有意義に、だてに幼少から長い付き合いをしていないなとモトキはタイガに感心、彼もまた心内で胸を張っているだろう

ムッとした顔のミナールに、笑むキハネの視線のぶつけ合いはまだ続いていた。ここで戦闘に発展しては巻き込まれるは必然、今日はあまりツイてないモトキは2人の間に割って入る


「放っておけモトキ。どっちみちMaster The Order同士での戦闘はなるべく避けるようにと口添えされているからな」


「そうなのか?でも橋の時、戦う気ありまくりだっただろ。シャレっぽくなかったぞ」


「俺はいちいち、学園長から耳タコになりそうなルールを従うつもりはない」


さっきから割って入ったモトキの背へ、キハネが陽気な鼻歌を奏でながらお札を貼っていく。閉じ込められ、岩石が頭上に落ちてきたりと彼女からお札を貼られただけで悪寒がする

必死になり剥がし、彼女はその必死さの姿にクスクス笑う。疲れてないのに息が乱れるが、なんとか気持ち落ち着かせ一息着く


「はぁ・・・ここにいても日が暮れそうだ」


タイガと稽古つけてもらうつもりだったのに、疲れたと口から漏らす。ミナールとキハネの間から抜け、タイガへ先に向かうと告げる

右肩を揉み、崩壊した壁から出た瞬間であった。モトキの頭上へ誰かが落下し、モトキの首から下が固い地に埋まる

モトキなど視界になく、己の中では存在せず。レディーススーツを着た女性は轟音の正体はMaster The Orderの誰かであろうと考え、向かったが目的のミナールだけでなく、他2人もいることに驚愕していた

まず、静かに頭を下げミナールの前へ、片膝をつきながら1枚の折り畳まれた紙を差し出す


「あんたは、ベルガヨルの。あいつから暗殺でも命令されたの?」


「これを・・・」


差し出されていた紙を受け取り、その場で書かれている内容を読む。しばらく、音が失われたかと不安になるほど静かであったが、彼女の指に力が加わっていき紙にシワが増えていく

とうとう、紙が破られた。それを見て女性は笑みを覗かせるとこの場にいる理由もないので迅速に視界から消えた


「あのっ!ベルガヨルーーーっ!!」


ミナールは叫んだ。怒りに震え周りの床や壁に亀裂が走る

理由を尋ねるタイガだが、キハネを含め大方察していた。どうせあのベルガヨルが彼女の怒りに針を刺す内容の手紙でも送りつけたのだろう

破かれた紙の破片を集め、お札を貼り繋げてからベルガヨルが書いた手紙を読む。これはまた、くだらない事を起こそうとしたなとタイガとキハネは呆れた


「わざわざ、家のサインまでありますね。どうします?行くなら思う壺ですし、ベルガヨル殿はミナール殿から攻撃してくるのを狙っていますよ」


「けど、行かないわけにはいかないわ。あの子達は勝手についてきて、勝手に慕ってくれていたけど、今日まで追い払わなかったから私に責任がある」


面倒になりそうだとタイガは手紙を紙飛行機に折り、首から下が埋まるモトキの頭へ。頭に刺さり、先端が折れた紙飛行機はあっけなく落ちた。後頭部をこちらに向けたままのモトキは紙飛行機をぶつけられ痛いと文句すら言わず黙ったままであった

ミナールの叫びに驚いた。手紙を読んでいないし何があったのか分からない。けど、キハネの思う壺という言葉とベルガヨルの名前、きっとそいつが何かをやったのだろう。まだどちらが悪いかは知る由もない、だが冷静に考えてベルガヨルというやつが企みを持って事を起こしたのはわかる

モトキは身体に力を入れ、埋まる地を砕きながら跳び脱出。砕かれた地の破片が降る


「行くなら、俺も一緒に行く。余計なお世話と思うなら好きに思っていろ。だが、聞いたところによるとミナールの親しい誰かが攫われたのだろ?お前から攻撃して、お前に責任を負わさせるつもりなら、手段としてタイガやキハネよりも俺を連れて行く方がいいだろ」


自己犠牲、所詮綺麗事な自己犠牲。Master The Order同士での争いは避けるよう言われているが、自分が攻撃したとすればただ一般生徒のご乱心で済まされるかもしれない。こちらも、向こうにも、Master The Order内での迷惑は少なくて済む。周りからあいつは見ぬほど知らずの自惚れ野郎という目を向けられるだろうが共にエトワリング家を護衛した仲だ、自分よりも彼女が学園にも国にも必要とされている

ミナールはしかめっ面で考えていた。キハネはモトキに小さく拍手を贈り、紙吹雪を投げ散らす


「俺はこの問題はどうでもいいのだけどな、モトキのせいにするのもありだろ。例えば、モトキとベルガヨルを戦わせて隙を突きミナールの取り巻きを救出するとか、あいつが向こうから仕掛けてきたと主張するならモトキに責任をってな。けど・・・そんな結末、俺がさせるか」


タイガは乗り気である。モトキはミナールの肩に手を置き、行くだけ行かせてくれと頼む。キハネは「行かせたら?」と催促するが、ミナールはまだ迷う

不安は不思議とない、何故かわからないがタイガの言葉がモトキにもミナールにも安心感を与えてくれる

ミナールの迷いは薄れ、「しょうがないわね」と漏らす。しかし、1つ忠告として危なくなったら逃げるようにとモトキに聞かせる。自分関係のせいで死なれたら後味が悪いと伝えられたが「ミナールは優しいな」の言葉と同時にモトキは彼女の頭を撫でた

頬をちょっとだけ赤らめはしたのだが、すぐに我に返りモトキの脇腹へ水平チョップ


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